映画記録「スオミの話をしよう」
ドラマ「コンフィデンスマンJP」でもたくさんの役を演じていた長澤まさみさん。舞台「正三角関係」では一人二役を演じていました。
そして、映画「スオミの話をしよう」では、５人……いやそれ以上の役を演じていました。コロッと切り替わる魅力が味わえる映画でした。
行方不明になっていた詩人の妻・スオミ（長澤まさみ）。おおごとにはしたくない、と詩人・寒川は捜査を拒否するが、スオミが誘拐されたと聞きつけて過去の夫たちが集まってくる。夫たちは、誰がいちばんスオミに愛されたのか語り合うが、それぞれが語るスオミは性格も見た目もバラバラだった。
あらすじだけ見るとミステリ色が強いですが、コメディ映画。シチュエーション、セリフ、表情、いろんなところに笑いが潜んでいました。
不意打ちで笑わせにくるので、吹き出しそうで危なかった……
５人の夫に見せるスオミの性格・見た目はバラバラだけれど、５人の夫も性格・見た目がバラバラ。映画はあっという間に終わってしまった。
予告編で既に伏線を公開していたところがすごい。例えば「偶数の夫は若くてイケメン」とか。この偶数の夫たちが番宣に登場していた印象です。
１人目は魚山（遠藤憲一）。詩人宅の庭師。血の気が多いけれど、いちばんおもしろい人……。この人にいちばん笑ってしまった。
２人目は十勝（松坂桃李）。事業家なYouTuber。怪しげな雰囲気溢れる。けれど、オジサンたちだけでは話が進まないときのまとめ役。マルチではなくマルチ"まがい"なお仕事もしていた。
３人目は宇賀神（小林隆）。警察官であり、４人目の夫の上司でもある。魚山も心配な夫だけれど、圧倒的に心配な夫１位だと思う。スオミが誘拐された、と話していた時のメッセージが気になる。どんなメッセージがきたんだろう。公式HPの表情が役にとても合っていてステキ。
４人目が草野（西島秀俊）。神経質な警察官・草野がメインとなって物語が進んでいきます。優秀な部下の小磯（瀬戸康史）と詩人宅へ訪れ、スオミの行方を追う。スオミに自分だけ呼ばれたときのニンマリフェイスが印象的でした。
５人目が寒川（坂東彌十郎）。豪邸に住む詩人。金に執着していて電磁波アレルギーだけど、憎みきれないお茶目さん。世話係として乙骨（戸塚純貴）がいます。坂東彌十郎さんは悪役やボス役のイメージだったけれど、お茶目な演技が楽しかった。
登場人物の共通点は苗字が地名なこと、でしょうか。１人目の夫・魚山が漢字を説明していたので、重要なのかと調べたら中国の地名らしい。
映画の用語に詳しくないけれど、長回し？ ロングカット？ で効果的に演出されていました。
ロングカットでスオミがコロコロと変わる姿には翻弄された。
詩人宅が豪邸で、とにかく広い。部屋数多い。部屋をくるくる移動して、会話が進む。豪邸って椅子の数がすごい。おおごとにしたくない寒川が、スイカを食べながらあちこち周り、それを追う草野や小磯。ちょっと座って別の部屋へ行った、と思ったら出てきて、別の椅子に座る。会話劇も面白いのに、部屋のこだわりや、行動まで、画面いっぱいに面白い。
登場人物が多いので、物語を進める主要人物たちの背景となっている人物の動きが楽しい。
印象的だったのは、乙骨と小磯。
背景なのでボヤけているんだけど、２人で並んでコップを持っているシーンがかわいい。
他には、ずっとナッツの器を抱えている小磯とか。
画面いっぱいにわくわくして、ずっと楽しい映画だった。
ミュージカルシーン。
予告編にも登場していたところ。
シュールすぎて、最高だった。やりたいことをやり切っている感じ。突然のミュージカルに翻弄されつつ、すっきりとしめてもらった。
スオミがどの夫をいちばん愛していたか、常に話し合っている夫たち。ラスト、スオミに直接「誰をいちばん愛していた？」と聞くシーンがある。
そのスオミの返答がかっこよくて、スッキリした。
【スオミの話をしよう】
監 督：三谷幸喜
出演者：長澤まさみ、西島秀俊
脚 本：三谷幸喜
公開年：2024
ここから、ネタバレ含んだ考察です。鑑賞予定の方は自衛をお願いします。
なぜ、スオミは虚言誘拐を目論んだのか。
スオミ自身は6人目の夫が本命だったのでは、と思いました。
そのため、離婚後も繋がりのあった元夫たちと現夫を断ち切るために虚言誘拐という手段を取ったのではないでしょうか。
偶数の夫は若くてイケメンであること。
また、小磯はスオミと会わせてもらえずに帰宅していました。
そしてマッチングアプリ。マッチングアプリ開発は十勝であり、それを小磯に薦めたのは乙骨。セスナでの会話から、会うところまで話が進んでいる異性がいる、と推測しました。
４人目の夫は警察官。３人目・宇賀神との関係があるなかで、４人目・草野と出会っていることから、今回もスオミは小磯を知る機会があったのでは。
小磯は突然でもセスナを運転できるガッツがあり、死なない強運を持っている。また、逆探知の機械を操作するなど、優秀さが伺える。そして若くてイケメン。
ミュージカルシーンから６人目がいることは示唆されています。
また、乙骨の退場シーンから、スオミの夫は誰でもいいわけではない。乙骨の退場シーン、かわいそ好きすぎる。
６人目の本命が現れたから、今までの夫との関係を切りたかった。今までの上書き保存していた人たちを、削除してまっさらな状態にしたい。
「ひとりで前を向いて生きたいから」と好きな人に言われたら、応援するしかないし……と思いました。
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