見出し画像

#2-➀ あなたの「お家」は健康ですか?(前編)

【届け!21世紀のナイチンゲールたちへ】
この記事は、2人の現役看護師・奈津美と侑子が、ナイチンゲールの著書『看護覚え書(Notes on Nursing)』を元ネタに繰り広げた対談を収録したもの。『看護覚え書』は、看護師のバイブル的存在。だけど読破できた人、ほんとは多くないんじゃない?そもそも読みにくくない?それなら2人で読んでみよう。『看護覚え書』にある”看護の原則”は、現代の看護の現場でどこに散りばめられているかな?2人で探してみよう。

このような動機から、2人で対談企画を始めました。
日々の忙しさ、業務量の多さに疲弊して、「看護ってなんなんだろう?」とわからなくなっていませんか?悩める21世紀のナイチンゲールたちが、看護を見つめ直すきっかけのひとつとして、この対談が役に立てれば幸いです。   
              奈津美、侑子


お家の健康の話をしよう


「健康」というと、何を思い浮かべるでしょうか?


人の「体の健康」や「心の健康」のことでしょうか?
具体的に、健康食品や運動、筋トレなどを思い浮かべる方もいるかもしれません。

では、「お家の健康」って考えたことありますか?


ナイチンゲールが、看護覚え書の第2章『家屋の健康(Health of Houses)』の項目の中で、彼女が生きていた過去の時代から、現代の私たちに訴えかけていること。それは感染症と向き合っている今こそ、考えていきたいことでした。

それでは対談をご覧ください。


原則1:よく換気でき、程よく清潔なお家こそ「健康な家」である。



構造の悪い病院が病人に悪い影響を与えるのと同じように、構造の悪い家屋は健康な人に悪い影響を与える。家の中の空気がよどんで動かないようにするだけで、病気は必ず発生する。
―『看護覚え書き‐本当の看護とそうでない看護‐』(日本看護協会出版会)


(侑子)今回はお家の話やけど、その構造や生活習慣が、感染症とかいろーんなのを引き起こす原因になってるよって話よな。お家の構造や生活環境が整ってへんかったら、いくら換気しても実はあんまり意味ないよって言ってはる。

(奈津美)うんうん、「だから環境を整えましょうね」ってことを、この第2章では話してるんだよね。


彼らは(儲けに聡い建築業者たち)いちばん安上がりな家を建て、また、その家に平気で住むような愚かな人びとが、いつの世にも存在するのである。そのうちに家族がつぎつぎと死んでいったとしても、(中略)それについては誰も避難されず、「神の摂理」といわれ、それですまされてしまう。
ー『看護覚え書ー看護であること 看護でないことー(改訳第7版)、一部抜粋』


(侑子)そう、根本のね。ナイチンゲールは、もはや家の造りから間違ってるって言ってるよね(笑)。例えば「部屋に窓一個しか無いんちゃう?」とか、「その窓一個開けるだけで、ちゃんと全部きれいな空気で満たされるの?」って。

(奈津美)換気には「入り口」と「出口」が必要なんだよね。

(侑子)うんうん。私1Kの家に住んでるけど、窓は一個しかない。「入り口」だけなんだよね。家のドア開けても、その先はオートロックがあるからよく換気できるわけじゃなくて(笑)。
まさに造りが間違ってるのかも。風通しの悪い、安上がりな建物。(笑)

(奈津美)安上がりな建物(笑)
私もさっき窓開けてたけど、でも一個しか開けないんじゃだめなんだよなってわかりながらも、一個しか開けない私。(笑)

(侑子)ないもん窓が(笑)

(奈津美)ナイチンゲールが「換気しやすい構造になっているかとかをちゃんと気にする消費者だったらよかったのに、そんなこと考えないで家を買うから、安上がりな家がたくさんできちゃうんだぞ」って言ってて、どうもすいませんってなった(笑)

(侑子)ほんまにね(笑)なんか最近、高気密住宅っていうめちゃめちゃエアコンの効きがイイような造りの住宅があるみたいで。”高気密”やから建物に隙間がないように作られてるんやけど、だからこそ熱がこもってきたりするやん?そうすると温度差で結露が発生しやすいから、24時間換気扇回すのが必須みたいやねんな。

でも、例えばそれを止めちゃったりすると、壁に断熱材とか使ってるからますます結露が出やすくて、壁と壁の間にカビとかダニとかが発生しやくなってしまうんやって。

(奈津美)えー、むりー(笑)

(侑子)なんかその、カビの胞子がふわふわ分散してくねん(笑)。「なんとなく、最近調子悪い」、みたいなことが起こりうる。
管理を間違えると、健康被害を引き起こすきっかけになるみたい。

