DNAが呼んでいるんだよ、 奈良の旅。
2024年末、子どもの学業の用事で、思いがけず関西へ行くことになりました。行ってみたいな〜(もんやり)とは思っていたけど、まさか、こんなに早く願いが叶うとは。
不思議に誘われた大阪・奈良の旅ブログは、じっくり取り組むとして、今回は昔話とユング心理学、そしてわたしのルーツが交差する旅について書いていきたいと思います。
祖母姓「長谷川」のルーツをたどる
「絵師の家系って言ってたけど……さあ、どうだかな。」子どもの頃から、たまに祖母が呟くことがありました。確信はないようで、親戚に追及されるのを嫌がっていました。(もしや……長谷川派の絵師?)
お正月やお盆に親戚が集まると、“親族のどの代にも絵を描く人が必ずいる”という話題が何度かあがったものです。実家では大正以前のご先祖様が描いたという武者絵の掛け軸(練習作品)を床間に飾るときもありました。
わたしも細々とイラストを描かせてもらっているので、ご先祖様から流れる血なのかもしれません。祖母の勘違いの可能性もありますが、これが長谷川姓に興味をもったきっかけです。
新潟県に多いとされる「長谷川」姓。
拙ブログ「星が降る?伝説と星を追って」では、新潟県・県北に残る星の伝説は、関西方面より移り住んだ人々によってもたらされたのでは?という仮説※を立てていたので、星降り伝承の残る大阪や長谷川姓発祥の地 奈良に行ってみたいな〜!と願っておりました。
これは、引き寄せの法則!?!?
毎年のお仕事は今年に限って早めに進行し、例年ならバタバタの年末にぽっかり空きができ、そこに娘の大阪行きが入りこんだのでした。
※長谷川姓と星の降る池の伝承については、わたしの拙ブログ初回「星の伝承はどこからやってきた?」をご覧ください。
■星が降る?伝説と星を追って…新潟県村上市に伝わる星の伝承を追う旅
雲たなびく、奈良の空
奈良県桜井市は祖母姓のルーツでもあり、わたしが古代史好きになったルーツでもあります。
この日、大神神社参拝後に向かったのは、長谷川姓のパワースポット、「長谷寺」です。(大神神社については後日ブログにいたします)
近鉄大阪線で長谷寺駅を降り駅前看板で道順を確認します。ネット情報では長谷寺まで徒歩30分とのこと。
長谷寺駅は谷の上にあるため、まず階段で谷を下ります。すれ違う初老の2人は、満足と挑戦混じりの表情で谷を下る人々に視線を送ってきます。そのお2人は、ハイキングの服装で両手には登山用の杖。
その時は気にもとめず「なんだ奈良の空?」と雲ばかり気にして、のんびりと目的地の長谷寺へ向かう階段を降りていました。
そして、後に2人の表情の理由を思い知ることになるのです。
予感
前日から不思議な現象が続いているので、心は知っていたような気がします。「わたしは、この地に呼ばれている」
「呼ばれる」という言葉を使ったのは今回が初めてだと思います。「わたしが何に呼ばれるんだよー」と普段の自分なら“セルフつっこみ”をするからです。
祖母は非常に怖がりな視えるタイプの人でした。血のせい? 血が呼んでいる?
