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「裏を取材」第2弾 <第2章>



| 情熱と冷静さが紡ぐ「とある家族」の物語

向田(以下、向):赤嶺さんがこのkaponoっていう名前を考えたし、ロゴも作った。全体の概要や言葉としての形を整えてくれたのは赤嶺さんですからね。僕はただのプロトタイプ版を提案しただけで、そこから完成形まで引き上げてくれたのは赤嶺さんだと思います。

赤: ありがとうございます。そんなふうに言ってもらえると嬉しいです。

向: そこで改めて聞きたいんですが、僕が「こういうことをやりたいんだ」という思いを語ったときに、赤嶺さん自身、率直に「kapono」というプロジェクトについて、実現できると思いましたか?

赤: はい、会社のプロジェクトとしての実現自体はできると思いました。ただ、どれくらいトラブルが起きるかとか、時間がどれくらいかかるかについては少し心配でしたね。実際、予定よりも少し時間がかかってしまっていたりもします。

向: なるほど。でも、赤嶺さんはどちらかというとリスクを回避するタイプじゃないですか。それでも今回、「やってやるぞ!」という気持ちになったのは、どうしてだったんですか?

赤: それはですね、実は「とある家族」さんのお話を聞いたときに、「面白そう!」って思ったのが大きかったですね。

向:え?!そうなんですか?

赤:リスク回避しそうなタイプに見えるかもしれませんが、実際の私は最終的には「面白そう」が勝つタイプなんです。リスク回避と「面白そう」、どちらも同じくらい大事なんですが、最後の決め手は「面白そう」で動いてしまいますね。

向: へぇ〜、それは気づいてなかった!赤嶺さん「面白そう」が勝つタイプなんですね!

赤: そうなんです。正直なところ、自分自身が形になったその本を読みたかったという気持ちが強かったですね。

向: それは意外ですね!「とある家族」さんの本って、これまでの3冊の中では一番「ぶっ飛んでる」感じがしますけど。(笑)

赤: 確かに、そうですよね。(笑)

向:本当に意外だったなぁ。

赤:ただ、私が「面白い!」ってなり過ぎると本を読む人とのバランスが取れなくなってしまうので、そこは気をつけながら「ちょうどいい間」を意識して進めました。

向:なるほどね!

赤:普段の仕事中は淡々としているように見えるかもしれませんが、内心では結構テンションが上がっている瞬間もありましたよ。(笑)

向: なるほどね、仕事に対する情熱と冷静さのバランスがすごく伝わるエピソードが聞けて嬉しいです!

| 世界観を形作る言葉とデザイン

向: それも踏まえてなんですけど、僕が持っていた思いって、まだロジックの段階だったんですよね。それが「こういうことにしよう」って形になっていく過程、その思いつきの流れをちょっと聞いてみたいんですけど。

赤:はい、どうぞ。

向:「kapono」ってハワイの言葉ですよね?どこからきたんですか、この言葉。

赤: そうですね。まずは作家さんのラインナップや伝えたいことを考えてみたんです。

向:なるほどね。

赤:それで、そこにどんな共通点があるんだろうって探していくと、「生き方」というのが浮かび上がってきました。

向: 「生き方」ですか。

赤: はい。その中でも特に「自分らしさ」ですね。

向:うんうん、確かにね。

赤:生きづらい世の中でどう生きていくかというテーマが大きかったんです。そのテーマに沿って、「助けたいと思う人」と「自分なりに生きやすい道を見つけた人」っていう二つのタイプの作家さんがいたんですよ。

向: なるほど。それをどうまとめていったんですか?

赤: それを一度抽象的な概念にすると、「ありのまま」という感じになるのかなと思ったんです。

向:はい。

赤:それで、そこから言葉を探しました。出版する予定の方に一番しっくりくる言葉を探していく中で見つけたのが「kapono」だったんです。

向: 「kapono」を見つけたときって、どう感じました?