(奈津美)なんか、文明が進むのも考え物じゃない?(笑)

(侑子)いや考え物やねん!
小児アレルギー科のDrも言ってた。アレルギーってほんとに文明病やってきれいになればなるほど、文明が発展すればするほど出てきたものやねんな。

あたしらの免疫って、70%は腸内細菌の働きによるもので、腸内細菌が免疫の元を作ってくれてるんやけど、それはこの辺の環境中にいる菌(日和見菌)たちを体の中に取り込むことで腸内細菌たちが増えていって、体の免疫や、消化の働きを活発にしてくれてるねんな。

だけど最近アルコールで何もかもうわーっときれいにしてしまうことが当たり前になってしまったからさ…。皮膚を守ってくれている常在菌もどんどんやっつけられて、皮膚のバリア機能も低下してしまってる。そうすると、埃とかダニとかっていうアレルギー物質が取り込まれやすくなってしまうねんなぁ。

それに、きれいになりすぎて、必然的に腸内に取り込む菌が少なくなってるし、そこらへん耐性菌ばっかりやし。あたしらはもう、どんどんそういう外的なほんまに悪いもんにも弱くなって、やられやすい体になってる。

(奈津美)…なんかどっきっとする話。

(侑子)なんか、ほんとは悪い菌とかいーひんのに、あたしらが弱いからそれにやられてしまっている。

(奈津美)なるほどねー、そうかもしれないよね。

(侑子)ねぇ。食物アレルギー持ってる子多いなぁって思うけど、それが増えてるのも、たぶん環境を整えすぎているというか、逆にきれいにしすぎているからなんじゃないかと…。

(奈津美)納得しちゃうなー。きれいになりすぎた世の中なのかもね…。

(侑子)うん、きれいになりすぎた世の中だよね。腸内細菌の元が作れなくて、免疫が弱まってしまってるっていう現状もある。お野菜とかもさ、土がついてるの軽く洗ってご飯作ったりしてると思うねんけど、たぶんきれいに洗われすぎてるんじゃないかなぁ。土の中の菌を取り込む隙も無いのかもしれない。

(奈津美)なんか悩ましいね…。


画像2


(侑子)埃とか、食べかすとかが家中にあっていいわけではないけど(笑)、過度にきれいにするみたいなのは、必要ではないんじゃないかなっていうね。

(奈津美)そうだねー(笑)、きれいにしすぎて自分の免疫を弱くしてるとしたら…私たちはいったいどこに向かっていくんだろうって思っちゃうね。

(侑子)そう、どこに向かってんのやろうねぇ。ほんまにそうやね。そうなるともう、他に頼らざるを得なくなってくるやん。自分で戦うことができなくなっていくから、抗生剤とかに助けてもらったりとか。でも結局抗生剤使ったら耐性菌ができるし、そしたらまた違う抗生剤に変えて、さらに耐性菌ができて…。

(奈津美)終わらない戦いだわ。

(侑子)そう、菌がパワーアップしてくだけで、あたしらはどんどん弱くなっていく(笑)

(奈津美)ほんとだねー!菌がパワーアップするチャンスを与えてしまっている(笑)

(侑子)うん。チャンスを完全に与えてしまっている。この住居環境に始まり。

昔さ、大阪の学校でO-157の集団食中毒があったときに、実態調査があったみたいやねんけど、便からO-157がたくさん見つかった子供たちのうち、すごく重い症状が出た人とそうでなかった人の生活の違いがあったんやって。何かっていうと、日頃泥んこ遊びをしてた子たちはそんなにヒドくならへんくて、清潔に対して神経質だったお家に住んでた子たちのほうが症状が重くて大変だったらしい。

(奈津美)なんかね、どうなんだろうかほんと。清潔に対して神経質になりすぎないで、もっと自然と触れ合う環境を作っていればってことかな。

(侑子)うんうん、なんか、菌というものが悪いものっていう認識自体がなんかちょっと違うのかもしれん。悪いからやっつけなきゃって、めっちゃ消毒したり、手を洗ったりとかって最低限は大事やけどさ、なんか、ある程度一緒に住んでてもいいやって気持ちの人とそうでない人で差が出てきてるような気はする。

(奈津美)なるほど確かに、そうだよね、「お前が悪い!」じゃなくて、「自分が強くなろう!、免疫力を上げよう!」みたいな感じでいるべきなのかもしれないよね。

(侑子)うんうん、それこそ共存してるわけやから、力を借りればいいんちゃうかな。あたしらもその菌たちの力を借りて自分の免疫たちを作っているわけやから、ね。「お前が悪い、やっつけろー!」みたいな感じじゃなくて(笑)

