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《前編》【体と心の性の"ちがい"から知る自分の見つけ方】”ちがい”を知ろう!ふむふむウェビナー #01

 みなさん、こんにちは。「ふむふむ」です。

 今回は2022年5月14日(土)20:00~21:30に開催された『【体と心の性の"ちがい"から知る自分の見つけ方】”ちがい”を知ろう!ふむふむウェビナー #01』のアーカイブ(文字起こし)の《前編》を掲載します!

 インタビュアーは【げんのすけ】、ゲストは【さくら】(※敬称略)です。


さくら先生ってどんな先生?

【げんのすけ】
こんばんは。みなさん、ご参加いただきありがとうございます。
「ふむふむ」の第1回めのウェビナーなので、簡単にご紹介させてください。
「ふむふむ」は”ちがい”を楽しもうというコンセプトで、本日ご参加いただいているウェビナーをはじめ、体験型WS、講演をご提供させていただいております。
ウェビナーをとおして、みなさまに”ちがい”を理解する、知る、たのしむというところを発見して持って帰ってもえられば…と思って開催しております。
このウェビナーでは毎回様々なゲストの方をお迎えしていろんなお話をシェアしていただこうという趣旨になります。
本日のゲストは現役の高校教師をされている、さくら先生です。
本日は、さくら先生が周囲と自分との”ちがい”をどうやって捉え、工夫して楽しんでいらっしゃるのかをいろいろとお伺いしていこうと思います。
【げんのすけ】
 さっそく、さくら先生をお呼びします。
【さくら】
 こんばんは。
【げんのすけ】
 先ほども簡単に紹介させてもらいましたが、大阪府でいいんですよね?
【さくら】
 そうですね。
【げんのすけ】
 大阪府で現役の高校教師をしていらっしゃるさくら先生をゲストにお迎えしております。
 よろしくお願いします。
【さくら】
 よろしくお願いします。
【げんのすけ】
 改めまして、さくら先生の自己紹介をお願いします。
【さくら】
 高校教師をし始めて、今年で13年目になります。最初は定時制、次に通信制、そこから同じ学校に11年勤めています。教科は理科ですが、教員免許は情報・数学・商業、あと中学の理科を持っているので、なかなか逃がしてくれない感じで…(笑)
 今は情報の授業がメインで、2年生全員を教えています。学年は3年の副担任をしています。奨学金の時期なので、うちのクラスの生徒の不備をチェックしては返す…という日々を過ごしています。
【げんのすけ】
 お忙しいですね…
【さくら】
 そうですね、この時期は忙しいですね。
【げんのすけ】
 そして多才ですね!ものすごくいろいろ資格も取られて、勉強されているので、そんなに優秀なさくら先生のことを学校は逃がしてくれないわけですね。
【さくら】
 全然優秀なんかじゃないですよ(笑)
 「逃がしてください!」って毎年言ってます(笑)
【げんのすけ】
 御謙遜を…(笑)
 辞められる先生方もいらっしゃる中、こうやって長い期間第一線で働いていらっしゃるとは思うのですが、もう少し具体的に学校で「どういう先生」なんですか?例えば、子どもたちから見たら、さくら先生とはどういう先生なのでしょうか?
【さくら】
 基本的には自分のことは一番最初の授業をまるまる使って、しゃべります。生い立ちとか自分の人生を包み隠さず…生徒たちには「質問があったらどんなことでも聞いていいよ」と言って。
