【詩】春より後の、夏より先に
真昼の暑さとは打って変わって
早まった薄着が肌寒い
夏にしんと鼻腔をくすぐる
草木の香りを
一瞬間だけ嗅ぎ分けた
雨の降る季節が近いことを思う
新緑の葉をしずしず染める
その雨粒の清らかさ
濃緑の季節に向けた準備と言うなら
私も粛々と傘を差そう
雨の降る季節が近いことを思う
雨の降る季節に出会う人があるなら
それは素敵だなと思う
天気のぐずつく日々の中の
晴れの日には夏の気配
夜には薄く雲が張り
心細くも煌々と
茂り始めた歩道を照らす街灯
真昼の暑さはもう夏で
日付の変わろうとする遊歩道
早まった薄着が肌寒い
まだ春は残っていたんだと、
それでも蛙は鳴き始めたなと、
雨の降る季節が近いことを思う
雨の降る季節に出会う人があるなら
それは素敵だなと思う
髪色は蒸気に滲み
その色濃さが景色に際立つ
そんな出会いがありはしないかと
私は呆けながら
傘を差すのだろう