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図書館の待ち人

あまり人が借りていない綺麗な本
手にとって
はじめましてと呟く
私がこの本のことを覚えているように
この本も私を覚えていてくれるだろうか
書架で次の読者を待ちながら
私のことを思い出してくれたらいい
印刷の匂い
ひとつも同じものがない色合い
8年も前に出版されていた
その頃の私は子供だった
大人になるまで、静かに何も言わず
待っていてくれたその慎ましさに
敬意を払わざるを得ない
私はあなたの読者となります
大人となり 会いに来ました

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