赤: その瞬間に「あ、これだな」ってしっくりきましたね。

向: なるほど。そこからはロゴのイメージとかもすぐ固まった感じでしたよね?

赤: そうですね。そこは結構早かったです。なんとなく頭の中でイメージはありました。

向: ロゴの形って本を開いているイメージですよね。最初はペンだったと思うんですが?

赤: そうです。最初はペンでしたね。でもそれって「書く人」のイメージですよね。それじゃあ作家さんだけの視点になっちゃうって思ったんです。

向:うんうん、確かにね。

赤:やはり本には「書く人」も「読む人」も必要です。だから両方のイメージを持たせたかったんです。それで、本を開いた状態のデザインに落ち着きました。

向: 書く人と読む人、両方を象徴するデザインにしたっていうわけですね。それが「kapono」の世界観を体現しているんですね。

赤: そうですね。デザイン部の協力もあって、このロゴの形はバランスよく表現できていると思います。

| 「みえるさんの世界」を作る挑戦と慎重な配慮

向:
なるほど、一番最初に手掛けたのは「とある家族」さんですよね。

赤: そうですね。「とある家族」からスタートしました。

向: ただ当時、同時進行で他のプロジェクトもありましたよね?確か3作品ぐらい同時進行してたんでしたっけ。

赤: はい、そうでしたね。いろいろ整理が必要な状況で進めていました。

向: そんな中で、第1弾として「みえるさん」の本が出ましたね。ただ、初めての作品としては結構ハードモードだったように感じます。というのも、みえるさんは既にファンが多くて、作りたいものもはっきりしていましたよね。だから、問われたのはむしろ技術力だったのかなと思ったんですが。

赤: 確かにそういう部分はありましたね。ファンの方もすでにいらっしゃいましたし、さらに新しい読者に向けた配慮も必要でした。また、みえるさん自身の思いもすごく大切でしたから、総合的に考えながら進めていきました

向: 難しかったんじゃないですか?

赤: そうですね、難しかったです。特に体験談をまとめる部分が大変でした。

向: 体験談、ですか?

赤: はい。体験談って人それぞれで違いますよね。思いも結果も異なりますし、それをそのまま伝えるのは大切なんですけど、それによって説明やQ&Aの部分に説得力を持たせる必要がありました。特に、送られてきた体験談の言葉ってリアリティはあるけれど、受け取り方次第では読者に誤解を与えてしまう可能性もあるんですよ。

向: 読者がその体験談をどう受け取るか、という部分ですか?

赤: そうです。「この人はこうだったけど、自分の場合は違うかもしれない」と読者が理解できるように調整するのが難しかったです。でも、体験談を送ってくれた方の思いを否定するわけでもないので、そのバランスを取るのに言葉をすごく慎重に選びました

向: なるほど。それって、あくまで「みえるさんの世界」を表現する本だけど、いわゆる商業的なコマーシャルにはしないという姿勢ですよね?

赤: そうですね。もちろん、この本を読んで「みえるさんに会ってみたい」と思う人がいるのは良いことなんです。でも、本を読むだけの人もいる。その場合に「私も同じ状況だからこうなるに違いない」と思い込んでしまうのは避けたかったんです。それが本質を見逃す原因になってしまうと問題ですから。

向: そこが「kapono」の理念にもつながるわけですね。

赤: そうです。特に「その人らしく」というテーマがある中で、みえるさんの本は「自分で自分を幸せにする方法」を考える内容だったんです。他人に頼りすぎず、自分らしく生きるにはどうしたら良いかという視点を大事にしていました。

向: だからこそ、正しい情報を提供することと、誤解を避けることが重要だったと。
赤: はい、そうです。応援する側としての姿勢が間違ってしまうと、その人らしさを損なってしまう可能性がありますよね。それは絶対に避けたかったので、そこには細心の注意を払いました。

「来福のいろは」

第3章「『自分らしさ』を紡ぐ商業出版の新たな形」に続く

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