ネイチャーフィールドⅩ~生命体観察マガジン(昆虫)2020・06 その10
今、地球はコロナ禍だけでなく、上記写真のサバクトビバッタによる農作物への甚大な被害で、大変なことになっています。
各種メディアでも大々的に報じられているため、ご存知の方も少なくないと思いますが、アフリカ東部で大発生したサバクトビバッタが、中東からパキスタン、インドにまで広がっていて、小麦、大麦、綿、モロコシなど各地の農作物を食い荒らし、下手をすると世界規模の食糧危機にまで引き起こしかねない災厄だ、といわれています。
最新のニュースでは南米パラグアイからアルゼンチン、さらには中国でもバッタの大繁殖が発生しているといいます。
何とも恐ろしい状況ですが、20.315的には、こうした蝗害(こうがい=バッタによる農作物被害)には、日本の科学技術が生かせるんじゃないか、とも思います。
例えば・・・
1.大量捕獲装置(ロボット)を開発して、一定期間、自動稼働させ捕獲し、乾燥&粉砕して肥料とする。
2.遺伝子工学で遺伝子操作して、無精卵バッタを作り根絶やしさせる。
「そんなんできるんやったら、とっくにやっとるわ」と言われそうですね。
実は、蝗害については国連に専門部署があり、各種調査研究と情報提供を行っています。FAO(国連食糧農業機関)のDLIS(サバクバッタ情報サービス部門)には「バッタ情報担当官」を養成するプログラムまであります!
サバクトビバッタの駆除については、バッタ情報担当官に任せるとして、今回はネイチャーフィールドⅩに発生しているバッタ類を紹介しましょう!
↑ 今年の関東は梅雨らしく連日のように雨が降るため、ネイチャーフィールドⅩはまるで草原のようになっています。草刈りも、すでに手に負えない状況です・・・。
でも、といいますか、だから、といいますか、バッタ君たちも大量にすくすくと成長しています。
↑ これはツマグロイナゴの幼体です、おそらく。
かわいいでちゅね~、ツマグロイナゴではなく、もしかしたらトノサマバッタの幼体かもしれません。褐色を限りなく白くした幼虫なので、同定には多少疑義が生じています。すみません。
↓ こちらはトノサマバッタの成虫。
カッコいいフォルムです。ツマグロイナゴとトノサマバッタはほぼ同時期に撮影していますが、成長具合が全く異なりますね。実はトノサマバッタは年2回発生します。夏に孵化するケースと春に孵化するケースの2通りで、上記のトノサマバッタは春に孵化して6月にすでに成虫となっている個体です。※ツマグロイナゴやイナゴ類は年1回。
冒頭で紹介したサバクトビバッタは、このトノサマバッタの群生相現象といわれています。通常は孤独相、つまり大量発生することなく、食物連鎖の中で調和を保った個体として生きています。
大量発生の原因は、砂漠のような乾燥地帯に大量の雨が降ることによって、植物が一斉に芽吹く場合です。つまり、トノサマバッタの食草が豊作となって、孤独相 → 群生相 に突然変異する=サバクトビバッタに変異するという構図です。加えて、この変異体は、どんな植物でも食べるといいます。トノサマバッタ自体の食草の種類も多く、植物のみならず他の昆虫の死骸も食べ、時には共食いもするという驚くべき食欲を持っています。
もう、ほとんどエイリアンですね。
国連やバッタ情報担当官、あるいは専門家などの研究でも、大量発生するしくみや因果関係ははっきりと解明されてはいません。
↓ 次はこちら、ツユムシです。
ツユムシは20.315が大好きな昆虫のひとつです。飛び跳ねているシーンも身軽そうで、かわいいですね。ツユムシは菜食主義の華奢な奴です。全身が緑色でスマートなんですが、形態のよく似たキリギリスはひと回り大きくゴツイ印象で、完全な肉食主義なんです。ネイチャーフィールドⅩにはキリギリスも存在しているのですが、残念ながら撮影できていません。
実はこのツユムシも、年2回発生します。同じく年2回発生するトノサマバッタは変異してサバクトビバッタになりますが、ツユムシが大量発生することはありません。食草の違いなのか生態の違いなのか、不思議です・・・。
↓ ショウリョウバッタ。草原の定番ですね。まだ子供ですね。
ショウリョウバッタは主にイネ科植物の葉を食べます。ネイチャーフィールドXにはササ類、マコモ類、イヌムギ、カラスムギ、スズメノテッポウ、スズメノカタビラ、アキノエノコログサ等々、イネ科植物もたくさん生えていますから、食草に事欠くことはありません。
一杯食べて、大きくなれよ!
とはいうものの、カマキリやクモ、ニホンカナヘビ、蛇または鳥類など天敵も多いので、成虫にまで育つのも大変でしょう。
大きくなった個体、特にメスはオスの2~3倍近く大きいケースもあるので、そうした大きな個体を見つけたら、また改めて紹介しますね。
↓ 今回のラストはエンマコウロギの赤ちゃんです。
まだ生まれたて、体長はおよそ2ミリ程度の赤ちゃんコオロギです。
昆虫分類の世界では昆虫網バッタ目キリギリス亜目コオロギ科に属する、バッタの仲間です。
そして、コオロギの中でも、このエンマコウロギが日本のコオロギ代表といっても差し支えないですね。
エンマコウロギの孵化は5~6月です。ネイチャーフィールドXでも、この6月中旬に赤ちゃんコオロギが大量に生まれています。草原となっているネイチャーフィールドXを、草をかきわけて歩くと、この黒い小粒がいたるところにピョンピョンはねています。どんな生命体でも、赤ちゃん時代はかわいいですね。
成虫となったエンマコウロギは、お腹がボテボテに膨らんで、そんなにかわいくないですが。
といっても、コオロギは昆虫食の中でも大変メジャーな存在でもあります。
東南アジアでは揚げたり焼いたりして食べる普通の食材です。日本の良品計画も、先月「コオロギせんべい」を発売しました。他の例では、醤油や岩塩と合わせたコオロギ調味料も各種開発されています。
すごいですね、コオロギ!
実は、今回紹介したバッタ類の昆虫は、全て食用となります。イナゴは佃煮もありますしね。20.315も食べてみたいとは思うものの、やはりあの形態のまま口の中に入れるには抵抗感があります・・・。
乾燥&粉砕してパウダー状になれば大丈夫かな?
ちなみにサバクトビバッタのみ、食用には適していないようです。にがい、とか、毒草も食べるため毒が混じっているとか・・・。さんざん言われていて、ちょっとみじめな感じ。
大量捕獲して何かに利用できればいいんですけどね。
※冒頭写真はAERAdot.から。その他は全てネイチャーフィールドXで撮影。