谷を下り終わり、今度は緩やかな登り坂です。のんびり歩きながら、ふと右側を見ると神社の赤い鳥居が目に飛び込んできました。車道に看板がないので、素通りしてしまうところでした。
長谷山口坐神社
地図で神社があるのは知っていたしたが、道から外れるため予定には入れていませんでした。前日からの不思議現象に誘われ「目の前に現れたということは、行けということか?」という、導き手にお任せする心境になっていました。
神社手前に橋が架かっています。これが長谷川姓の元になった初瀬川※です。しばらく橋の上で川音に耳を澄ませます。清らかな水の音に心が洗われるようです。
※初瀬川/泊瀬川:現在は大和川と表記されています。
橋を渡ると向こう側は薄暗い森です。初めての場所でもあり1人旅のためか、畏怖のようなものを感じます。鳥居をくぐってすぐの場所に「水神」の石碑。「この神社は水神様なのね」と歩き始めると、笹の葉が一枚だけ横にブンブン揺れています。
「帰れ、帰れ?」
そう言われたように感じたものの、階段を降りてくる男性がいたので「登ってもいいんだ」と、ほっとして階段を登り始めました。
急な石段は段数もあり、思いの外きつく感じます。階段脇には番号をふった杭が打たれており、10番から登り始めまだ9番。「拝殿は何番の位置にあるの〜?」と体力に不安を感じ始めます。
すると、今度は別の笹の葉がまた1枚だけクルンクルン回っています。科学的にこの現象を何と呼ぶのか分かりませんが、「父の3回忌のときも百合が一厘だけ、ぷりんぷりん揺れていたね」と思い出しながら、立ち止まることなく勢いまかせに階段を登ります。(不思議現象も、わりとスルーしてしまうタイプです)
-ーまだ7番、息はかなり上がっています。でも建物が見えて来たので、お社はもうすぐのようです。
<御祭神>
大山祇神(オオヤマツミノカミ)
天手力雄神(アメノダヂカラヲノカミ)
豊受姫神(トヨウケヒメノカミ)
<御由緒>鳥居前看板より
「長谷山口神社由緒記」
当神社は長谷山の鎮の神として太古より大山祇神を祭神としている。第十一代垂仁天皇の御代倭姫の名を御杖(杖に点)としてこの地域の「磯城嚴橿の本」に約八ヶ年天照大神をおまつりになった時、随神としてこの地に天手力雄の神、北の山の中腹に豊秋津姫の神をまつる二社を鎮座せられた。
長谷寺縁起やその他の古文によると この地方は三神の里 川は神河 この付近の淵は神河浦と書かれている。第四十五代聖武天皇の天平二年(西暦730年)大和大税調には長谷山口神社の名が見られる延喜式内社である。近世になり明治四十二年 初瀬平田にあった豊受神社の豊受姫の神を合祀されている。
当神社は由緒は深く五穀豊穣商売繁盛の神としてうやまはれ国や家々の安泰と繁盛を祈願し氏子里人の守り神として、あまねく人々の敬い奉るところである。
※磯城とは、奈良盆地の東南部を指す地域の名称。三輪山の西、初瀬川 (奈良県)流域までの地域で、現在の磯城郡と桜井市、天理市の一部を指す。(Wikipediaより)
<歴史背景>超要約 三輪山と伊勢神宮
疫病の流行
第十〇代 崇神天皇の御代に、疫病が大流行し民の半分が亡くなり、百姓もいうことをきかなくなりました。大殿(高貴な方のお住まい)に天照大神と倭大国魂神の二神祀っていましたが、神霊が強すぎるのか合わないからか、皇女2人が別々の場所に祀ったものの動乱はおさまりません。
三輪山 大物主のお告げ
そこで、災の原因を占うと倭迹迹日百襲姫命に大物主神が乗り移り、自分を敬えば疫病は平らぐと告げます。
お告げに従って大物主を祀ったが効果はありません。そこで再度ご神意をうかがうと、大田田根子らを祭主にすれば太平の世になると、夢で告げられます。
※大田田根子:大神神社の初代神主。大物主神、または事代主神の子孫とされています。
天照大神をおまつりする場所を求めて
天照大神をご鎮座するのに適した地を探し、崇神天皇の皇女から引き継いだ、第十一代垂仁天皇の皇女 倭姫《やまとひめ》は、長谷山口坐神社の地にも立ち寄られ、天照大神を8箇年お祀りしていたと伝わっています。
各地を巡幸したのち、天照大神から「ここにいようと思う」という御神託を受けられ、現在の場所・五十鈴川のほとりに、内宮(皇大神宮)を創建されました。
現在の伊勢神宮の前に、天照大神が一時的にお祀りされていた地を、元伊勢を呼んでいます。
奈良の地でシンクロニシティ
わたしが古代史に興味を持ったのは、佐々木高弘さんの著書『民話の地理学』に掲載されていた三輪山の神婚神話を読んだのがきっかけです。
民話と地理の関係をユング心理学を用いて紹介されていて、ワクワクがとまらない本です。
『民話の地理学』の中でも、最も好きな民話が『山梨採り』です。いや、山梨採りと思い込んでいただけで『民話の地理学』では『奈良梨採り』として紹介されています。
この民話の中に、母の病気を治すため「奈良梨」を採りに山へ入る3人の息子が登場します。1人ずつ梨を採りに山へ入り、3人とも途中で山姥に出会い忠告を受けます。3本の分かれ道が来たら、笹が「行げっちゃガサガサ」と言う道に進めと。
3人のうち末っ子だけが、笹の言うことを聴きとることができ、梨の元へ辿り着きます。先に梨を取りに行き妖怪に飲まれた兄弟を助け、梨も獲得し母の病気が治るというお話です。
ーーシンクロニシティ?
