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いつまでもマファールを食べられる歯に

疲れて肩こりが酷くなると、いつも同じ歯がシクシク疼きだす。
歯というよりはその周辺全体、歯茎や顔の骨を押すと気持ちいい。

その歯が最初に悪くなったのはもう何十年も前。
食べ物に混じって突然固いものがジャリジャリと口の中に現れて、何事かと思ったらその正体は砕けた歯だった。
上の、右から2番目の奥歯が、消えて無くなっていた。
まるで突然の天変地異で崩れた崖みたい(大げさ)。

慌てて歯医者さんに駆け込んだ。
「こういう外側が強いタイプの歯の方は、虫歯になるときは気づかずに中から悪くなる」ですって。
確かにあまり熱心に歯磨きする方ではなかったのに、子供のころから虫歯で苦しんだ記憶があまりない。
ラッキーだったってことかしら。

崩れ落ちた奥歯の治療は、神経も抜いて、結構日数がかかってようやく差し歯になって完了した。
でもその後、疲れて肩が凝ったり風邪をひいたりするとその歯がどうにも痛い。
(神経抜いたのになんで痛いんだろう…?)
そう思いながら騙し騙し過ごす日々。
それから十数年、結婚して引っ越しをして子供が産まれてと環境はガラリと変わり、ついでに疲れも溜まり、いよいよ痛みが我慢できなくなってきたので子供が通っていた歯医者さんについでに診ていただいた。

レントゲンを撮ってもらったりして
「最初からやり直しましょう」
ということになった。

さて治療開始。
まず長年私の口の中にいた差し歯を外す。
と、その瞬間、

はあああああああああああああああ

すごい開放感が押し寄せた。
体の重さがなくなって宙に舞い上がるような…
目の前の霧が一瞬にして晴れたような…
高らかなファンファーレが聞こえたかもしれない…

おそらく差し歯の大きさが大きすぎたのでしょう。
無理やり左右の歯の間に入れられて、おしくらまんじゅうしてたのでしょう。
その開放感の中、再び基礎工事が始まった。

歯の治療って、なんとなく建築土木工事に似てるって思う。
かつて自分が建築の仕事をしていたからそう感じるのかな。
何回もの工程に分けて、
 神経をもう一度キレイにしましょう(地盤調整と基礎工事)
 差し歯を差す下地を作りましょう(土台工事)
 歯の型を取りましょう(材料発注)
 歯を差しましょう(建築工事)
 噛み合わせを確認しましょう(引き渡し前の検査)
みたいな感じ(ざっくりすぎる)。
なので、私にとっては歯医者さんはなんとなく凄腕の職人さんみたいなイメージがある。
実に尊敬に値する。

その後はとても快適だった。
…のだけど
また最近疲れてくるとその歯の周辺がなんか疼くようになった。
(神経抜いたのになんでかなあ?)
とまた同じループ。
とりあえずはやり過ごしているけれど。

それ以外の歯は、今のところ全く痛くもないし気になるところもなく、唯一その歯の不快感だけをいつまでも引きずっている。
一番最初の治療がよろしくなかったんだろうか。
神経をとったのになぜいつまでも痛いの?
ブツブツ…

もう他の歯でこの痛みは味わいたくないと思う。
そして、そろそろ将来の認知症のことも気にかかるお年頃。
認知症の原因が歯周病であるという驚きの事実を、先日知って震えた。
さらに、昔から硬い食べ物が大好きで、ガリガリする歯応えがストレス解消になっている。
いつまでも大好きなマファール(ご存知でしょうか、ねじねじした形のとてつもなく硬いお菓子)を食べられる歯でありたい。
この先、いつまで食べられるか。
80代でも頑張ればいけるだろうか。
その先は …
それを目指して、自他共に認めるめんどくさがりの私だけれど、歯磨きだけは頑張りたい。
歯が崩れ落ちる前に検診も行っておかなくっちゃ。


#いい歯のために

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