「脳と薬物」を考える
こんにちは。うつ病休職エンジニアの三十郎です。
脳を科学する上で、避けて通れないのが「薬物(麻薬)」です。その歴史は紀元前3000年頃から始まったそうですが、原始人も何かの葉っぱを噛んでリラックスしていたかも知れません。
日本は欧米みたいに大麻が合法化されていないので、「余り関係ない」と考えたら間違いです。日本は「薬物」大国の歴史があります。そして、その末裔が各種エナジードリンク(合法の範囲内)です。
1.脳と神経伝達物質
先ずは、自然な状態における、脳内で造られる薬物について見てみます。脳細胞の情報処理役:ニューロンはお互いをシナプスで接続しシナプスから放出される物質でコミュニケーションを取っています。
現在知られているだけでも、約50種類も物質が存在します。情報の伝達は、単なる電気信号のON/OFFでは無いことが分かります。マイクロプロセッサと情報伝達の仕組みは、大きく異なります。
有名な薬物とその役割を簡潔に記します。
アセチルコリン: 自律神経の調整
ドーパミン: 運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習に作用
ノルアドレナリン: 注意と衝動性を制御、闘争または逃避反応を起こす
アドレナリン: 交感神経が興奮させ、闘争か逃走かの準備をさせる
セロトニン : 生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などに関与
メラトニン: 概日リズムによる同調
オキシトシン: 分娩時に作用、リラックス効果、社交性の改善
エンドルフィン: 多幸感をもたらす脳内麻薬
これらの物についても未解明な部分が多々あります。神経伝達物質のバランスが崩れると、精神疾患に似た症状が現れます。
また、ドーパミン、エンドルフィンは快楽をもたらしますので、それに似た効能の薬物の外部投与が麻薬摂取になると考えられます。
2.神経伝達物質と麻薬の違い
神経伝達物質にも中毒性があります。ギャンブル依存症、ゲーム中毒になる人はなど、ドーパミンやエンドルフィンが出まくっていて、止めるに止められないのでしょう。ただし、脳を破壊する恐れが少ないので、廃人化することは希です。でも止めた方が良いです。
麻薬は人体由来の薬物ではありません。それ故、人体に深刻なダメージを残すことが多いです。大麻はタバコより遙かにましとの、研究結果もありますが、「タバコを止めて大麻にしなさい」と積極的に勧める医師はいないでしょう。
タバコのニコチンも中毒性があるから、アルコールと並んで危険薬物に指定しても良いのです。ただし、体へのダメージが急速で無いことと、文化的背景や税収減のため、法制化していないだけです。
大麻も体へのダメージが急速で無いことから、合法化する国も増えてきました。一説には、いちいち大麻ごときで逮捕していたら、監獄がすぐに埋まってしまう事情もあるようです。
麻薬を違法として取り締まる理由は、(1)中毒性が強く健康被害が大きい、(2)闇の団体の資金源になる、の大きく2つです。
3.麻薬の歴史
紀元前3000年前のスイスの遺跡からケシの栽培後が見つかっています。ケシと大麻は見かけが似ていますが、ケシ科、アサ科と生物学上の分類は異なります。また、ケシの中には麻薬にならないものもあるので、全てのケシが栽培禁止ではありません。でも古代に栽培していたのは、観賞用ではなく薬用です。
太古より薬用として使われていたのは、痛み止めや、手術用(麻酔)だったようです。娯楽用だったら、その文明は、きっと滅んでいたことでしょう。
歴史の表舞台に出たのは、19世紀からで、純度の良い物が化学的に造られるようになり、庶民の間でも広まり始めました。
大麻からは、マリファナが精製されます。
ケシからは、アヘンが精製され、化学合成するとモルヒネ、ヘロインができます。
コカからは、コカインが精製されます。
どれも有名な麻薬です。
産業革命の初期、労働者から極力搾取可能なよう、麻薬を使って「24時間働けますか?」のために乱用されます。また、初期のコカコーラは、コカイン入り健康ドリンクでした。元祖エナジードリンクです。19世紀は、ほぼ野放し状態です。
1840~1842年のアヘン戦争は、歴史で習いましたよね。これだけ見るとイギリスのあくどさは、ナチスにも負けません。悪知恵の極み、三角貿易。イギリス:綿織物 → インド:アヘン → 清:茶 → イギリス。清国は国民がアヘン漬けにされ、国が滅びるのを防ごうとイギリスへ戦争を挑みます。イギリスは「待ってました」と圧倒的軍事力を背景に、清国を打ち負かし、不平等条約を締結。悪のトライアングル貿易は第2次世界大戦まで継続します。だから、今の中国の麻薬取り締まりは、苛烈、極刑なのです。
これを見ていた日本は、イギリスと距離を置き、オランダなどの国を貿易相手に選びました。
そういう日本も、1885年、世界に先駆け覚醒剤:エフェドリンを開発。改良(改悪?)を重ね、メタンフェタミンへと進化させました。第2次世界大戦中は、公然と「ヒロポン」などの名で売られました。軍も積極的に使用し、兵士の疲労回復、眠気解消、士気向上に利用しました。兵隊さん達はシャブ漬けで、お国のために戦っていたのです。
戦後になって、世界中が健康被害を見過ごすことができないと、取り締まりが厳しくなり、今に至ります。
4.薬物との戦い
ある大学教授の娘が非行に走り(良くある話です)、覚醒剤の常用者に。その教授は、「お前が薬を止められないのは、精神力が弱いからだ!注射器を貸せ!俺が精神力で止める見本を見せてやる」。そして、2人の中毒患者ができました。
精神:大脳の前頭前野だけでは、薬物依存になった脳全体に適うはずがありません。圧倒的な物量の差があります。脳が快楽を求めるのは本能です。多分、悟りの境地に達したお坊さんも、簡単に覚醒剤中毒にできます。念仏を唱えても、勝てない相手には勝てないのです。
なので、一旦手を出してしまうと、取り返しの付かない状態となります。頑張って克服し、Eテレで覚醒剤の怖さを訴えた田代まさしさんも、また、覚醒剤で逮捕されました。よほど医学が発展しない限り、死ぬまで直らないでしょう。
麻薬を売りたい連中は、「金目当て」です。絶対に甘い言葉に乗ってはいけません。「ちょっとだけなら、大丈夫から」は、ありえません。そこが地獄の入り口です。被害者は、あなただけではありません。ご家族、ご友人も、ものすごく苦しむことになるのです。決して魂を売り渡してはいけません。