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【レビュー】Synestia & Disembodied Tyrant『The Poetic Edda』(ネオクラシカル・デスコア)

The Poetic Edda(ネオクラシカル・デスコア)

【概要】
『The Poetic Edda』はフィンランド産🇫🇮デスコアバンドSynestiaと米国産🇺🇸シンフォニック・プログレッシヴ・デスコアバンドDisembodied Tyrantによる合作EP。
2024年5月3日にリリースされました。

3曲目のアルバム・タイトルトラック『The Poetic Edda』にはデスコアバンドShadow of IntentのVo.であるBen Duerrがゲスト参加しております。

【レビュー】
音楽性の特徴としてはシンフォニック・デスコアを基調としており、クラシックのバロック音楽におけるチェロ&ヴァイオリン協奏曲の様な室内楽ストリングスが全面に押し出された非常にクラシカルなデスコアであり、現在のメタル界隈にて新たな"ネオクラシカル・デスコア"なるサブジャンルを開拓したと言っても過言では無い唯一無二の世界観を表現しています。

厳格で重厚感のある本格的なバロック協奏曲なストリングス
や、氷を想起させるヒンヤリとしたシンセのKey.に圧倒的であり儚くもある合唱隊のコーラス、緊張感を覚えるチェンバロ、最新型のデスコア・サウンド、そして洗練されたプロダクションの融合により規格外の完成度を誇るEPとなりました。

YoutubeのMVの様に凍てついた氷点下ゼロの険しい氷の別世界を彷彿とさせる音楽性であり、逆説的に言えば音楽性だけで体感的に寒さを表現出来る感性と手腕に脱帽しました。また地球の広大な大自然の前では人間の所業など無力であると現す様な荘厳な雰囲気もデスコア・サウンドととしてヒシヒシと感じさせられます。

それぞれのバンド楽器の演奏技術は非常にテクニカルであり、ギターの鋭利な高速リフワークには驚嘆すら覚えます。
また楽曲構成がただ単調ではなく静と動の緩急が美しく、またドラマを感じる転調や複雑性があり、プログレッシヴな側面も窺えます。

個人的には今年2024年のデスコアの中では年間ベストNo.1のハイ・クオリティを誇るであろう(超)名盤と位置づけており、今作はメタルにおいてネオクラシカル・デスコアと言うサブジャンルを開拓した功績がとても大きいと解釈しております。

これは4曲入りのEPですが、たった4曲だけでも余りにも質量が詰まり過ぎている印象があり、とても充足感と満足感があります。

このEPにて作曲&編曲&オーケストレーション及びプロデュースを担当したSam Melchior (作曲、オーケストレーション)、Blake Mullens (プロデュース、ミックス/マスタリング)及びSynestia & Disembodied Tyrantのバンドメンバー全員を讃えて表彰したい気持ちでいっぱいです。

【キラーチューン】
はっきり申し上げればEPの中では全曲全部キラーチューンなのですが、強いて言うならば4曲目の『Winter』です。
イタリア出身、バロック時代の作曲家アントニオ・ヴィヴァルディの名曲『協奏曲集「四季」作品8第4番ヘ短調RV297,"冬":Allegro non Molto』が物の見事にシンフォニック・デスコア(ネオクラシカル・デスコア)として再解釈され、原曲へのリスペクトや愛をふんだんに感じられる上、デスコアとしてcover.される事により一層、ヴィヴァルディの厳寒の世界への解像度が高まった様子が窺えます。

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