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トランプのマブダチAfDの恐怖
2月23日に行われるドイツ総選挙を、極右政権下にあるイタリアからじっと見ています。ドイツの極右AfDがどこまで勢力を伸ばすかが最も気になるところです。
AfDは各種世論調査で、キリスト教民主・社会同盟の30%に次ぐ20%の支持率を維持しているとされます。
ドイツの支持率統計は正確だと証明されていますが、アメリカの隠れトランプ支持者と同じように、隠れ極右支持者がいる可能性もあります。驚きの結果が出ないとも限りません。
AfDはトランプ政権、またプーチン大統領らと同じ穴のムジナです。その周りにはトランプの吼えるポチ、マスク氏がいて、彼はAfDはドイツの救世主だと叫んでいます。
彼らに親近感を抱きつつ遠くない場所から眺めているのが、ここイタリアのメローニ首相です。彼女はトランプ大統領とマスク氏の友人です。友情の大本にはむろん政治イデオロギーがあります。
メローニ首相は極右と呼ばれ、極端なケースではネオファシストと規定されることさえあります。
だが彼女は政権樹立後は中道寄りにシフトし、穏健な極右あるいは急進的右派とでも形容できる政治姿勢を保っています。
EU(欧州連合)とも良好な関係を築き、それどころか時にはEUの中心的な役割さえ演じて、筆者が規定する「欧州の良心」を体現する姿態さえ見せます。
彼女がそうなったのは、イタリア共和国の真髄にある多様性がもたらす必然です。
イタリアの政治風土には、多様性が乱舞する故の極論や過激思想が生まれやすい。が、それらの極論や過激思想は、同じく多様性故により穏健へと向かうことを余儀なくされます。
メローニ首相と彼女が率いる極右政党「イタリアの同胞」は、トランプ主義と親和的ですが、同時にそれと対立しがちな欧州の良心と民主主義を守ろうとする力でもあります。
ドイツのAfDも、政権の一角を担うことがあれば、イタリアの同胞と同じ道を辿る、と筆者は考えてきました。
もっともそれは、イタリアの国民性とは違い、キレると歯止めが効かなくなるドイツの民意の存在の可能性、という不安を脇に置いての話ですが。
世界政治の舞台では、イタリアは日本と同じく取るに足らない存在です。一方ドイツは大きな影響力を持ちます。従ってAfDの躍進は大きな脅威です。
それでも同政党が単独で政権を握らない限り、ドイツのリベラル勢力と欧州全体のそれが抑止力となって、AfDの暴走はきっちりと止められると筆者は考えてきました。
しかし、第2次トランプ政権の誕生でその見通しには霞がかかり始めました。
ロシアとさえ手を結ぶトランプ主義が、今後も勢いを増して世界を席巻すれば、それに引きずられて欧州の極右も本性を露わにする可能性が高まります。
その際に、イタリアのメローニ首相がトランプ主義に引きずられるか、あるいは欧州の良心を守る砦の一角に留まり続けるかは、世界が真にどこに向かうかを占う手がかりになるかもしれません。
言うまでもなくなく将来、AfDが単独で政権を握るような事態になれば、そしてトランプ主義が今と同じく猛威を振るっていれば、イタリアの政治状況などほとんど何の意味を持たなくなるでしょうが。。