『第3回 彫刻専攻 関楓矢』 【 ◎彫刻の魅力と彫刻観 】
小前 「第3回目は 藝大の彫刻科専攻で、僕の大切な友人の関楓矢(せきふうや)くんにインタビューをしていこうと思います。 今、ふうやくんは芸大の彫刻科3年生で、つい最近も個展をされてて、今回インタビューをさせてもらえないですか?って聞いたところ快く引き受けてくれました。 色々聞けていけたらなと思ってます。 よろしくお願いします!」
小前 「最初はまず、芸大の彫刻を目指したきっかけのところなんだけど、色々ジャンルがあるやん。 例えば絵を描いたり、デザインしたりみたいなところで、なんで彫刻、立体的なものを作ろうと思ったのかとか、 教えていただけたらなと思います。」
関 「うん。 藝大の彫刻を目指したきっかけは美術系の高校に通ってて、そこで彫刻をやり始めたんですけど、なんかね立体彫刻って、目の前に作った作品が存在するじゃないですか。 要は、なんだろうな、絵画とか写真とかって、画面の中の空間を作っていくような感じ。」
関 「それに対して彫刻は、自分の妄想と共存できるような感じが、すごく俺は良くて、彫刻やり出したんだ。 そのまま大学でもやりたいなって思ったタイミングで、芸大で学ぶことで、自分の中の 彫刻観みたいなものが、より強く名文化できるような気がして。」
関 「歴史と伝統が豊富だから、ここで彫刻を学ぶことで、1個、 自分が今後、創作活動をする上での軸を据えれるんじゃないかなと思った。」
小前 「今、お話聞いてて気になったのは2つあって、 1つは、最初に絵とか写真は、四角の中に別の世界というか、空間を作るみたいなのに対して、彫刻は、現実世界に、自分の妄想というか、思い描いたものを出してくれるみたいな、そこがちょっと、 面白いなと感じたのと、彫刻感っていうそのフレーズに引っかかって、なんかそこら辺も聞いてみたいなって思った。」
関「絵画とか、写真とか、俺、結構好きなのよ。 見るのも好きなんだけど、なんか、立体物とか、いい彫刻を見た時とかに感じる、実際に出会ってしまったような感じっていうか。 お前、そこにいたのか。 みたいな。」
小前「それは面白いな。 出会ってしまう感覚、めっちゃいいな。」
関 「みたいな。 出会ってしまう感覚。」
関 「どういう感じかな。 写真とか絵画とかだと、その一瞬を切り取る側面もあると思う。 その中で、長い時間性を見せるとか、色々あると思うんだけど。 どっちかというと、俺の中では、窓の中を見るような感じなのよ。窓からの眺め。 キャンバスの中の、窓から見てる眺めを見て、こっちが寄ってくみたいなイメージ。 だけど、立体は、絵画的な魅力とはまた違って、本当にもう共存できるような魅力があるなと思って。」
小前 「なるほどね、面白いな。 あ、あともう一個、彫刻感っていうそのフレーズ。 それはどういうこと?。」
関 「彫刻観かな。 彫刻観の観は、もう本当に観賞の観みたいな感じ。 観点の観みたいな感じかな。 なんか今後、自分が彫刻家として、創作活動を続けていく中で、当然、技術的な文脈であったりとか知識ってところをやっぱり踏んでいって、そこを理解していくと思う。 その上で、今の自分がやりたいことは、なんなのか。 自分が生まれる以前の、 歴史の中のどの流れに自分が存在するのかみたいなっていうところかな。 で、そういうのを踏まえて、自分がやりたいことは、どこに存在しているのか、自分がやりたいことは何なのか、ということ。 あとは、単純に、どういう作品が好きとか。どういう手法が好きとか。 好みかな、向いてるかなっていうところを含めた、自分の中の、なんだろ判断基準っていうところかな。」
小前 「そういうことか、ありがとう! なんか出会ってしまったその感動みたいな。 すごい、いいこと言うなって思って聞いてました。」
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【 ◎素材について 】
小前 「あと、例えばどういうものを扱って作品を作るみたいなところで、割と、焼いて作ってたりするのかなっていう印象やねんけど、こねて焼いて、みたいな。 俺どういう技法で作ってんのか知らないけど、なんかその素材に対する扱いみたいなところで、自分が選んでる素材とかの、選んでるポイントとかが、もしあるのであれば、教えてもらえたら、なんかいいなと思って。」
関 「手法は今、多くやってるのがセラミックのもの。 焼いて、そこに釉薬を調整したら、ガラス質になるようなものを、手法を取ってる。 それを選んだ理由としては、元々は木彫に理由があるんだよね。」
小前 「確かに木彫もしてるよね。」
