地に落ちた勇者、マンチーニに地獄はない
イタリアサッカーの勝ち組、あるいは常勝監督とも形容できるロベルト・マンチーニ氏が、サウジアラビア代表監督を首になりました。
マンチーニ監督は2021年、欧州選手権で53年ぶりにイタリアを優勝に導いて大喝采を浴びました。
ところが2023年、サウジアラビアから同国の代表監督就任を要請され、提示された年棒2500万ユーロ、およそ41億円に釣られてイタリア代表監督の職を投げ出しました。
W杯にも匹敵する欧州選手権を勝ち抜いた、マンチーニ監督への賞賛に満ちていたイタリアの世論は、一夜にしてブーイングに変わりました。
莫大な金額が右から左に軽々と動くサッカー界のこと。彼が大金に釣られるのは仕方がない。だが、W杯予選の大事な試合が控えているまさにその時に、代表監督の座を去った無責任さが国民の怒りを買いました。
しかしそれも一瞬の出来事でした。サッカービジネス界の騙しあいと裏切りと金権体質に慣れきっている人々は、すぐに事態を忘れました。
それから1年半後、つまり2024年10月24日、成績不振を責められて、マンチーニ氏はサウジアラビア代表監督をお払い箱になりました。
イタリアの一般有力紙はこぞって「金に転んでサウジアラビアに走ったマンチーニが、馘首されてすごすごとイタリアに舞い戻った」と、皮肉と指弾と嘲笑を交えて記事を書きまくりました。
筆者もそれらの新聞と同じ気分ですが、同時にイタリアの、またヨーロッパのサッカー界は、明日にはもうマンチーニ氏の不徳のことなどケロリと忘れて、彼を雇うために臆面もなく奔走しまくるだろう、とも思っています。