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【読書感想文】変身/カフカ
夢見てるような雰囲気
不思議な物語だった。ストーリーもだし、なんというか、雰囲気が不思議な感じだった。
後書きで、カフカは「変身」を夢だと語ったと書いてあったが、まさに夢みたいな後味。
読み終わった今はまるで夢から覚めてすぐ見た夢について思い返してるみたい。
まず、主人公が虫だという点では、読者の想像力に託される部分が多く輪郭がはっきりとしない。そして、虫に変身した理由やその他の説明が少ないこと。
夢の中で意味不明な設定があったり当然のように不思議なことが起きるのと似ている。
人から見たグレーゴル
私は、1つの事象に対し1人の人間が持つ感想や意見は一つではなく、その人の中で1番大きい意見がその人の感想・意見として決定されると考えている。
本作ではその複数の意見が対象(グレーゴル)の変化によって大きさを変え、一番大きい意見、すなわちその人の主張がコロコロ変化していく様が表されているのではないか。
例えば、妹のグレーゴルに対する感情は、兄としてのグレーゴルへの同情、虫としてのグレーゴルへの嫌悪、自分の生活をめちゃくちゃにした憎悪、死んで悲しい、死んでホッとした、など色々な角度からの感情が同時に存在している。
1つの感情に着地することなくストーリーが進んでいくことで、この夢の中のような独特な雰囲気が続いているのではないか。
他にも3人の紳士やでっかい女中に対しても、読んでいく中で「この人は味方」「こいつは悪役」などと決定的に考えることはできず、常にふわふわとした印象を抱いた。
「変身」したのは誰?
私のこの解釈は、終始グレーゴルをグレーゴルとして捉えていることによって成り立つものだと思う(ほとんど不変の一つの対象に対する人間の様々な感情だから)。
ところが、この物語の題名は変身であり、グレーゴルの変化が主題だ。
となるとこの解釈では辻褄が合わないのではないか?という意見もあるだろう。
そこで、逆にこう考えてみてはどうか。
この「変身」というのはグレーゴルが虫になったことではなく周りの人間の心情の変化のことを指しているのでは…?と。
なぜなら物語の最初から最後までグレーゴルはグレーゴルだった。
虫になっても変わらず働きに出ようとし、死ぬ直前まで家族のことを考えて動いていた。
振り回され疲弊した家族たちと比べ、グレーゴルの変化の無さはまさに夢を見ている本人、つまり不変の存在ではないのか?
(今回の記事で目次の使い方を覚えてハッピー✌️)