読書記録「さよならドビュッシー前奏曲 / 中山七里」
「さよならドビュッシー」の前日譚となる「さよならドビュッシー前奏曲」を読みました。
副題が「要介護探偵の事件簿」です。
本作は「さよならドビュッシー」にて、早々に退場してしまうがインパクト強めなおじいちゃん・香月玄太郎が主人公。
気性が荒く人への罵倒も多いので、読んでいて、おいおい…と思うシーンも1回や2回じゃない。でも、嫌いになれない。誠意ある者にはものすごく誠意を持っているところが好感なのです。
玄太郎は脳梗塞を患って、車椅子で生活している。
このおじいちゃんがタイトルの「要介護探偵」こと探偵役である。
玄太郎の介護士が、探偵の助手係。
短編ミステリ集。
玄太郎が脳梗塞で倒れ、失語症からの復活の物語も含まれている。
密室殺人や銀行強盗、通り魔などなど、どれも種類が違う5編のミステリーでありながら、癖のある玄太郎の個性が衝突していないことがすごい。
濃厚に楽しめるので、このあと他の短編ミステリ集を読むと、
あっさりしたものに感じてしまうほど。
そして最後の章は、玄太郎の目線で物語が進む。
岬洋介がどのような人物か。
読み終えて、ここから「さよならドビュッシー」に繋がるんだよなあ…と考えて、悲しい未来が決定していることに気付く。
他で味わいにくい読後感に包まれた。
シリーズもので同じ温度を保つのではなく、
他の角度から果敢に攻め入る感じが飽きさせず、もっと欲しくなる。
前作が最高だったから今作はそんなに期待しない方がいいだろう、とついハードルを下げちゃうんだけど……読み進めると、油断していた別の方向より迎撃される。
「御子柴シリーズ」ではリーガルかつシニカルな感じだったけど
「岬洋介シリーズ」は青春×音楽の組み合わせ。
次の『岬洋介シリーズ』は「どこかでベートーヴェン」だけど、過剰摂取になりそうなので、積読している他の小説で呼吸を整えることにします。
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