関 「うん、木彫をね、高校時代からずっとやってたんだよ。 で、大学でもやってるんだけど、なんだろうな、少しやってて制限があるっていうか木彫だと。 元々さ、木彫って大きな木を買って、それを製材していって、中にどんどん掘り込んでくるような感じかな。 だから要はさ、最初にこういう量がどーんってあって、この中にもう形が存在しているみたいな感じなのよ。」
小前 「あ、イメージがあるんだね。」
関 「そう。ただそれをやってると、木の元々のスケールとかに、なんか負けちゃう瞬間もあって、木ってさ、当然木彫ができるサイズ感の木になるってなったら、それこそ数年単位じゃできないわけ。 もっと長い年月かけて大きくなった木を、俺らは削って掘ってっていうのをやってるんだよね。」
関 「なんか木に負けちゃった感じ。この木には勝てないな、みたいな。 自然の力に負けるような瞬間もあるから、そこに対して別の方法でアプローチできないかなっていうところで、粘土を最近は、選んだって感じ。」
小前 「なるほどね。」
関 「粘土だと、最初の量が自分で設定できるわけよ。 自由につけていけるし、より直感的に形が残るんだよね。 だからそういう意味で、ある種なんだろうな、木彫をやる前の自分に戻るための、リハビリみたいな感じでやり出したんだよね。 で、今の目標は、セラミックと木彫の中間地点を見つけること。 手法的にっていうところもあるのかもしれないけど、概念的にっていう部分もある。 考え方として結構元々あったものだから。」
小前 「サイズを自由に付け足したり外したりできるみたいなのと、決められたスケール観の中で動かないといけないみたいなの。 なんていうの、そこの違いを今はより自由に動かしていってるみたいな感じは、割と確かに概念というか、素材もそうなんだけど、考えの先にあるのかな。 みたいなのは思った。 聞いてて。」
関 「そういうところだね。 本当にそう。 要は、決められた中から作るのが木材とか、石彫ね。 カービング。 削っていくことで、マイナスの仕事。で、それに対して、粘土とか可塑性があるもので、プラスの作業で作っていくものをモデリングって言うんだけど。 モデルリングみたいな。」
小前 「なんかさ素材で言うとさ、それでいうと1番どれが扱いが難しくて、逆により自由度が高いのはなんなのか。 みたいなのとか教えてほしい。 石がやっぱりむずい?」
関 「人によるっていうのが正直なとなんだけど、本当に一般的なところで、 ”ザ・平均的” なことを考えると、例えば、全く同じ猫を作るってなったら、形が出来上がるまで、速度で比べると、早いのは粘土。 粘土で作るのが1番早い。 で、2番目が木かな、木材。 3番目が石材、石っていう順番になると思う。 もう”ザ・平均” みたいなことをやったらそうなると思う。 ただ、結構、得意不得意が出るから、向いてる向いてないがある。」
関 「俺の場合は木彫が1番あってはいるんだよ。 速さ、難易度的にも木彫が1番。 自分に合ってるって感じ。」
関 「石は、合ってなかった。石彫は違ったんだよね。 なんかね、素材として距離感が自分とあって。」
小前 「それ面白いね。」
関 「なんだろうね。 なんか冷たい印象を受けたんだよね。人間的な感覚で多分捉えてたと思うんだけど。 俺がなんかさ、粘土とか、木材と向き合ってると、なんかだんだん、だんだんその作品が出来上がる過程において、出来上がる前と後だと、その素材とも仲良くなってるような感じがするの。」
小前 「へー、うんうん。」
関「自分の体で作っていて、どんどん距離感が近づいていくような気がする。 石の場合は、それがもう、全くと言っていいほどなくて。 でも逆に石をやったことで、それ以外の、自分との親和性に気づいたっていうか、やっぱあれは特別な感情だったんだって。 木材とか、粘土とかをやってる時の感覚って、自分にとっては特別なものだったんだなって分かった。ていう感じかな。」
小前「素晴らしいですね。 めちゃいいやん。 そうかそうか、いいね、 面白いね。 なんか、相対化されることによって特別さがわかるみたいな。 いや、いい話を聞いたわ。」
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【 ◎個展について 】
小前 「最近さ、さんさき坂カフェだけでやってた個展に僕も行かせてもらいましたけど、あれについてちょっと、次は聞いていきたくて。 例えば、それこそ木彫の作品があり、セラミックの作品があり、結構可愛いサイズ感がこう、ポンポンポンと心地よく並んでて。 展示空間としてもバランスが良くて、整ってて見やすいなって思って。 それぞれの作品もそれでいて見えるみたいな。 すごい俺はいいなと思ったんですけど、なんか展示をするにあたって、考えたこととかあれば、言える範囲でいいから、ちょっと共有してもらえたら 嬉しいな。」
