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ピアノ調律でひとつだけ「絶対」と言えること

良い音。良い演奏。良いピアノ。

ピアノに関することは基本的に「絶対」は無くて、それが難しくもあり、面白くもあります。

「狂ったピアノの音が好き」という方がいたり、「スカスカのタッチが弾きやすい」と言うこともあったり。ピアノ的には他の問題が出てくるので手放しでそれで良し!とはならないのですが、それが好きという気持ちは誰にも否定できません。

なので調律師のやり方もそれぞれに正解があり、どんなに他の人が間違っていると思う方法でも、本人に考えがあってのことならばそれは間違っているとは言えないと思っています。

でもそんな中でもこれだけは言いたい。ひとつだけ。絶対にこっちが正しいよねと思うことがあります。

それは調律記録のカードの日付を西暦で書くこと

今のピアノの状態に至るストーリー

ピアノの中に入っている、そのピアノの調律記録カード。

持ち主の方には直接関係ないかもしれませんが、ピアノのメンテナンスにおいて実はこれって結構大事なんです。

調律するには目の前のピアノの状態だけではなく、前回がいつだったか、それまでがどうだったか、どんなストーリーを経て今こうなっているという見極めが大事です。たとえば大きく狂っているピアノがあって、それが毎年調律をしている上での狂いなのか、10年調律が空いている故なのかで、やるべきメンテナンスが全く変わってきます。

そのためにメンテナンス記録は非常に大事な情報になってきて、きちんと記録されていることはもちろん、正確に読み解けることが大事です。

数十年と言う長い単位で使っていくピアノという製品は、「和暦」とはやっぱり相性が悪いんです。

西暦だと地続きになる

単純に、和暦だとパッと見て計算が難しいのもありますし、感覚的にも途切れてしまうんですよね。

前任者の書いたものを書き換えないことは最低限の礼儀だと思っているので、追記をしてわかりやすくするときは写真を撮ってタブレットで書いています

1980年代はさすがにしょうがないと思います。まだ和暦が主流だった時代ですから、この頃の記録を西暦で書いてあるものには出会ったことは一度も無いです。

1990年代の記録になると西暦表記がチラホラ。それでもかなりレアです。

2010年を超えてきたころからなんとなく西暦のほうが良いのでは?という機運が高まってきた気がします。

でも途中まで「平成21、平成22、平成23…」と並んでいる記録をいきなり次から「2012年」に切り替えるのは確かに勇気がいるよね…と思いながら、令和に変わって「さすがに元号 3つ跨ぐと計算無理だし、やっと一斉に西暦にリセットできるタイミング来ましたよ!みなさん!」と思っていたら新品ピアノの初回調律欄に「R1年」と書いてある記録カードを見てずっこけてしまいました。

何か他の書類と揃えるために和暦の必要があるとしても、せめて西暦との併記が良いんじゃ無いかと思います。

西暦で記録を書いている技術者の作業は好きです。過去、現在、未来と長いスパンで繋ごうとしているのがわかる気がして。

ピアノに直接書いているのはもう一周回ってワイルドで好き

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つくし@ピアノ調律師の書斎
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