 最近はあまり呼ばれなくなりましたが、(生徒は)勝手に「さくらちゃん」とちゃん付けで呼ぶようになってきますね。でも、「職員室に来るときは『ちゃん』はやめて、『先生』をつけてね」と、そこら辺の指導はしていますね。
【げんのすけ】
 生徒さんとも和気あいあいとした雰囲気でいらっしゃるんですね。
【さくら】
 そうですね。
【げんのすけ】
 最初の授業で「自分のことについて話をします」とおっしゃっていたのは、具体的にはどのようなことを話すんですか?
【さくら】
 自分のおいたち、セクシュアリティに関すること、高校時代はどうだったか、この先みんなにどういう風になったらよいかという参考にしてもらったり…うちの学校は「学校開き」というのがあったり、クラスミーティングで最初に(生徒自身に)自分のことを話してもらったり…「しんどい自慢」ではなく、自分と向き合うことの大切さを3年間を通じて教えていくので、それに先んじて自分でも工夫して授業をしています。
【げんのすけ】
 なるほど。
 さくら先生が勤めていらっしゃる高校に入学して、あるいはさくら先生が担当されている授業に当たった生徒は、まずさくら先生から「男性として生まれて、女性として生活しています」といった情報を先に先生からある種のカミングアウトをしてもらえる、という状況ですか?
【さくら】
 はい。
【げんのすけ】
 さくら先生は長い間教師をしていらっしゃいますし、ご自身の身体と心の差についても生徒のみなさんにお伝えしているかと思うのですが、実際に教師をしていらっしゃって、ご自身と他の先生方との”ちがい”を感じることもあったのではないかと思いますが、実際に感じられた”ちがい”にはどのようなものがありましたか?
【さくら】
 感じるのは、生徒はそんなに気にしない。けど、先生が気にする。それは感じます。
 だんだんそれも慣れて気にしなくなるのですが、入り口(はじめ)はそれを感じます。
【げんのすけ】
 「気にする」というのは、ネガティブな意味ですか?
【さくら】
 そうですね。生徒に変な感じで伝わったら、(周囲の先生方の中には)自分はどう対応したらよいのかわからないという人もいる。それも社会状況なのかもしれないけれど、少なくはなってきているという実感はあります。
【げんのすけ】
 年々、生徒さんは特に今の世代の子だとタレントも多いし、今はみんなSNSも使っているし、イベントもたくさんあるので、そういった部分に関しては、(世代でくくるのはよくないかもしれないが)柔軟性があるように思われるのですが、大人の方、特にさくら先生よりも目上の方になってきたときに、受け止めが難しかったり、時間がかかったりという面があったのかなと感じますね。
また、さくら先生ご自身が生徒として、幼稚園・小学校・中学校・高校・そして大学と過ごしてこられたと思うのですが、ご自身が生徒として先生と向き合うときに、心と身体の性別違和に関して伝える機会はあったんですか?
【さくら】
 なかったですね。まったく。
【げんのすけ】
 カミングアウトはどの先生にもされてないんですか?
【さくら】
 そうですね。そもそもカミングアウトをしたのも大学になってからだったので、それまでは(周囲や先生にカミングアウトするということに関しては)全然でしたね。
【げんのすけ】
 知識もなかったということですか?
【さくら】
 そうですね。ネットも今のように何でも検索できるわけではなかったので。

