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[詩]術

魚は自由なのか
大海を知らず 空腹すら知らず

では私はどうか
囲いに潜んで 空腹を満たして

羨むことを失ったのは
人生の天辺が身に染みて
「悪くはない」と
思えてしまったからなのか

妬み嫉みは最善の業だろう
大海を知ろうとして
心を満たそうとして

身の丈に合わないもがきが華麗

悟りは停滞
驕りは流動

説かれる瀬戸際に立ち
手駒は外面の良さのみ
それで生きていられた

平熱がとにかく嬉しくて
摂氏20℃が過ごしやすくて
曇りのち晴れが何より尊い

言えることは
魚にはなりたくない
大海を知らずとも
凡庸だとしても
人としての尊厳が唯一の術

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