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【美術ブックリスト】『超絶技巧の西洋美術史』池上英洋、青野尚子
ルネサンスから近代までの西洋絵画の中から、細密描写、だまし絵、遠近法などの特殊技法など、さまざまな方法で描かれた眼を見張る超絶技巧の作品を集める。ヤン・ファン・エイク、ハンス・ホルバイン、ベッリーニ、アングルといった巨匠の作品が巻頭を飾り、カラヴァッジオの静物、ブグローの人体表現など、著名作品を次々と挙げてそのリアルな描写に言及していく。
ひとつの作品を部分拡大図を駆使して詳しい解説を重ねる。50あまりの作品を収録している。
ここまでが概要。
ここからが感想。
まず印刷が綺麗。図版が鮮明で色合いもバランスがとれている。またレオナルド、ラファエロ、フェルメールといったビッグネームに作品がかたよっておらず、「超絶技巧」というワンテーマで各時代から名作を集めているところもわかりやすい。美術史の本というと、ルネサンス、バロック、ロココ、古典派、ロマン派など様式史の変遷をベースにしがちだが、そうした時代区分は同じ著者の別本(『いちばん親切な西洋美術史』など)に譲り、ここではそれを度外視した点も画期的だと思う。
画家で漫画家のヤマザキマリが敬愛するメッシーナの《書斎の聖ヒエロニムス》や、崇高な自然を描いたフリードリヒの《氷の海》など地味ながら素晴らしい技巧で描かれた作品も網羅。個人的にはイギリスの画家・ウォーターハウスの《ヒュラスとニンフたち》にページが割かれていたのが嬉しかった。
解説文は短めで、その分、図版が多用されている。
本物を見に行くたくなる、そんな一冊。
新星出版社 A5変型判 224ページ 2090円