「教師になろう!」は悪い先生がいたから!?

【げんのすけ】
 そもそも論なのですが、なぜ「教師をしよう」と思われたんですか?
【さくら】
 そもそも、23歳の時に大学院まで行って、いろいろあってしんどくなって、自分のことを自分で抱えきれなくなって。「いよいよカミングアウトしよう」ということになって、大学院の研究室の教授と、私の上の専門の先生みたいな人と親と私の4人で初めてカミングアウトをした時に、その教授から「お前みたいなやつバケモノや」「もう面倒見られへん」と言われました。そこから研究室に行くことができなくなって、そこからしんどくなって家にひきこもったり、2~3年ほぼ寝たきりのような状態になって。その時に一番考えたのが、これからの子どもには自分のような経験をしてほしくないな、と思って、そのように嫌な思いをさせられたのが…私に嫌な思いをさせてきたのは「先生」と呼ばれる人たちだったので、私はそうではない先生になろうと思って、だいぶスタートは遅いですね。目指し始めたのは。
【げんのすけ】
 なるほど。僕は教師でもないのでわからないんですが、教師になりたい人って、先生に憧れを持ったり、良い先生に出会った経験から「自分もああいう先生になりたい」と思ってめざされるのかなと勝手に思ってたのですが…
【さくら】
 そうですね。
【げんのすけ】
 ただ、今のさくら先生のお話を聞いていると、全く逆の方向ですね…
 こういう教師になりたくない、という思いやこういう教師に子どもたちを預けてはいけないというような正義感がきっかけで教師になろうと思った?
【さくら】
 そうですね。
【げんのすけ】
 僕は大学も行ってないので、システムもあまりわからないのですが、大学院に入られてご自身の身体の性別と心の性別の差に限界がきて、苦しんで、カミングアウトをされたと言っておられましたが、教師になろうと思ったのはこの後なんですよね?
【さくら】
 そうですね。
【げんのすけ】
 ということは、大学と大学院はそもそも教師になるための学校ではなかったんですね?
【さくら】
 そうです。
【げんのすけ】
 めちゃめちゃ紆余曲折があって、学校の先生というところにたどり着いたと思うのですが、時系列順にお話をさらに掘り下げて聞かせてください。
【げんのすけ】
 さきほどおっしゃっていたように、大学院でカミングアウトをして、先生にひどいことを言われた、と。そして、それ以外にも自分に対してひどい扱いをしてきたのは「先生だったんです」と仰ってましたが、ということは、大学に入る前から「先生」と呼ばれる大人の人たちから、さくら先生のジェンダーに関わる部分で嫌な言動を与えられてきたのかなと思うのですが、ちなみに幼稚園・小学校まではどういう学校環境だったんですか?
【さくら】
 幼稚園のときは男女について子どもたちはそんなに気にしない、でもやっぱり私みたいな子をすごく嫌がる、気持ち悪がる先生がいて。その先生がその幼稚園のボス的な、子どもから見てもわかるような人で。その人に目をつけられて、いろんな嫌な目にあわされたんです。
 すごく記憶に残っているエピソードは、演奏会で私の担任は私をセンターの鉄琴にしてくれたんですけど、その練習の様子を見た「ボス(の先生)」が、「あの人鉄琴できてないやん」と。「全然できてないから別の楽器にし」とみんなの前で聞こえるように担任に向かっていい、私は誰にでもできるカスタネットに変えられたのはすっごい覚えていますね。
【げんのすけ】
 それは嫌ですね…スキルとは全く関係のないところで、判断されているということが幼いながらにわかったということですね。
【さくら】
 そうですね。それだけではなかったのですが、すごく記憶に残っているというのがとりあえずそれです。一番嫌だったことです。
【げんのすけ】
 今質問がきました。ご質問いただきありがとうございます。
 ≪質問です。カミングアウトをしてから教師に必要な単位を取得したのですか?大学卒業時には教員免許は取得されていたのですか?≫ということですが、いかがですか?
【さくら】
 卒業したときには教員免許はもってなかったです。大学院終わってから、もう一年科目等履修生として大学に戻り、必要な単位を習得しました。だから、教育実習には27歳のときに行きました。
【げんのすけ】
 本当に紆余曲折があって、人生の選択をいろんなタイミングでして、あっちいったりこっちいったりを繰り返しながら、今教師の職に就かれているということですね。
【さくら】
 そうですね。
【げんのすけ】