関 「さっきヒカリくんが言ってたように、セラミックと木彫を一緒に展示したところについては、素材の選択の自分の中の系譜を1個詰め込みたくて。 木彫をやってく中で感じたこと。 それがそのまんま、前回の個展のテーマにはなってはいる。 要は木彫やってて、その木彫で俺は、 刺繍、東洋の刺繍とかを立体に起こすっていうのを…」
小前 「あ、ね、やってるね、確かに確かに」
関 「そう。 で、刺繍っていうものを、人間が合わせ持つ動物性みたいなところのメタファーとして使ってて。 それをやっていく中で、どんどん刺繍が自分の中に入っていった。単純にその刺繍を掘り出してるんじゃなくて要は刺繍ってさ、人間のためにある種利己的に動物を利用しているっていうか、装飾的にね、利用している部分ではあって、それをまとってるわけじゃないですか。」
小前 「そうね、確かに。確かに、」
関 「いろんなカバンとかでね。それを立体に起こすっていうところで。 それは刺繍を起こしたのか、それとも根本的に、そのまとってた人間を起こしたのか。」
小前 「面白いね。確かに、」
関 「そこの主題が出てきて、元は刺繍を取っていたんだけど、それが関わってくるみたいなところを、テーマとして扱ってもいいんじゃないかなっていうところで。 作っていったのが、色んなセラミックの作品って感じなのかな。」
関 「流れが一応あって。 刺繍のところから、だんだん繋がってきてセラミック。 分けたポイントとしては、木彫で作ってるものは刺繍だったり、あとはモチーフがちゃんと存在してるもの。 それに対して、少し人の内側に寄ってきたものについては、セラミックを当てたって感じかな。」
小前 「そうよね。 なんかちょっとこう、精霊じゃないけど、もうちょっと抽象的な形を出してた印象かな。 セラミックは。」
小前 「なんか短い言葉で、端的にコンセプト文のステートメントみたいものを貼ってたのもあれもなんか、すごいいいなあって思って。」
関「あれは要はなんて言うんだろう。 さっき言ったその流れ。 人間に刺繍っていうものを彫刻として扱う時に、より人間寄りに持ってきた段階で、感じたことを書いてあった。」
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小前 「なんかそしたら、 俺さ、1個めっちゃ個人的に気になったことがあるんやけど。 台座の色がさ黄色でさ、そこもしっかり塗られてたやん。 でも、割と彫刻の展示とか、いわゆるオーソドックスなのは、白い台座の上に乗ってるやん。 台座の色にまでこだわってやったのは、自分の中でそこも含めるみたいなのがあったりしたのかな?」
関 「あそこはね、なんだろう作品のところで。 台座は結構、俺、考えるんだけど。 まあよくあるオーソドックスな白台座っていうのはあんまり使いたくなくて。 それが、白台座として、意味があって置いてるんだったら当然いいと思うんだけど。 そうじゃない場合。 今回の場合はそうじゃない場合に該当すると思うんだよね。 あそこだと、あそこの空間に白台座があると。 かなり違和感に繋がると思う。」
小前 「うんうん。うんうん。 なるほどね。」
関「台座をあれにしたのは、刺繍ってものを、人間の中に持っていって、その人間の、”じゃあ根本的な部分はどこなんだろう”っていうところを考察したような作品なんだけど。 端的に言うと、人間の本来あるべきものっていうのは、人間が社会的に学んだ部分じゃなくて、要は、言葉とか、行動規範とか、倫理感とか、そういう部分を除外した時に、それに対して、核の部分。 動物としての人の核の部分が、元来人間のあるべき姿で、それを知覚すると、それ以外の部分、例えば周囲の大気であったり自然であったり、宇宙であったりっていうところも、そう変わらない。 1個の大きな目で見れば同じってところで。 元々人間だった彼らの、セラミックの動物っぽい可愛い首像を、星に返すみたいなイメージで作った。」
小前 「あ! 理解理解。」
関 「写真とかで撮ると、台座の水平面が大体みんなの目線ぐらいってところで水平に見えたんだけど。 色面とかのおかげで。 ちょっと星っぽく見えるみたいな、っていう感じ。」
小前 「なるほどね、確かに場所に対してそこに合うものとかを考えるのと、自分のその作品のことを考えて、その台座をチョイスしたみたいなのとか、すごいわかるし、それこそ木彫で作ってた作品も、カフェの中の元々あった物を使って、それが台座に変わってるみたいなので、おおっって感じやった。 その場所のことから考えるのがやっぱすごいいいなって思った。彫刻家っぽいのかなとか。」
