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彼に貸したお金が「高い勉強代」になるまでの話⑰「素直になれない頑固一徹」


プライベートではH氏中心に何人かとリモートで関わるようになり、職場と自宅の行き来のみの生活でも、お腹を抱えて笑う時間も増えていった。
そう、私は本来ゲラなのだ。

そして、「私らしさ」皆無の督促文作戦で返済に繋がった2月末の返済から1か月後、3月分返済の時期がやってくる。
月末が近づくと、無性に落ち着かなくなり、セラピーを受ける頻度も多くなっている状況だった。

危機感を与えたつもりでいたが、返済がない。
月が変わり4月1日に督促文を送る。

未読のまま3日が経過した。

昼頃に電子借用書サービスからの督促メールを転送するも、支払いはない。
夜の仕事帰りに、「月〇万円の返済はきつい?」とメッセージを送るが返信なし。
だんだんと不安感が強くなる。

ただ、督促文を送るだけじゃだめか、と思い、
私は重ねてメッセージを送った。

「五月雨式に大変失礼いたします。
〇時〇分にお送りいたしましたメール内容はご確認いただけましたでしょうか。

このような督促行為は大変心苦しいのですが、
現時点でまだお支払いいただけていないようです。
本日中にお支払いいただくか、お支払い可能な日にちを教えていただけますでしょうか。

月額についての減額等、ご要望がありましたらお知らせください。
出来得る限りご要望に沿えますよう、検討させていただきます。

なお、今回3月分含め、今後期日が経過しているうえでお支払いについてのご状況がLINEメッセージ、メール上で確認できない場合、お電話にて督促させていただく場合がございます。

御多忙の中、恐れ入りますがご理解の程よろしくお願い申し上げます。」

送信してから1時間、既読もつかないため、通話ボタンを押した。

電話番号を着拒されている身だ。
相手が出るとはもう思っていない。

ただの圧力としての意図だった。

するとすぐにメッセージが届く。

「15日に振り込む」

私はそれを飲み込んだ。

そして、15日の夜、支払いはない。

「〇〇さん、15日です。どうされましたかね」

私は呆れていた。
その月は、結局こちらが折れることになる。

「必要な連絡ですのでご対応願います。
 ちりつもでも減らしていくことに
 意義があると思っているので、
 〇〇円~〇〇円でもよいです。
 お手数ですが明日中にお支払お願いします。」

少し、私らしさという甘さを加えた。
指定の金額は月額の半分以下だ。
とにかく継続してもらうことに重きを置いた。

すると日付が変わったころに指定した金額の中間で振り込みがあった。

私は入金確認の報告と、期日がずれたため次回の支払い日を彼に決めてもらうことにした。
だが、案の定、5日間返信はなかった。

体調面を気遣う言葉を添え、再度、支払い日の確認をする。

やる気がないか、出し渋っているのか。
彼の経済状況まで想定するのにもう疲れていた。
私は、事実を突きつけ、更に圧力をかけた。

督促に至った経緯について補足した。

弁護士事務所ならびに司法書士へ相談済であること。

詐欺としては認められなかったこと。

借用書の有効期限及び電子債権が有効であるということ。

居住地情報をもらえていないことで、少額訴訟は困難であり、返済能力の判断材料として継続的な返済実績を信用する他ないと現状は考えている。

こちらからの督促方法についても弁護士に確認済。

督促行為は借主への心の負担となるものでもあるため、可能であれば期日を守ってもらうか、難しい場合は事前に連絡をいれること。

ある意味、彼が「自分のとった行動は詐欺ではないから問題ない」と、安心材料として、更に同じことを繰り返す恐れがあるかもしれない。
仮にそうなったとしても、痛みを持って知る時がくることを私は願うしかない。

これに対し、「了解です」とだけきた。

読んでいない。理解していないなと、すぐにわかった。
だが、それでいい。

こういった言い回しはちょっと恥ずかしいが、「現状は」という部分に私は対応策A、Bを隠していたのである。

そのまま、再々度、支払い日時の確認をする。

「5.30 〇万」

本当に成人男性かと疑うくらい、不満が態度に出る人だと思った。
これで、「自分はみこより大人である」と言うのだから、正気か?と当時は怒りを秘めていた。

私は気持ちを抑え込み、夜の仕事に出勤した。


お店で出会う方々は、様々な名言、格言を残していく。

特別、彼とのことを話したわけでもなかったが、ある方が私にこんなことを言った。

「みこ、男が黙って金だけ入れてるなら、余計な詮索はするな。」
「大丈夫、最後はきちんと帰ってくるんだから。」

何の前触れもなく、唐突に放たれたこの言葉に、なんだか、ビビビッときてしまった。

腑に落ちてしまったというか、素直に(そうか…)と思ってしまったのだ。

後に、H氏が「自分が病んでいるときに、何気ない他人の一言で救われた」と話してくれたが、まさにこのお客様の言葉が当時の私の心を少し軽くしてくれた言葉の1つだった。

 

夜の仕事を終え、駅前の喫煙所に立ち寄った際に、ふと自分の凡ミスに気付く。

5月は31日まであったのだ。

こういったところに何故か細かい私は彼に「すみません 5月は31日までありました」と素直に謝った。金額については了承したと伝えたところ、めずらしくすぐに彼から「お願いします」と返信がくる。

だいたい、淡白な言葉であったとしても、返信がくるという時は何か望んでいる、と捉えるようになっていた。

シンプルに、言葉を返す。
だが、私は仕事終わりでお酒がまだ入った状態だ。

(会話を続けたい。)
という欲がでてきてしまった。


彼から連絡がくるといつもこうだ。
今の彼をもっと知りたいと、つい思ってしまう。

これが構ってほしいということなのだろうか。

でも、自分の話を聞いてほしい、というよりかは、聞きたいという気持ちの方が断然大きかった。

そして、何の因果か、ちょうど私が立っていた場所は彼と初めて会った場所だった。


良い思い出だけがふわっとよみがえり、我慢ができなくなった。

タイムリーに駅前の某薬局の前にいると伝えた。

やりとりは無理せずにと自制の意味を込めて付け加えたが、

「初めて会った場所だね」

自分はなんてちょろい女なのだと思うが、覚えていたことが嬉しかった。

と、同時に、良い思い出ばかりでないこれまでを思い出し、切なくもなる。

本当は「覚えてたの?嬉しい」くらい言えたらよかったのだろうけど、当時の私は頑固一徹、全く素直じゃない女だった。

もう過去のものですといわんばかりに、
「ね あれ楽しかった~」と送る。


可愛げのないやつだ。
彼は「ごめんね」とだけいう。

「楽しい時もありむかつく時もありでいいじゃない 
いろんな感情を経験したよ~」

私はもう余裕ですと虚勢を張っていた。

全く、そんなことなく、
情緒乱高下中の状態なのに。

「素直が1番だよねー 限界ねむる」と言ってスマホを消そうとしたが、
「おやすみ」と返ってきた。

もうかき乱さないでくれ…という乙女チックな思いを抱えつつも、勝手にあらぶっているのは自分の受け取り方の問題だと冷静な自分もいた。

とりあえず、翌日に、この頃は返済が続いている事へのお礼と責任感伝わってますと相手への労いを込めたメッセージを送った。

まぁ、全て督促ありきでの返済だが…


⑱に続く。

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