 幼稚園の頃のお話に戻りますが、さきほどさくら先生から、「どうしても周囲と”ちがう”部分があったので、目についたんでしょうね」という発言がありましたが、見た目でわかるほどに何か個性的な感じだったんですか?
【さくら】
 服装が女の子っぽかった訳でもないし、自分ではわからないですよね。「自分は自分」なので。
【げんのすけ】
 例えばしぐさや言葉遣いで、俗にいう「あのこ、男の子らしくないな」というのを先生が勝手に受け取ったということですかね?
【さくら】
 そうかもしれないですね。当時は女の子とばかり遊んでいたので、話し方も女の子たちに合わせるというか、似せていた可能性はあると思います。
【げんのすけ】
 なるほど。どの世代でも、どの時代になっても、ある程度の人数が集まった場合、「あれ、この子ちょっと”ちがう”な」とか、「ちょっと浮いているな」みたいなことがジェンダーやセクシャリティの面でもあるかもしれないのですが、そこで育てる側として、そういった子たちを受け入れてあげたりその原因を探してあげたり、受容する部分の態度や姿勢が欠けていたのが、さくら先生の中でいまだに印象的に残ってしまっているということですかね。
【さくら】
 そうですね。
【げんのすけ】
 小学校ぐらいになると、男女差がより出てくると思うのですが、体つきや、特に着替えの場所が男女で分かれたり、いろいろな場面で男女を分けられていくような機会が増えると思うのですが、小学校のときはどんな感じでしたか?
【さくら】
 小学校低学年のときがすごく嫌な思い出しかなくて。小学校の1年の時には修学旅行の夜とかでよく好きな子を言い合うこととかがあると思うのですが、早速その頃に学校の帰り路に好きな子をどんどん周りの子が言っていく、みたいな場面があって。「私もいわなあかんのかな」となって、同調圧力みたいなのを感じて、私は男の子しか好きになったことがなくて、その男の子の名前を言っちゃったら、周りが引いてしまうというのをそのとき初めて経験しました。それがどういうかたちでか担任の先生に伝わり、そこから私に対する態度が急変して、質問を聞いてくれなかったり、テストの点数は良いのに通知表の成績はめっちゃ悪くつけられていたりとか。すごくあからさまな感じになっていき、「何なんやろ?」と小学1年生なりに悩んで小学2年に上がったあと、担任の女の先生に初対面の時に「あんたみたいな子気持ち悪いねん」「あんたみたいな子は死んだらいいねん」って普通に言われて、「この人何言うんやろ?」ってしょっぱなから思いました。今だったら完全に体罰ですが、めっちゃ空気椅子をさせる先生で、私が何もしていないのに、「今○○したやろ」と言ってどんどん言いがかりをつけられて、空気椅子をさせられて。理不尽な理由で、というか何もしていないのにそんなことをさせられていたので、そんなんが嫌で「空気椅子でも椅子に座ってるのと変わらんわ」ぐらいの感じで反抗していたら、それが余計に(先生の)気に入らなかったのか、エスカレートしてほぼ1年空気椅子の状態で。それは自分だけで何とか抑えておいたら問題にはならないと思っていたんですが、すごく嫌だったのが日曜参観のときに、参観に向けて作文を書く授業があって(原稿用紙の使い方として)文頭を一マス空けて書き出して、文末がその行の最後のマスで終わった場合は、同じマスに「。」を入れるみたいな、基本的な書き方の授業だったんですが、それで書き終わった後に先生が私の席まできて、「いや、あれは違うねん。文頭は一マス空けずに書いて、その行の最後のマスで書き終わったら、次の行の一番上のマスに「。」を書くんだよ」とか、そういう風に言ってきて。その時だけやたら丁寧に。その通りに書き直したのを当時OHPを通して日曜参観で表示させられました。私の作文を誤りの例として名前を晒した状態で投影されて、「先生の言うとおりに書いたのに」と反論をしても、先生は「私はそんなこと言っていません」と全然受けつけてもらえず、親の前でされたのがすっごい嫌で、私だけなら何とかするけど、親を巻き込むなと思って。小学2年生にして「教師はクズばっかりや」とその頃からスレた子になりました。
【げんのすけ】
 小学校前半にして、ドラマかな…と思うくらいの。
【さくら】
 そうですね。逆にすっごい良い先生に出会ってたら、何の疑問もなく育っていたかもしれないんですけど、「当たりの連続」でこんなんになっちゃいました。
【げんのすけ】
 冷静に考えたら、これは「先生」がしたことなんですよね。子どもを育てる教育者としての「先生」がこんなことをするなんて、これがびっくりするところですよね。
 人生の前半からだいぶパンチの効いた経験をされてきたんですね。