画像3


原則2:日本の水道からは一定の塩素が含まれた水が出てくることを気に留めておくこと



つい2、3年前まではロンドンの大部分の地域で、下水と水洗便所の排水によって汚染された水が毎日使われていた。これが改善されたのは大変良かった。(中略)そしてひとたび伝染病が発生すると、このような水を使っている人たちは必ずといっていいほど罹患する。
―『看護覚え書き‐本当の看護とそうでない看護‐』(日本看護協会出版会)


川の写真

(侑子)下水のとこ読んでて、私下水がどういう感じで、綺麗になっていくかちょっとわからへんくなって。(笑)ネットでちょっと調べてみたんやけど…。間のところの詳細は、ちょっとまぁ説明できんけど(笑)。
とにかく汚れが沈殿してってきれいになっていくんやなってわかってんけど、最後にさ、「消毒塩素を入れて川に流す」って書いてあって(笑)

(奈津美)そうなんだ!?塩素!?

(侑子)そう、「塩素入れて川に流してたんや!!」ってなって(笑)。なんか衝撃だし、昔社会科見学行って勉強したと思うけどそんなんすっかり忘れたしさぁ。

(奈津美)浄水場見学行ったけど何も覚えてないや(笑)

(侑子)ね(笑)その塩素入りのやつが川に流れ、そこに泳いでいる魚たちがその中でぷかぷかしてるわけで、それを使ったお水とかを使って、お野菜とかを作ってるわけで、なんかやばい。塩素が循環してるって(笑)

(奈津美)まぁ、相当薄まってはいるだろうけれどね。……だから上流の水がおいしいんだよね。

(侑子)その、歴史を軽く見ただけやけどさ、工業用水をそのまま川に流したから、そこで公害が発生して、「お水綺麗にしなあかん」ってなって、最後消毒液入れることになったと。「あ!きれいになった~!公害なくなった~良かった~!」ってなったけど、それって安全は保たれててめちゃくちゃ感謝なんやけどけど、よく考えたら塩素飲んでるんよね。

(奈津美)うん。体に害はない濃度ではあっても、確かに塩素のんでる(笑)もしかしたら、大事な菌たちが少なからず影響を受けるんじゃないかっていうね。

(侑子)ねぇ。大げさな表現だけども、何か…恐ろしくなった(笑)本当に、喋ってて。でも…、見方を変えると、塩素が入っているからこそ在宅での吸引(※)カテーテルの洗浄は水道水をつかうんだよね~。

(奈津美)家庭での医療ケアには現代の少し塩素の混じった水道水は欠かせないかもしれないね。

(侑子)うん。でも飲み水として自分が飲むときには、浄水しようって思う。どこから来た水なのかっていうのと、水の使い道にも気を向けていきたいな。

吸引…カテーテルという細い管を用いて気管内の分泌物を除去すること。多くの医療現場ではカテーテルは使い捨てが基本だが、在宅での吸引ではカテーテルを繰り返し使用することがスタンダード。この場合、カテーテルが汚染されていると気管やその先の肺に直接微生物や病原菌を押し込むことになってしまうため、清潔に保つ必要がある。家庭での吸引カテーテルの管理には少し塩素が混じっている水道水はちょうどよい。


ここまで読んでいただきありがとうございました!

対談は後編へ続きます!
▼続きはこちらから♪



お家の環境をどのように整えるのか??後半は近頃気になる感染症のお話も…。また、窓が1つしかないお家でどうやって換気ができたか?という後日談もあります☆



<対談者プロフィール>

【奈津美】
’92年生まれ。ドラマの影響で看護の道へ進むことを決意。しかし臨床1年目に一度挫折を経験する。「やっぱり看護が好きだ」と気づき、現在は病棟の副主任看護師を務めている。たくさん泣いて転んで落ちこんだからこそ、人の生きがい、人間関係、死に方と生き方を大切に思うようになる。看護師を癒す看護師でありたい。たくさんの人の人生を、わくわくするものにしたい。食べること、歌うこと、ビールと日本酒が大好き。

【侑子】
’92年生まれ。現役小児訪問看護師、兼ベビーマッサージ講師。人の目を気にして自分の想いと葛藤し、きゅうくつな幼少期~思春期を過ごしていた。生きづらさから脱したくて「私を知りたい」と、小児領域に飛び込む。今は、自分らしくのびのび生きることを大切に、生きている。「子ども・家族と心を通わす看護」がモットー。日々子どもの”生きる”をサポートしている。山と旅、新しい価値観に触れることが大好き。山登りは、ハードさよりもゆったり景色を眺める縦走が好み。発酵食、保存食づくりにハマってます。



嬉しいです!頂いたサポートは、今後の2人の活動資金とさせていただきます。