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映画記録「法廷遊戯」

最近「贖罪の奏鳴曲 / 中山七里」や「元彼の遺言状 / 新川帆立」などリーガルものの小説をよく読んでいました。リーガルものの映画が観たくて「法廷遊戯」を観ることにしました。

セイギ(永瀬廉)が通うロースクールでは"無辜ゲーム"と呼ばれる模擬裁判が流行していた。裁判官役は、学生ながら司法試験を既に突破しているカオル(北村匠海)だった。
卒業後、弁護士として働くセイギへ、カオルから"無辜ゲーム"の呼び出しがかかる。ゲームの会場には、カオルの死体と幼馴染のミレイ(杉咲花)がいた。ミレイの弁護をすることになったセイギは、ミレイの黙秘に翻弄されながら、過去の事件、自分たちの罪に向き合っていく――

「法廷遊戯」の原作は第62回メフィスト賞を受賞した同名小説。
メフィスト賞だいすき! 今までの受賞作はどれもクセのあるエンタメ小説が並んでいて、何か刺激的な新しいものを読みたいときは、メフィスト賞から選ぶことが多いです。

空気感に引き込まれる映画だった。

最初は謎だらけで置いてけぼり。でも、徐々に事件の概要がつかめるようになると、苦しくなってくるし、主人公たちの見え方が変わる。なぜ"無辜ゲーム"なんて模擬裁判を学生でやるのか、次第に分かってくる。

4つの事件を97分に収めているので、かなり駆け足。現在と過去を行き来する。謎解きが主となるミステリではなく、雰囲気に呑まれて3人の物語が進んでいった。
ロースクールでの"無辜ゲーム"の会場は、学校内にある洞窟。……洞窟!?
洞窟の非現実感。この時代に、明かりはロウソクです。

忘れられないのが"ドンドンチャッ……"のリズム。2回ほど、主人公の周りの学生がリズムを刻むシーンがある。
We will, we will rock you … が始まるかと。このシーンはどんな意図があるのか掴めなかったけれど、わけが分からなくて忘れられないシーン。

「法廷遊戯」というタイトルは、学生時代は無辜ゲームによる"法廷ごっこ"。大人になってからは法廷"で"ごっこ。彼らは法で遊んでる。

また、セリフが魅力的だった。
授業を受けているカオルの言葉。

有罪か無罪かは裁判官が決めますが、冤罪かどうかは神様しか知りません。

また脇役もクセありで魅力的。これは教授(柄本明)が"無辜ゲーム"を見にきたときの感想。登場シーンは多くないけれど、印象的な人物でした。

倫理とか道徳とか、そういう曖昧なものは信用していなくてね。

そしてセイギを立ち直らせた弁護士(生瀬勝久)の言葉。

君を助けるのは、暴力ではなく知識だ。

また、盗聴犯(大森南朋)の狂気さ。フッと物語の空気を変える。悪いやつとして肝の座っている感じが怖い。
そしてセイギが暮らすアパートの大家さん(倉野章子)が登場すると安心する。おせんべいを食べながら、出かけるセイギの寝癖を直してくれるカワイイ大家さん。

脇役は表情豊かな人が多いけれど、主人公3人はほとんど表情がない。
ミレイは、面会室で感情が爆発するシーンがある。胸が苦しくなるシーンだった。画面が固定されているのに、手ぶれのように揺れていて、より心が詰まる。

明るい色はほとんど出てこない。画面はずっと薄暗い。暗い過去の象徴でしょうか。"無辜ゲーム"で使用するロウソクをふっと吹きかけて消す画面も、未来も希望もない寂しさを漂わせていた。
ミレイが"無辜ゲーム"に呼び出された日は白のワンピースを着ていた。鮮血の赤が目立つ服。
セイギの住むアパートの大家さんが作ってくれたおにぎりだけが、カラフルだった。

【法廷遊戯】
監 督:深川栄洋
出演者:永瀬廉、杉咲花、北村匠海
原 作:小説(五十嵐律人)
公開年:2023


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