個のクリエイションが輝く時代の、インフラを目指して。ポップアップ特化メディアPOPAPを立ち上げた理由と今
「さよなら、平成。おめでとう、ぼくらの新しい時代」
この言葉は、2019年4月23日にIWAI OMOTESANDOで開催されたイベント「ー THE EVE ー 新時代前夜祭」のコピーだ。
気づけばあの日から1年以上が経った。あの場には、今思い返しても不思議な引力が詰まってた。そこがPOPAPが立ち上がった何よりのきっかけだ。
EVEがどんなイベントだったかの詳細は主催の1人のすみたくんに筆を譲るとして、ここでは詳細は省こう。
ただ、THE EVEで会場運営を担当した僕にとって、あの場は同世代の「個」が輝き、そこに来てた人が自然体で同じ空間と時間を共有する、今まで出会った事が無い場だった。
誰が主催者で、誰が出店者かもわからない。
名刺交換もいらなければ、自己紹介もいらない。
ただそこに溢れた「空気」をみんなでわかち合う。
別に出店者が凄い有名なブランドかどうかなんてどうでもいい。作り手のバイブスが自然と流れていって、その日その場所限りのセッションを作り出す。
平成31年4月30日平成が終わった。
この余韻は平成が終わっても、自分の琴線に通奏低音として残っていた。
その一方で、僕の周りにはスポットライトを待たずして、クリエイティブの道を諦める友もいた。
通信制で京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)に通い始めてから、卒展で後輩たちの進路を聞いても、自分のクリエイティブで食べていけるのはほんの僅かだ。
どうやったら、彼ら・彼女らが日の目を見る瞬間を一緒に祝う事ができるのか。個人の創作活動が、マスに届くきっかけを演出できるのか。資金力のない個人でも勝負ができるのか。
その時にTHE EVEの景色が思い返された。確かにあの場には、同世代のスター的なスピーカーも集まっていたが、それよりも圧倒的な場の空気があった。
それを再現性高く生み出す事ができたら、個でも勝負ができる。
その勝負の切り口が「ポップアップ」だった。
ポップアップ = その日その場所に集った人とで完成する、一度きりの体験
僕の周りのクリエイターの領域は多岐にわたっていた。ファッション、ライフスタイル、フード、アート。これらをジャンレスに紹介可能で、ブランドの知名度に関わらず、領域が多様である事が彩りをます切り口。それがポップアップだった。
モノを売るブランドであれば、これまでもポップアップストアやポップアップショップは存在した。そこにアートの個展やギャラリーの企画展もポップアップの範疇に取り込めると気づいたのだ。
今までアート系の展示情報は美術手帳や、Tokyo Art Beatといったアート系のメディアで提供されるのが主だ。(僕自身も美術手帳を年間購読している。)しかし、アートメディアの中でアートを伝えていても、アート外の人へは一生リーチができない。だから僕たちは、敢えてアートの展示をポップアップに読み替えた。
それからポップアップの風はゴーストレストランやケータリング、フードトラックの形でフード業界にも吹いてきた。今は会員制コミュニティ型の飲食店として注目を集める6Curryも、最初はUber Eatsのみのゴーストレストランだった。
POPAPでも微力ながら広報協力をした、ツカノマノフードコートは、まさに時代の風を掴んだ事例だと思う。そして、コロナでリアルな場が制限された中でも、noteという空間に新しい挑戦を続けて、フードレーベルを名乗る同世代の姿勢は互いに刺激をもらっている。
そしてPOPAPは2019年8月にリリースされた。ふつふつした思いが爆発したのあの日のことは今でも覚えている。
原宿のTRUNK HOTELのラウンジに籠もって、半日でネーミング、ロゴデザイン、サイトリリースまで持っていった。そして友達たちにシェアをした感覚で、これはいけると確信した。
個人の活動は法人と違ってPR配信はできないけれど、うちがポップアップという切り口で取り上げてあげることはできる。
フラットなスクリーン上では、小さいブランドも、有名ブランドも平等に並ぶ。お出かけ体験という一連のジャーニーであれば、個々のブランドの商品よりも、一連の体験の方が重視される。体験はSNSで波及し、同じ価値観を持った誰かに伝播していく。その時にポップアップの刹那世はよりファン心理を擽るきっかけとなる。
体験をデザインする事で、資本が無い僕らでも勝負ができると証明する事
それがPOPAPがブランドたちと一緒に、社会に仕掛ける挑戦だ。
シェアリングエコノミーの後に来る、ポップアップエコノミーの時代
最後に、僕らが描いている未来の話をしたい。
NEWSTANDARDさんの記事でも話をさせて頂いたが、シェアリングエコノミーによって遊休リソースの活用が進んだ先には、必要なモジュールを好きな時に好きな分だけ呼び出す、ポップアップエコノミーが来ると僕は見通している。
例えば、ポップアップストアであれば、スペースマーケットやSHOPCOUNTERなどの、スペースレンタルサービスが登場したことにより、今まで百貨店や商業施設の特権だった店頭が民主化された。
働くという文脈で言えば、世界のコワーキングスペースを繋ぎ、どの国でもドロップインが可能なWeWorkや、飲食店のアイドルタイムを活用してテレワークの場とするサービスも登場した。
その最終系が住む場所のポップアップ化だろう。アドレスホッパーと呼ばれる、家を持たない暮らし方をする集団をご存知だろうか?
この世界は市橋さんが切り開いているので、興味のある人は市橋さんに聞いてもらいたいのですが、家さえもその日その場所で選ぶ暮らし方も既に可能となっている。
月額4万円からの定額制で全国どこでも住み放題の多拠点コリビング(co-living)サービスのADDress
定額で世界中住み放題のサービスHafH(ハフ)
月1.5万円〜の手頃な値段で、「ホステルパス」というメンバーカードを持つことで登録している全国のホステルに泊まり放題になるサービスHostel Life
この流れは自動運転の実現によっても加速化する。「不動産から可動産」をキーワードに、既にバンライフやタイニーハウス、バスハウスといった車両をアップデートした住居が登場している。自動運転を実現した未来には、必要な時だけキッチンや風呂を呼び出すことも無理では無いだろう。「お墓参りに行くんじゃ無くて、墓が参りにくればいいじゃん」って言ってた友達がいたが、それもあながち冗談じゃない。
僕らの時代はどこへ向かうのか。
僕らの新しい時代は、新型コロナウィルスによって一変した。平成最後の日には東京オリンピックへの楽観しか無かった訳だが、今僕たちの前に突きつけられたのは、極度に繋がりすぎた世界経済の欠陥と、普通だと刷り込まれてきた普通が完全に叩き壊された日常だ。
この時代に個人で生きることは、前にもまして厳しくなった。Gig Economyの名でフリーランスをもてはやした社会は、今となってはそしらぬ顔で、みんなで耐えろと美談を語る。
そうだとしても、僕らはひび割れた社会に差し込む光を見つけて、崩れかねない刹那に可能性を見出したい。在りもしないニューノーマルを探すくらいなら、僕らの時代のノーマルを自ら築こう。
POPAPはその時の下部構造となって、社会を支える事を目指している。
POPAP代表:加藤翼
Twitter:@2_baSA
Facebook:tsubasa.kato