【げんのすけ】
 お母さんは、大学のカミングアウト時や日曜参加等、いろいろな場面を見てこられていると思いますし、自分の子どもが(さくら先生が)、もともと「ごく一般的な」という言い方が僕も表現としては好きではないのですが、「多くの男の子たちとは(さくら先生が)何か”ちがう”点があるな」ということを感じておられたのではないかと思うのですが、学校で起こったあれやこれやについては、お母さんに言うことは無かったんですか?
【さくら】
 さすがに言えなかったですね。先生にこんなことされている、というのも言えなかったですし、不登校が悪いとは私は思っていませんが、休むことで自分を守るということも当時はできなかった。休むのは悪いことだという植え付けはあったと思うし、逃げるという手段をとることもできなかった。
【げんのすけ】
 お母さんに相談することもなく、小学校時代を過ごされていたのかなと思うのですが…
 ただ、日曜参観の件については、お母さんからしたら、「何でうちの子の作文を悪いやつみたいに」みたいな反応はなかったんですか?
【さくら】
 それもいちいち確認することができませんでしたね。何か思うところはあったと思いますよ。「何でうちの子が」みたいな。しかも、名前付きで…せめて名前を伏せる等の配慮があればまだアリかもしれないのですが、名前を晒した作文を直しましょうはあり得ないですよね。
【げんのすけ】
 よくも悪くも母親には言えないという思いがあり、もちろん先生にも言いたいことは言えないし、親御さんにも悩みを打ち明けたり相談をしたりすることもないまま過ごされたという感じですか?
【さくら】
 小学校低学年のときはそうでしたね。
【げんのすけ】
 ちなみに、お友達はいたんですか?
【さくら】
 いましたね。
【げんのすけ】
 そういう子たちが「あの先生おかしいな」とか「(さくら先生は)おかしくないよ」みたいに守ってくれることはなかったんですか?
【さくら】
 ある時学級会みたいなのをして、子どもたちに話をさせて、先生が悪いみたいになりそうになったら、「いやいやこんな考え方もあるよね」と言いながら、子どもたちの考え方を誘導して、先生自身が悪くないように持っていく人だった。「え、みんな悪いって言ってたやん」と私は思ったし、そういう風に人の意見がコロコロ変わるという場面をたくさん経験してきたので、「こんなことってあるんや」って当時はすごく深く思いました。
【げんのすけ】
 友達は友達だけれども、大人の知恵で思考や発言を曲げられ、変えさせられるような環境だったんですね。
【さくら】
 そうですね。
【げんのすけ】
 かなり劣悪と言うか、だいぶひどい教育環境だったんですね。
【げんのすけ】
 先ほどのお話の前半にあった「テストの点数は良いけど通知表の成績は悪くつけられた」なんて、そんなことはあり得るんですか?
【さくら】
 どこで成績をつけているのかが当時本当にわからなくて…テストはほぼ満点に近い点数だったのに、なぜか通知表はそうではない…。だから「私は勉強できない子なんや」と、自己肯定感がとても低い小学1・2年生でしたね。勉強はできないし、いじめられるし、私は何なんや…という感じでしたね。そういうこともすごく考えていた時期でした。
【げんのすけ】
 あからさまに周りとは”ちがう”扱いをされてきていますよね。
【さくら】
 私からしたらそれが普通だったし、人の通知表も見たことがないし、「こんなもんだ」とは思っていましたけど…
【げんのすけ】
 テストの点数なんかは数字なので、出来の良い悪いがはっきりわかるものなのに、そのテストで良い点数を取っていても、大人の判断で下にされたり、ある種の体罰や暴言を受けることで、「私は何もできない子なのではないか」と思ってしまう。褒められた経験がないと、そうなっちゃうんですね。
【さくら】
 そうですね。小学校なので、担任以外の目が入らないというのが、そういうところであからさまに出ていたのかもしれないですね。担任のやることがそのまま反映されてしまう環境というか。
【げんのすけ】
 そうですね。中学や高校になると、大学も授業によって先生が変わると視野が広くなることもあると思うんですが。一番小さいときに、小学校の先生って、たまに間違って「お母さん」って呼んでしまうくらい一緒に過ごしている時間が多いし、親の次に身近な大人という存在佳奈と思うのですが、そこで日々自尊心を削られていくような生活を送っていくのは本当に辛いと思います。改めてそこから(さくら先生が)よく教師の道にたどり着いてこられたなと、すごいなと思いました。

