大好きだった仕事を辞めた
大好きだった仕事を2カ月前に辞めた。
未練はないと思っていた。
長時間労働と厳しすぎる上司、個人主義で助け合わない同僚のもとで、もう続けていくことはできないと思った。
もうたくさんだと思って飛び出したのに、いまごろ心がぐらぐら揺れている。
未練なんてない。
たぶん、アイデンティティが揺らいでいるのだ。
あこがれて、やりたくて就いた仕事だった。
門を叩いて受け入れられた時、うれしかった。一生この仕事にかけるんだと思ったこともあった。激務の中で、学生の頃から付き合っていた彼氏とも別れた。
それなりに無理して働いてきたし、この仕事に心を砕き、時間を費やした。
できないことがあれば悔しく思い、優秀な人と比較しては地団太を踏んだ。その代わり、私にしかできない成果を上げた時は、この上なくうれしかった。
夢はスタートラインに経ってからが、本当の苦しみの始まり。
生きている限り「これでもう大丈夫」ということはなく、
「極める」なんて日が来るとはとうてい思えない。
ただ苦労が積み重なる日々に自分で終止符を打った。
割に合わない、そう思ったからだ。
こんなに頑張っても報われないなら別の道がある。
後ろを振り返ることなんてないと思っていたのに、今、何かむなしい。
振り向く必要はなくなったけど、じゃあ次どこに向かったらいいのか、わかんないからだ。
「私は何者か」
そんな問いに長らく答えを与えてくれた、仕事にさよならした。
もう怒鳴られることもない。
終電まで働いてへろへろになることもない。
穏やかな時間の代わりに名刺を失った。誇らしく名乗る名前を亡くし、自分が誰だか分からなくなった。
きっと明日には忘れる、こんなセンチメンタルな気持ちは。
でも日曜日の夜、ワンルームで悲しくなったこと、不安だったこと、
刻みつけておきたいから、書くことにした。
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