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受刑者と選挙

最近の報道ネタと言えば、
1,大谷翔平選手&MLB
2,広域強盗事件(トクリュウ絡み)
そして、最も時間を割いているのが、

2024年衆議院議員選挙

と、なるだろう。
今日は、そんな選挙にまつわる話をしていきたい。


犯罪者に選挙権はありません

この一言ですべてを表しているが、まさにこの通りである。
真っ当に生活をして、義務を忠実に履行する。
そんな国民だからこそ、選挙権が与えられている。
(と、私は思っている。)

【選挙権】は法律で定められた権利

日本は、公職選挙法という法律で、満18歳以上の者が
選挙権を有すると謳っている。
今回の衆議院選挙と、来年予定されている参議院選挙だ。
更に、3か月以上市町村の区域内に住み続けると、その属する
地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権も有する。
詳細は「公職選挙法」と調べて頂きたい。

【被選挙権】も同法律に記載されている

【選挙権】は、投票する側のこと。国民とか市民とかいう。
【被選挙権】は、投票される側のこと。議員とか長とか呼ぶ。
この被選挙権についても、公職選挙法に記載されている。
ちなみに、衆議院議員は【満25歳以上の者】が有し、
参議院議員は【満30歳以上の者】が有する。
その他地方公共団体の議員や長についても年齢制限がある。

実刑になった者はどちらも有しない

【選挙権】及び【被選挙権】は、国民の義務を履行する者が有する。
憲法は国民の義務として、勤労・納税・教育を掲げている。
犯罪者は、納税もしないし勤労もしない。
確かに、懲役刑の「懲役」は「刑務作業」を表し、「仕事」のようだ。
しかし、あくまで「更生・矯正」の為であって、勤労とは言えない。

つまり、義務を果たしていないのだ。

「そんな非国民に、選挙権及び被選挙権はあげませんよ」
というのが国の考える形なのだと感じている。

いつまで権利が失われているのか

こちらも、公職選挙法に記載されている。

1,禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
2,禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることが
  なくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)

分かりやすく言えば、
刑務所に収監中の者に権利はなく、仮釈放中の者も権利がない。
仮釈放は、
「刑務所内にいるより、娑婆に出た方が更生・矯正に繋がる」
と、地方更生保護委員会が決定する形である。
つまり、娑婆にいるけど刑執行中なのである。
晴れて権利を回復するのは、満期が過ぎてからとなる。

私の苦い思い出

選挙は2パターンの発生原因があるのをご存じだろうか。
1,定期的なサイクルがあるもの
 こちらは「時期が読める」選挙のことだ。
 例:参議院議員選挙、だいたいの地方公共団体の選挙
 参議院議員は6年の任期で、3年ごとに半分ずつ改選される。
 地方の選挙は、あまり解散や辞職・解職がないので定期となりやすい。

2,不定期に勃発するもの
 反対に「時期が読めない」選挙である。
 2024年衆議院議員選挙は、まさにこれに該当するであろう。
 あとは、兵庫県知事の失職に伴う選挙もこちらだ。
 ただ、「なんとなく、選挙っぽい匂いがする」のが普通だ。

しかし、ごく稀に急で準備が間に合わないケースもある。
この、間に合わないとは、
「投票所入場券」
の郵送が間に合わないケースである。

私が仮釈放中に、このケースに当たってしまったのだ。

それは、全く予期していない選挙であった。
「え?もしかして解散しちゃうの?」
こんな感じで解散が決まり、選挙戦がスタートした。

元々選挙に興味があり、昔から積極的に投票していた。
候補者のサイトを見たり、街頭演説を聞いたりして情報取集をしていた。
その折、あまりにも急で投票所入場券の発送が間に合っていないことを
報道で知った。

『市役所の人は大変だな。議員の身勝手に振り回されて。」

なんて、気軽に考えていた。
通常、選挙戦が始まると同時に期日前投票もスタートするため、
私の家に投票所入場券が届かなければ、『あれ?』と感じるのだが、
その時は報道で事情を知っていたため、届かなくても違和感がなかった。