男として生きていく!…その先に

【げんのすけ】
 ちなみに、小学校はそんな感じで過ごされて、中・高は、一番思春期じゃないですか。最初の
「好きな子言い合おうよ」とかよりもディープな話題になったり、服装をはじめ、明らかに男女の差が出てくる頃かな、時代的にも、男女が二分化される頃に突入するのかなと思うのですが、中・高はどのよな感じで過ごされていたんですか?
【さくら】
 小学校高学年のときに受けた性教育で、「自分は男性として生きていかなあかんのや」という現実を突き付けられた感じがして、自分を矯正するために、「男子校行こう」と単純な発想から中学受験をして、男子校に中・高6年間行きました。でも行ったはいいけど、困ることがめちゃくちゃあって、日常生活で困るのはトイレ。立ってするのがありえない。かといって今みたいに敷居がないようなところもあって、だったら和式でするしかないけど、そういうところに入ったら、「あ、あいつしてるでみたいな」
【げんのすけ】
「あいつ、うんこしてるで」みたいな?
【さくら】
 そうです。その当時って、そういうのあるじゃないですか。そういうのが面倒くさかったので、しゃーなしで誰も使わないような、体育館の近くの古いトイレを使ってしのいだり、体育の着替えが見るのも見られるのもすっごく嫌で、皆が着替えてから授業に行った後、最後に私が着替えて授業に参加して、逆に終わったときは私が一番に戻って来て先に着替えて…というのをしてましたね。ちょっとでも自分を守るようにしていたり。あと修学旅行も困りすぎて、大浴場とか「絶対無理」と思って、部屋に水道はついていたので、タオルを濡らして体をふいて何とか耐えたり…でも、高校の修学旅行のホテルがあり得なくて、お風呂が前面ガラス張りで、「何なん、このまる見えのお風呂は」となったので、同日の子を全員部屋から追い出してシャワーをして…というしのぎ方をしていると、「何のために男子校来たんやろ?」と。行ったはいいけど、いろいろ思うことがありましたね。
【げんのすけ】
 なるほど…。
 ちょうど今、ご質問も来たところなので、改めて質問をさせていただきたいのですが、「自分がもしかしたらトランスジェンダーかもしれないと思ったときは、葛藤などはありましたか?」というご質問ですが、僕もお話を伺っていて思ったのですが、小学校の頃から「何か自分は”ちがう”な」と感じたり、大人や周りからの態度によって「自分は周囲とは”ちがう”んだ」と感じながら来られていたのと、先ほどおっしゃっておられた「性教育」によって「男として生きなければならないと感じた」というお話もありましたが、どのタイミングで性別違和を感じられたのですか?
【さくら】
 私の場合は、物心ついたときからですね。
 性別を軽い気持ちで考えていて、いつでも性別は変えれるんだとあえて思うことで何とか耐えてきたところはあるのですが、小学校で性教育を受けて男女にわけられてそれぞれ男女の先生によって別の教育をうけたときに、もう「あ、性別って変えられないんだ」という現実を次々に突きつけられた気がして、「私はもう女性としては生きられないんだ」と思って。その性教育を受けたその日に「死のう」と思い、当時図工の授業で使用していた彫刻刀で手首を切って死のうと思って、どのくらいの時間が経っていたかわからないですが、放課後の教室で彫刻刀を持って独り死のうとぼーっとしていたら、しばらくして当時の友だちが来て止めてくれて。幸いリストカットの跡もつかずに済んだのですが、じゃあ、女性として生きていけないのなら、本当にどうしたらよいのかわからなくて、簡単に死ぬという選択肢をとってはいけないとか、そんなことをたくさん悩んだ末に「男として生きていかないといけない」と小学生の当時の単純な発想から男子校に進学するという選択をした、という感じですね。
【げんのすけ】
 違和感は小さい頃からずっと感じておられて…
【さくら】
 もうずっとですね。
【げんのすけ】
 おっしゃっていたように、自分は”ちがう”んだけれども、変えられないんだ、と思い、改めて男女差を第一次成長期における性教育によって突きつけられて、やっぱり”ちがう”んだ、無理なんだという現実を突きつけられたと。早々に心が折れてしまう経験を10歳くらいの時に、そこに先生からの仕打ちが加わって...というのは、なかなかメンタルがやられる経験でしたね…。
