「ご近所ねこと街」しゆもく
近所の古いアパートの階段にはよく野良猫がいた。時代に取り残されたような建物で、のんびりと昼寝をする猫がよく似合っていた。
人懐こくて、近所の人たちにご飯をもらっている地域猫的な存在で、私もたまに触らせてもらっていた。すりすりしてきて最高だった。実家にいる頃は思い立てばすぐにでも飼い猫を触れたのに、一人暮らしにはそれがなかった。常に猫に飢えていた。
そのアパートが最近取り壊された。猫がどこに行ったかはわからない。残念だと思った。
その土地は、気が付いたらもう分譲住宅として売りに出されているらしい。元々こぢんまりとしたアパートが立っていた場所をさらに分割して、もっとこぢんまりした2~3軒の戸建てにするようだ。土地が空いているなら、そこにはできる限り建てちゃったほうが儲かるからだ。
近所には不動産営業のサンドウィッチマン(お笑いのほうではなく、元の?意味)が立ち始めた。ご苦労さんですねえと思いつつも、もしチラシを受け取ってしまえばついでに「やっぱ○○(そこの不動産会社)儲かってるんすか?」と品のない質問をしそうになるのを抑え、炎天下で頑張る営業のさわやかお兄さんをかわす日々が続いている。猫に会えなくなったので、私は彼らをあまり良くは思っていない。
そんな街にも住んで3年目になった。そしてこの街が結構好きだ。
都内でもわりと人口は多くて、最近再開発が進んでいて、住民が言うのもなんだが栄えた地域ではあると思う。それでも、どこか地味でパッとしない。聞いたことはあるけど降りたことがない駅。そんなところも含めて結構好きなのだ。
今日は自転車にイタリアの国旗を取り付けたおじさんが爆走していて、良いな~と思った。
八百屋の店頭には、やたらとでかい玉ねぎが800円で売られていた。ポップに「こんなに大きくなりました」と書いてあって、良いな~と思った。でも玉ねぎ800円て。
......玉ねぎ800円!?
見たときは「まあかなりでかいし珍しいから高いんだろうな~」と思っていたが今考え直してやっと異常さに気が付いた。何だったんだろう、あの玉ねぎ……。
今日は玉ねぎオチです。それではまた。
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