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提言⑨ブランド化戦略(2)海外展開

 前回の続きから始める。

 前回は、市町村のブランド化戦略には、選別した「特産品」による総合的なプロモーション戦略と海外展開が必要である旨を主張した。

 すなわち、地方自治体における「選択」と「集中」である。

 この「選択」と「集中」は、地方に行けば行くほど忌み嫌われるワードの一つだ。
 市町村合併で文化の違う市町村であればあるほど尚更だ。

 市町村内である地域や分野を「選択」し「集中」する政策をとると、その選択から漏れた地域や分野から批判の声が上がる。
 それらの批判を受け止めながら、それでも選別し優先順位を決めて政策を推し進めていくのが政治の世界である。
 「選択外」の「特産品」業者や生産者は、もしかしたら補助金等の既得権を失ってしまうかもしれない。そういった業者や生産者に対しては補助金ではない支援制度に置き換えるなどの支援体制の見直しをしながら、なんとかして選別した「特産品」による総合的なプロデュースを進めていく。

 総合的なプロデュースにあたっては、行政や関係団体による話し合いに留まるだけでなく、生産者、流通業者、販売者もこのプロデュースのスキームに組み入れ、丁寧に合意形成を図りながらマーケティングを行っていく必要がある。
 行政や関係団体がそのノウハウがないからといって、大手のコンサルに丸投げするようなことをしてはいけない。
 コンサルに丸投げした時点で、地域の人たちは「考える」ことを辞めてしまう。
 コンサルを活用するのであればプロデュースのスキームの組み立て、地域外のニーズ調査等にとどめ、あくまでも地域にとって何が大事かを地域の住民が知恵を出して話し合いながら、決めていくことが重要である。

 だが、前回「りんご」の例で話したように地域外には多くのライバルがいる。

 圧倒的なシェアを誇る「青森県」や「長野県」のブランドに対抗できる「りんご」と勝負できるか?を見極め、この分野で地域外で勝つことができないのであれば、第二の提言の「海外展開」に活路を見出すことを進めたい。

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 「地域再生の失敗学」(光文社新書)の中で、経済学者の飯田泰之氏と同じく経済学者の入山章栄氏の対談の章があり、そこで地方の中小企業の国際化が話題となっていて、松江市の茶舗の話が紹介されていた。

飯田 地方の中小企業のスパイキーな国際化については、松江市のある茶舗の話が興味深い。創業100年以上の地場の茶商ですが、現在タイにカフェチェーンを展開しているんです。松江には松平不昧公が根づかせた抹茶文化があるのですが、かといって全国的には静岡や宇治、関東ならばこれに加えて狭山と言った地名が強くて、マーケティングには苦労せざるを得ない。この会社はかなり早くからアジア市場に目を向けていて、失敗も経験してきたそうですが、タイで輸入商品を扱う経営者の目に留まって、タイの富裕層向け商品として、単に商品を売るのではなく、抹茶文化の体験型カフェという性格を強くして展開したらブームになったそうです。
入山 グローバル展開したら逆に競合がいなかった、と。それは面白いですね。
飯田 これが東京圏や関西圏で展開しようとしたらそうはいかないでしょう。国内だとライバルだらけ、一方でいち早くアジアに展開すれば、その国では日本を代表するブランドになるわけです。本国では数多いメーカーのひとつにすぎないのに、特定の国では日本代表のようにふるまえる。いわばベンチャーズ(アメリカのエレキバンド)の戦法です。

(地域再生の失敗学 第3章フラット化しない地域経済より引用)

 松江の茶舗のほかにも、岡山の桃太郎ジーンズなどの例も取り上げられていて、それらの企業が海外に進出するのは「全国展開を飛び越えてグローバル展開するのは、単純に国内マーケットが縮小しているからではなくて、東京でライバルと戦うほど強くないから海外に出る道がある(入山氏)」という戦略によるものだ。

 加工品にとどまらず、農作物や一時産品でも、国内の最大手を避けて海外で勝負するケースも増えてきているようで、例えば郡山市ではベトナムをターゲット国とし同市特産の「梨」を海外展開している。
 そこでは、現地人へのヒアリングや、テストマーケティング、セールス、オリジナルスイーツの販売など単なる「梨」の輸出ではなく、郡山の「梨」のブランド化を進める戦略がとられている。

 国も農林水産物・食品目標輸出額を1兆円に設定し、輸出拡大を図っている。そして、国内の物価高や円安と言う流れを考えても、国内という「レッドオーシャン」の市場を避け、世界、例えば著しい発展がみられる東南アジア諸国をターゲットに「ブルーオーシャン」の市場で、のブランド化した「特産品」で稼ぐ戦略を検討してもいいかもしれない。

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