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ピアノ調律師の地味な仕事道具

ピアノ調律師の道具と言うと、音を上げ下げするための「チューニングハンマー」にスポットが当たりがちですが、音を止める道具も大事です。

調律師と言ったらこれ。チューニングハンマー

そのひとつが「フェルトウェッジ」
音を合わせるために必要な音は鳴らしつつ、不要な音は鳴らないようにしておくための道具です。

きれいなやつが未開封しかなかった

ピアノの音は多くの音域で3本1組になっています。このクサビを差し込み一部の弦を押さえてミュートして、1本だけor2本だけ鳴らすことで調律を進めていけます。

差し込んで右の弦を止め、真ん中の弦に左の弦を合わせているところ

消耗品なのでへたってきたら同じものを買い替えていましたが、今回初めての商品を購入してみました。

カラフルでかわいい

ピアノのハンマーを作っている会社さんの新商品。ハンマーで作った小物などの一般販売もされています↓

正直、フェルトウェッジは音を止められればそれで良いと思っていたので、この商品もふつうは白やグレーが多い中で珍しいカラフルさに惹かれての購入でした。気になるのは差しやすさとか、差したあと抜けてこないか、くらい。

あとは色分けされていると片付けるときにわかりやすくて良いなあと。
何本も持っているので、気をつけていてもついピアノの中に置き忘れてくるのは“調律師あるある”です。

色分けされてると全部片付けたことがわかりやすい

そんな感じでカラバリ感覚くらいのつもりでしたが、使ってみると…

元々使っていたフェルトウェッジと比べて、これを差して鳴らしたときの音が明らかに違う。今までのものは硬めの音ですが、こちらは素直で落ち着いた音です。

シンプルに音を止めているだけのフェルトウェッジなのに、ここまで音が違うとは。驚きでした。

でも考えてみればそれはそうで、フェルトウェッジ自体も弦の振動を止めようとすることで振動してしまっています。音を鳴らしながら、差し込んでいるフェルトウェッジを触ると結構な振動を感じるくらい。音としては微かですが、調律中の音にはフェルトウェッジの振動音が混じっています。

その振動の具合が、このフェルトウェッジはかなりおだやかでした。

もちろん調律が終わったらフェルトウェッジは外すので、フェルトウェッジの音は弾く時に直接関係あるものではないのですが。でも出てくる音が素直だと調律で伸びのある音が作りやすいなと思いました。耳も疲れづらい気がします。

触った感触も独特で、重さも測ってみると一般的な同サイズのものと比べて1gも軽かったです。あとで聞くと特殊な製法で作られているようで、このあたりが振動の違いに現れているようです。

やっぱり色も良くてテンションが上がります。意外と大事で、調律中の視覚の効果も、作る音に少なからず影響はあるんじゃないかと。

改めて、ピアノから出ている音すべてに気を配らないとなと思った体験でした。

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つくし@ピアノ調律師の書斎
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