(意味のある偶然の一致)
“奈良”の長谷山口坐神社では、まさに“笹”がわたしに語りかけてきたのでした。
無意識の声を聴く
『民話の地理学』では、人の居住地から森へ入ることを、「意識の世界から無意識の世界へ入る」と表現しています。
呪術廻戦 起首雷同編では、「境界や川を渡る行為は呪術的に大きな意味を持つ」とも語っています。
わたしが渡った川は大和川(初瀬川/泊瀬川)、古くは神河と呼ばれていた川です。
『民話の地理学』では、境界を越えた先では視覚以外の感覚が必要となると言います。いったん森という無意識の領域に踏み入れると、感覚を研ぎ澄ませ、自然が発する音や匂いからメッセージを受け取らないと、命に関わることを昔話や伝説は教えてくれます。
長谷山口坐神社をお参りした帰り、枯れ葉で滑りやすい石段を慎重に降りると、あの笹の葉が1枚だけクルンクルンと回り続けていました。
わたしには「動画に撮って、みんなに見せて!」と言っているように感じられました。
↓↓↓YouTubeショート動画
災害伝承と無意識の世界
2024年秋に、新潟県関川村に伝わる大蛇伝説についてブログを書きました。大蛇伝説で疑問に思ったことの答えが、ユング心理学の無意識の中にあるように思えてきました。
「盲目の座頭は、どうやって峠を越えたのか?」
従者や共に旅をする仲間がいたかもしれませんが、大蛇から「これから村を水没させる」という話を聞いたのは、盲目の座頭のみです。本当に盲目の座頭が峠を越えたのか、それとも視覚ではない感覚で災害を予知したということの例えなのか?
ネイチャー寺門(寺門ジモン)さんは「自然の中に身を置き、自然を観察していれば災害は予知できる」とも語ります。
“奈良の笹”は、わたしに何を語りかけたのでしょうか? その答えは、無意識で感じ取るものなのかもしれません。
いざ、長谷寺へ
12月25日、クリスマスの長谷寺門前町は人通りも少なく、お正月の準備が始まっていました。お食事処や宿泊施設もあり、花の美しい時期にゆっくり泊まりで訪れたいものです。
ホームページを見ても「花の御寺 長谷寺」とあり、四季折々で美しい景観が楽しめそうです。
(中途半端な時期に訪れたから人通りが少なかったわけね・・・)
緩やかな登り坂に少しずつ疲労し、長谷寺目前で道はさらに角度を増します。長谷寺前までタクシーで乗り付ける方もおりました(賢い!)
長谷寺の入り口にお休み処があります。え、もう?(笑)駅から歩いてやってきた方が、お詣り前にいったん休憩する場所でしょうか?
