【詩】ビーチコーミング
雨降りの休日に
ベランダに腰かけて
蚊取り線香を焚きながら
海辺で拾った貝殻を削る
そういうので良くないかな
そんなものを拾ってどうするの?
ドライブの途中で立ち寄った
海辺で拾った貝殻に
何の意味があるかなんて
僕にも全くわからないよ
降ったり止んだりの午後3時
何をしたらいいかわからないけど
拾った貝殻をどうしようと思ったから
艶が出るまで削ろうと思うよ
そういう時間が良いんじゃないかな
そんなことをしてどうするの?
何の意味があるかなんて
僕にも全くわからないよ
きっと上手く削れたら
シェルフレークにでもなるんじゃないかな
何かをしなければならない
休むための日のはずなのに
時間に余裕があるからって
それを意味のあるものにしようとする
無意味でも、無駄ではないと思うんだよ
シェルフレークになって、それがなんなの?
それが何なのかって
そんなの僕にもわからないよ
シェルフレークになったって
それ自体には、きっと意味はないんだよ
雨降りの休日に
ベランダに腰掛けて
蚊取り線香を焚きながら
海辺で拾った貝殻を削るだけだよ
そういうので良くないかな
削っているとき
上手く削れたらいいなと思うんだ
この貝殻を拾ったあの日の海辺は
とても晴れていて暑かったよなと思うんだ
色んなものが流れついていた中から
この貝殻を選んだんだよなと思うんだ
ビーチコーミングに夢中で
足元まで来ていた波に驚いたよなと
どうでもいいことを思うんだ
何の意味もなかったはずの
その日のことを思いながら削るんだ
雨音に耳を貸しながら
貝殻を削って
特筆すべきことのなかった
あの日のことを思うんだ
僕が妹と夢中になって
貝殻を拾っていたあの日に
あなたが遠くから
僕ら二人を眺めていたことを
振り返りながら削るんだ
何の意味があるかなんて
意味があるとかないとか
そんなのどうでもいいことだって
それだけは僕はわかっているんだよ
貝殻を削る作業は疲れたから
今日はもう終わりにするけど
シェルフレークができたなら
何かしようかと思える休日に
またどうしようと考えるから
そしたらまたあの日のことを振り返って
それがより大切な思い出になるだろうから
あの日拾った貝殻に
意味を見出そうと
思わなくてもいいんじゃないかな
そんなの僕もわからないから
特筆すべきことのなかった
あの日のことが
僕の中では
削った分だけ
意味を持つから
無駄と思えた
無意味なあの日が
素敵なものになるように
僕は貝殻を削って
あの日のことを
また思うんだ
何をしたか
他の人にはわからなくても
僕には大切な休息だったと
僕は思うんだけどな
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僕には、特筆すべき趣味はありません。
でも海に行くと、必ずと言っていいほどに、ビーチコーミングをしています。
ビーチコーミングは海辺に流れ着いたものを拾うことです。
この貝殻、削ればいいものになるんじゃないかな。
削ったところで僕にアイデアがあるわけじゃないけど。
削っていると、その日のことを思い出します。
なるほど。あの日のことを思い出すために、僕はこの貝殻を拾ったのかもしれない。
それに付随する記憶が、僕の中に流れます。
それを思い返すこの時間こそが、今日とあの日に意味を持たせます。
シェルフレークができたらいいな。
あの日の貝殻が、こんなに綺麗な形になったよ。
そう伝えられたら、きっとあの日にも、今日の自堕落な一日にも、僕の中だけでなく、あの人にも、きっと意味があったのだと思える気がします。