投票日は仕事があったため、期日前投票をしようと決めていた。
選挙戦が始まって数日経っていたが、入場券は届かなかった。

『市役所の人に迷惑になるから、とりあえず行ってしまおう』

なんて気軽に考えていたし、ネットで届かない場合の方法まで
検索していた。それくらいなんとも思わなかった。

そして、苦い思い出の日が訪れる。
とある仕事が、期日前投票を行っている役所の近くであることから、
仕事終わりに立ち寄ることにした。
投票所入場券は未だに届かなかったが、ここでもなんとも感じなかった。

期日前投票所は結構並んでおり、近年の投票率低下を感じさせない。
まあ見た感じ、明らかに暇そうなお年寄りが多い。
勿論、皆さんご予定があるのだから来ているのであって、
特に何か言いたいわけではないが・・・。

期日前投票所には、投票所入場券とは別に記載する用紙がある。
「宣誓書」と呼ばれるもので、
【その日は忙しくて投票できないので、今日投票します】
的な内容が記載されている。
そこに住所と名前、生年月日を記入して、投票所入場券と一緒に
提出するのだ。

名簿確認は2名体制で行っており、どちらの方も手際が良かった。
それでも50人ぐらい並んでいたので、まあまあ時間が掛かった。

そしてようやく名簿確認の順番が来た。宣誓書を手渡し、
『投票所入場券がまだ届いていないんです』
と、余裕たっぷりに言い、
「それはすいません」
なんて応えてもらい、私は呑気に構えていた。

そしたら、その方がやたらと私の記載内容を確認してきた。
「ご自宅にお変わりはないですか?」
「生年月日の〇月は、4ですか?9ですか?」

確かに、字が汚いと言われることがあるので、
もっときれいに書けばよかったな、なんて思っていた。

2列ある名簿確認のうち、隣のレーンはあっという間に終わる。
私のレーンだけピタッと止まってしまっていた。
さすがに違和感を覚えた。
覚えているだけで、隣は5人ぐらい終わっている。
でも、私の名簿確認は終わらない。
名簿確認の方も、自分の限界を悟ったのだろう。
上役かと思われる男性を呼び、2名体制で確認し始めた。

そこからさらに、隣のレーンは5人くらい進んでいた。
ただ、呼ばれた上役も若い青年で、明らかに経験がないのが分かる。
多分、限界を感じたのだろう。上役の青年は電話を掛け始めたのだ。

『はあ、せっかく並んだのに名簿漏れかよ。
 この後の予定変更しないといけないかもな。』
なんて考えていた。

しかし、その刹那、私は悟ったのだ。

【もしかして、仮釈放中だからだろうか・・・】

ただ、公然と言うわけにもいかない。
どこから噂が立つかもわからないし、もしかしたら知り合いが
いるかもしれない。目の前の名簿確認の人が口外するかもしれない。

瞬間的に頭を巡らせた私がとった作戦は、一度退散することにした。

『あ、ごめんなさい!もしかしたら住所の関係で・・・』
と、言おうとした瞬間に、青年が声を掛けてきた。

「申し訳ないのですが、名簿から漏れてしまっているようです。
 今、責任者が参りますのでお待ちいただけますか?
 こんなに並んでいただいたのに申し訳ないです。」

ひたむきな青年の態度に、心が痛みながらも本当のことが言えず、

『分かりました。お待ちしますね。』

といって列を離れて、特別な席を用意されて待つことになった。
並んでいる人は、若干ざわついていた。

そのあと、責任者の方が来られたので一通り事情を話してみた。
そうしたところ、選挙権がないことが分かったのだ。
悟った瞬間は、今でも忘れられない思い出となっている。

刑務所に入るということは、多くの権利を失うこと

逮捕されて、多くの人が離れていき、仕事を失った。
起訴されて、少しの人が離れていき、家族を失った。
実刑になり、残り僅かな物を失った。

それは私の知っている範囲の動きであり、実はもっと失っている。
選挙権・被選挙権もそのうちの一つだ。
ただ、私の知らない権利も失っているのだろう。
それが何かは、気づくまで分からない。
下手したら気づかないまま終わるかもしれない。

刑務所に行って良かった、と思うことは殆どない。

ただ、良かったことがほんの一握りだけあるとしたら・・・
それは、また後日話していきたい。




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