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「つぐみ」になりたい呪いをかけた

こんにちは、つぐみBooks&Coffee店主のシノです。

鳥が好きなことに定評のある私ですが、店名を「つぐみ」にしたのは鳥好きだからというのはもちろん、それ以外にも理由があります。

ツグミが好きだ

そう、ツグミ――スズメ目ヒタキ科ツグミ属ツグミ――が好きです。おお、分類、盛り沢山ですね。可愛い鳥がいっぱい並んでる。雀の、そのまんまスズメって感じの可愛さもたまりませんが、鶲(ヒタキ)も鶫(ツグミ)も、(関係ないけど鴉{カラス}も)こう、厨二心をくすぐるかっこいい漢字ですよね。そういえば大昔に生み出したオリジナルキャラクターに「鶲」って名前つけてたな…黒歴史…。ちなみに、現在の我が家(というか私と母)は庭にやってきたツグミを「つぐみん」と呼んで愛でています。ひふみん、みたいですね。ひふみんも可愛いですけどね(笑)
また、トップの写真をご覧いただいてもわかるかと思うのですが、ツグミがしゃん!としている姿がたまらないんですよね。たたたた、しゃん!て走るんですよ、畑とか。めっちゃ可愛くないですか?いや、可愛いんですよ。スズメも周囲を確認するために伸びたりしますが、スズメはしゅ、って細くなって、にょん、て伸びるんですけど、ツグミは伸びる訳じゃないんですよ。姿勢を正しているんですよ。憧れます。私は将来おっかないお婆さんになりたいので、日頃から背筋を正すよう気をつけています。気を抜くとすぐ猫背になってしまうのですが、気をつけ始めてから段々猫背率が低くなってきた自覚があります。肋骨が開くし、肩甲骨が寄るので気持ちいいですよ。
そしてツグミがツグミと呼ばれる由来が「口をつぐむ」から来ている点も魅力的です。夏になるとシベリアに渡ってしまっていなくなるからとか、冬もあんまり鳴かないからとか、どこで「口をつぐむ」かには諸説あるようですが、この由来を初めて知った私は「ひえー!かっこいい〜!」と思い、それ以来ファンです。鳥なのに……囀らないで、嘴を噤んでいるなんて……高倉健みたい……。

「つぐみ」をひらがなにした理由

さて、冒頭で「鶫」の漢字がかっこいいという話をしておいて、なぜ店名はひらがななのか。勘のいい方はお気づきかもしれませんが、そう、ひらがなは無限の可能性を秘めているからです

1. 前述したように、ツグミの由来は「口をつぐむ」から。当店はブックカフェなので、「たまには口をつぐみ、本を読むのもいいもんですよ」という気持ちを込めて。

2. 私が公務員から、珈琲を注ぐ身になる、という意味でもあります。つぐ、そそぐ。

3.当店の本は父が蒐集したものが大半、という話はご挨拶の記事でも書きましたが、つまりこの本たちを私が「引き継ぐ身」である、ということです。そして、それは私と本の関係だけに限ったことではなく、私たちは誰しも、過去から未来へ、人から人へ、社会や環境、様々なものを引き継ぐ身であるという認識を再確認する意味でもあります。環境問題なども大きな関心ごとなので、テイクアウトをどうするかなど、ゴミの削減課題も検討中です。また、私は地元で獅子舞に携わり続けているのですが、伝統芸能もわかりやすい一例ですよね。奉納は毎年10月、今年はどうなるでしょうか……(むしろ3密心配になるほど人が観に来てくれれば嬉しいのですが、なったらなったで困っちゃうし……)。あと、つぐみでは物販も予定しているのですが、作り手から使い手へ、前持ち主から新しい持ち主へ、など、色々なものを引き継げたらいいなぁと考えています。

4. 実は趣味で「金継ぎ」をしていた時期があります。現在漫画家としても活躍されている堀道広先生の「金継ぎ部」――場所は阿佐ヶ谷の「よるのひるね(夜の午睡)」――に通い、ゆるくて優しい堀先生に至れり尽くせりお世話になり、終わったらサブカル本に囲まれながら名物のチャイをいただく日々……いや、日々というか、数ヶ月に一回しか行かないので、全5回を一年以上かけて卒業したかも……。でも、素肌に漆がついてもかぶれることもなく、至れり尽くせりしてもらった割にはちゃんと技術は身につけ、順調に楽しくやっていました。自宅でもおちょこから花瓶まで大小10個以上直したんじゃないかなぁ。

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しかし、ある年突然(免疫でも弱っていたのか)漆かぶれ?で手がかゆくて仕方なくなってしまい、完治するまでと一旦離れたらもう……という感じですね。本当は再開したいのですが、あの手のかゆさを思い出すとちょっと怯んでしまうところがあり、ちょっとしたトラウマになっています。当店でも「金継ぎ承ります」って言いたかったのにな……。なので、金継ぎ自体はまだしばらく再開しないかもしれないのですが、器などに限らず、壊れてしまったもの、綻んでしまったものを修復する、という意味での「継ぐ身」になりたいという思いでもあります。

5. そして、これからも続けていきたい文字での発信をメインに、情報や私の思うところなどを積極的に「告ぐ身」でいたいという心意気です。広めた方がいい、言った方がいいと判断したことは、黙って飲み込んだりしません。でも、言い方には気をつけますね……つい好戦的な、皮肉っぽいことを言ってしまうのは私の悪い癖なので……。めちゃくちゃ鋭角のおにぎりを握ってしまうたびに(うわ……私みたいなおにぎりになってしまった……と)反省しています。

……とまぁ、こんな感じで「つぐみ」の中にはたくさんの意味が込めてあり、それは今後もどんどん増えていくかもしれないので、すでに5個あげちゃいましたけど、ダブルミーニングどころではありませんね。

「つぐみ」には、欲張りな私の期待と言葉がたっぷりつめこんであるのです。

ふふふ。しかし「つぐみBooks&Coffee」のポテンシャルはそれだけではないので、それを店主が台無しにしてしまわないよう、しっかり覚えておかなくてはいけないな(でも胆に銘じても時間が経つと絶対忘れるので、今、構想ノートに改めてメモしました。たぶん、もうどこかにメモしてあると思うんですけど……ないかもしれないから……※常時この調子です)。


名前は一番短い手紙で、祝福で、そして呪いです。


「つぐみ」という名の代償に、私は自分を呪ったのです。


見えない重荷をたくさんたくさん背負わせた名前。


でも私は、困った方が色々考えるし、失敗した方が工夫するし、なんやかんや意外とへこたれないと知っているので、祝福された明るい道よりも、呪われた苦難の道をじたばたしながら進んだ方が楽しいんじゃないかと思えてしまうんですよね。

もう、十分恵まれている私は、もっと呪われた方がいい。みんな優しすぎるんだ。感謝してもしきれないから、もうこれ以上私を甘やかさないで……!

シベリアはシベリアでもそっちじゃだめなんだよ……!(※なんのことかわからない方は「シベリア菓子」とかで検索してみてください。めちゃくちゃ甘いやつ出てきます。)


「つぐみ」の名を背負っても囀りが止まらない店主ですが、じたばた右往左往している私を一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。

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