 トイレや着替えについての苦労は、特に身体の性と心の性に違和を覚えていらっしゃる当事者の方は日常的に悩んでいらっしゃるところだと思うのですが、学校生活も含めて、毎日必ずする行為なので大変な思いをされたのかなと思います。
 ちなみに小学校の頃はテストの点がよかったと仰っていましたが、中・高もよかったのですか?
【さくら】
 よかったですね。自慢になっちゃいますけど(笑)
【げんのすけ】
 自慢してください(笑)
【さくら】
 中・高の頃は「いい子」でいないといけないという意識が強くて、高校三年間で評定平均で5.0、中高一貫6年間で皆勤、はた目からしたらいい生徒、でも自分からしたら、そういう風にしていれば責められないじゃないですか。
【げんのすけ】
 いい子ですもんね。
【さくら】
 そういう風にして自分を守っていたところがありますね。
【げんのすけ】
 僕は本当に学校という場に縁がなさすぎてわからないのですが、評定平均5.0というのは、何段階のことですか?
【さくら】
 5(段階)です。
【げんのすけ】
 え?満点ですか?
【さくら】
 はい。
【げんのすけ】
 満点で、しかも6年間一日も休まずに?遅刻も?
【さくら】
 遅刻も早退も…
【げんのすけ】
 え?すごいですね!?
 めちゃくちゃ優秀ですね。優秀という言葉で片づけてよいのかわかりませんが…
 でも、小学校のころはいろいろ言われていたので、勉強ができていても自己肯定感は低かったと思うのですが、中・高の頃は明らかに成績もいいので、周りの友だちからは「おお、お前すっげぇ頭いいな」と言われて、「ああ、よかった、自分は勉強ができるんだ」とはならなかったのですか?
【さくら】
 こうしておけば、変な扱いを受けずに済むんやという発想になってましたね。
【げんのすけ】
 ということは、あまりにも小さいときに受けた影響が強すぎて、ご自身の中でも悪く残ったまま中学校・高校と成長してしまったがゆえに、本来であれば褒められるようなことでさえ、真逆の発想になってしまうんですね。
【さくら】
 そうですね。
【げんのすけ】
 身体の性別と心の性別の違い、単語で言うと最近みなさん耳にすることも多いかと思いますが、トランスジェンダーと言われている、性別違和を感じていらっしゃる方が学校に男女差があるがゆえに行きにくくなって、不登校になる子もすごく多いと思います。でもさくら先生は全く逆で、ご自身を守るために毎日学校に行かれていたと。
【さくら】
 そうですね。
【げんのすけ】
 ただ、高校とかになると、それだけ点数が良かったら進路とかも大学院のカミングアウトの話ではないですが、ものすごく頭のいい大学に進学された、ということですか?
【さくら】
 世間一般的にはそう言われているかもしれませんね。
【げんのすけ】
 教員免許の取得のための勉強をされているという話が先ほどありましたが、それとは別に高校から一回目に行かれた大学は、どういう理由で選ばれて、何の勉強をされていたんですか?
【さくら】
 理由は特に前向きなものはなくて、高校3年生でセンター試験(当時)が終わったときに、当時私が片思いをしていた人が「○○大学○○学部行くんやって」という噂が流れてきて、じゃあ私もそこ行こうと思ってついて行っただけですね。
 大学なんて、どこ行ったって結局私は夜の仕事しかないんでしょ、とずっと諦めていたし、でも行かなあかんのかなと思って行っただけで…
【げんのすけ】
 はたから聞いていると、片思いの人が行こうとしている人と一緒に大学に行きたいから、勉強頑張る、とピュアな話だと思って聞いていたのですが、それで(有名大学に)行けちゃうんですもんね?
【さくら】
 行けちゃいましたね(笑)


さて!さくら先生とのウェビナー《前編》いかがでしたでしょうか?
片思いの彼を追って通い始めた大学生活。
その後さくら先生の恋はどうなったのか?”先生”と接する側から、自ら”先生”になるまでの更なる道のりに何があったのか?

気になる続きは《後編》で!またお会いいたしましょう^^

《後編》では、アンケートでいただいたご質問の回答も掲載しますので、お楽しみに☆


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