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【 ◎コレクティブについて 】
小前「最後に、最近コレクティブ、なんかチーム組んだよね。 あれについて聞きたい。」
関 「あれはね、それこそセラミックの作品を、早稲田で焼いてるんだけど。そこで出会った2人と、3人組の陶芸のコレクティブなんだよね。 で、それぞれが結構違う属性を持ってて、三者三様。 俺が 元々彫刻を学んでて、素材として、セラミック(陶器)を使い出したところ。 で、もう1人が、トイズファクトリーっていう事務所があんだけど。 そこからデビューしてる子で。 音楽のバンドの子でさ、R&Bとかブラックミュージックにジャンルとして属してる子。 もう1人は早稲田でもう毎日陶芸をやってるような子。」
小前 「早稲田には陶芸のコースがあるの?」
関 「陶芸部がある結構歴史が長い。 本当に長い。 70年ぐらいあるんで、すごい伝統の的なんよ。 ここを出て作家さんになった人とかめっちゃいるの。 陶芸の雑誌とかあるんで、要は美術手帳みたいな感じでね。 ここに出てくるような作家さんページめくってくと、これもここの卒業生だよみたいなのがばーって出てくるの。 いい意味でイカれてるような感じ。 早稲田に行って陶芸やろうって言って、そのまま作家になっちゃおうって子がたまにいるんで、それでコレクティブのメンバーの、陶芸やってるやつっていうのがそんな感じ。」
小前 「その、バンドやってる子も、陶芸やるの。」
関 「やるやる。 そう、なんか、元々陶芸やってたみたいな。」
小前 「陶芸とバンド、なんかすごいな。 陶芸とエレクトリックな楽器のコンビネーション。」
関 「そうそう。 で、その三者三様の属性を持ってて。 それを、ちゃんと陶芸の文脈っていうか、そこを踏まえた上で、より超、超陶芸を目指すみたいな。」
小前 「いや、いいねえ。 いいですね。 有難うございます。 あ、なんていう名前でした、あのチームは。」
関 「あれは『 一礫舎 ICHIREKISHA 』です。」
小前 「いいねえカッコイイ…!」
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小前 「オッケーオッケー。 そしたら、本当にもう最後に、コレクティブのことでもいいし、自分個人のことでもいいし、なんでも。 長期的なことは、結構先のことはわからないかもしれないけど、とりあえずこういうことをやってみたいとか、あったりしますでしょうか。」
関 「今のところか。 なんか、やりたいことが一個どんとあって。めっちゃバカみたいなあれなんだけど。 後期ね、大学で作る作品のことね。 もう普通に木彫やります。 戻ります。 今回公表で。セラミックのものを初めて出したのよ。 で、出して、感触はあまりよくなかったっていうね。」
小前 「あ、そうなんや、、」
関 「うん。 なんだろう。 なんかね付け足したくなっちゃうんだよねセラミックだと。単純に、俺の技量とか作品の魅力的な部分もそうなんだけど、 そこに対して、足したくなっちゃって、どんどん、どんどん。で、足してって要素が飽和して、よくわかんないものを作ってしまったんですよ。なんだろうな。 素材的なことを言うと、セラミックっていうよりかはミクストで作ったような作品をもって出したんだけど。 よくわからなさが勝ってしまって。」
小前 「なるほどね。」
関 「じゃ、そのよくわからなさっていうのを。 よくわかってる木彫でもう1回作ろうっていう魂胆ですね。」
小前 「なんか、なんて言うのかな。 自由に動ける分、色々やれることが多くてやりすぎてしまうからまた一旦戻って、制限のある中で勝負してみよう。 みたいなニュアンスでいいのかな?」
関 「そうそうそうそう、そういうこと。 ありがとう。」
小前 「いやいや。 ありがとうございました。 そうね。 なんか全然、話したいことがあったらまだ全然聞く。 でも、とりあえず俺が聞いてみたいことはこんな感じかな。」
関 「後期木彫、頑張るよっていう目標の先には卒業制作がある。 それで、さっき言った、木彫とセラミックの中間地点、それはモデリングとカービングの中間地点で、そこをどんと打ち出して行こうかなっていうような、感じですね。」
小前 「なるほどね。 いや、めっちゃいいと思います。 すごく面白かったし。 うん。 有難うございました!」
(文 小前光)