ここから先、さらに階段が続きます。
上中下の三廊あり、長谷型の灯籠が素敵な雰囲気です。階段は緩やかですが、夏なら汗だくになることでしょう。冬でよかったかもしれません。
長谷寺の全体像はこちら→境内案内図
前日うかがった星田妙見宮にも、シュロ(蘇鉄?)が植えられていました。(新潟の彌彦神社にもありました)
検索すると、お寺に植えられている理由として、鐘突き堂の鐘を突くための棒として使われると書かれていたりしますが、ユダヤの過越祭にも使用されるようで、関わりも気になるところです。(妄想ですよ、妄想!)
本尊 十一面観世音菩薩立像は撮影禁止です。(1018.0cm)と大きすぎて全体像が見えません。迫力があり木造と思えないほど光り輝いておりました。
長谷寺本堂の外舞台は、京都の清水寺のように、先端に進むほど下へ傾斜しています。見晴らしがよく、桜や紅葉の季節には美しい景観が楽しめることでしょう。
次回へ繰越し、長谷寺の旅
ブログを書くにあたり、さらに情報を調べると、長谷寺のすぐ側に「泊瀬石」と呼ばれる石がありました。いつものことながら帰宅して気づくなんて!! その他も気になることが多々多々ありますが、また別の回にいたします。
泊瀬石にまつわる伝説
初瀬川上流にある瀧蔵権現のそばに祠があり、そこに毘沙門天が祀られていたが、ある時雷が天より落ちてきて、毘沙門天が手にしていた宝塔が転げ落ち、川を流れこの瀬の石の上に泊まったことから泊瀬石という。
これが初瀬の地名の起源。「神河」と呼ばれていた初瀬川を「泊瀬川」と言い、「泊瀬の里」と名づけたのは武内宿禰だそうです。
瀧蔵神社へ詣らないのは片参り
瀧蔵神社は長谷寺の奥の院と呼ばれ、長谷寺にお詣りしたら、瀧蔵神社にもお詣りしないとご利益は半減するのだそうです。(しまったー!!)
長谷寺駅から徒歩2時間、標高430mだそうで、さすがに徒歩は無理ですね。駐車場があるそうなので次回はレンタカーを借りようと思います。
谷をあとにする
長谷寺からの帰り道、長谷寺門前町で食事処や甘味処に寄ろうと思っていたのに、階段の多さに疲れてしまい、ひたすらてくてく歩くことに集中していました。
長谷寺門前町を過ぎたら今度は谷を登ることになります。長谷寺駅は登った先。行きですれ違った登山服の2人を思い浮かべ、ときどき立ち止まり休憩しながら階段を登ります。坂道では四輪シニアカーに乗ったおじいちゃんに追い越されました。谷では四輪シニアカーが必需品かもね。
(iPhoneで測ったこの日の歩数は約26,000歩、階段は50階以上:約3メートル、16段の高度を上昇運動すると1階とカウント)
長谷寺駅では、伊勢まで行く電車を見送りました。
「わたしはいつか、伊勢神宮にも行く!」そう思えました。
旅は続くーー。
あとがき
奈良桜井市の旅編<壱>をお読みくださり、ありがとうございます。
今回祖母姓のルーツをたどる旅をしてみて、わたしを導き守ってくれている存在がいると肌で感じられました。
雲ってこんな鳥みたいな龍みたいな形していたっけ? 彩雲てこんなに簡単に見えるんだっけ? 奈良だけ?
たぶん、違う。
わたしが不思議な現象に心を開き、導きを信じたから目の前に現れてくれたんだと思います。そうか、信じるほうが先だったかーー。
皆さんも、ご先祖様の住んでいた土地を旅してみませんか?
「見守っているよ」
そんなメッセージをもらえるかもしれませんよ。
最後に。ブログ中、乙女な着物姿の女性イラストが登場しますが、古代と現代を旅する女性のイメージキャラクターであり、ブログ主はただのメガネをかけたおばさんであるとお伝えしておきます。誤解されませんように。