ウエルシュ菌食中毒のこと
前の投稿で、新型コロナウイルス感染拡大に伴うもろもろによって今までは店内提供だけだった飲食店がテイクアウトや配達などを始めた現状を踏まえて新しい許可の仕組みや衛生基準などをつくってほしい、といったような趣旨のことを書きました。これはこの続きです。
免責事項については前の投稿にある通りです。
前回の投稿から数日後、食中毒のニュースが流れてきました。レストランでつくった弁当を子ども食堂に配達した後にウエルシュ菌による食中毒が確認されたことが報道されたものです。
こういうことが起きるとやはり消費者の反応としては「危ないから控えようかな」という方向にいってしまいます。そうならないように、業界としても各店としてもいろいろと啓蒙や注意はしていたと思うのですが、いかんせん、このような事態になるのと気温が上がるスピードが両方とも早すぎて、なかなか周知徹底とか経験などが追い付かなかった、ということなのかもしれません。
なお、食中毒についての専門的なアナウンスは、厚生労働省のサイトに詳しいですのでリンクを張っておきます。事業者用の資料もあります。
今回の食中毒の詳細についてはよく知らないのですが、常温で置いてあった時間があったらしい、というところまではネットで読みました。詳細については今後、保健所が明らかにしていくと思うのですが、ちょっとこの個別ケースからは離れて『常温で置かれた時間が一定時間あったらしい総菜』というのが、はたしてどのような工程ならありうるのかな、と考えると、普通に現場的に考えると、もしかしたら、大鍋で作った総菜(煮物かな?)を調理してからいきなり冷蔵庫には入れられないので、冷めるまで常温で置いておいてから冷蔵庫に移動したのかな?と想像するわけです。
このケースがそうだったかどうかはまた別の話になりますが、これ、わりとご家庭でもやりませんか?
でも、これも「常温に置いてあった」の一種なんです。そして、鍋の大きさにもよりますが、煮物などが冷蔵庫に入れてもいいほど冷めるには、けっこうな時間がかかります。下手すると数時間かかってしまう。
この間に、菌が繁殖するらしいんです。
今回、ニュースになったウエルシュ菌は熱に強く、先にリンクを張った厚生労働省の資料でウエルシュ菌を引くと、『酸素のないところで増殖する菌で芽胞を作る。芽胞は100℃、1~6時間の加熱に耐える。』と書いてあります。保健所の講習で習ったんですが、なにやら、この細菌には鎧のような殻のようなものがあって、それが中身を守っているので、ちょっとやそっとの加熱では死なない、ということらしいんです。それで、生き残った細菌が、調理品が冷めていくときに通過する危険温度帯(10~60度)でがっつり増殖するんだそうです。
参考資料:同じく厚生労働省の以下の資料『HACCP(ハサップ)の
考え方を取り入れた食品衛生管理の手引き』(厚生労働省に詳しく載っています。(PDFファイルです。)
それで、これも保健所の講習の受け売りなんですが、このウエルシュ菌、一度加熱しただけじゃ死なないんだけど、その後、殻が壊れてしまうので(正確にどのタイミングで殻が壊れるのかは教わったような気がしますが忘れてしまいました)、再加熱した時には無防備になっている、だから再加熱すれば死ぬ、再加熱して細菌を殺すべし、と教わりました。
レストランでもご家庭でも、提供するときに冷めた状態で出すっていうことはおそらくなくて、再加熱して出すことになる。だから仮にウエルシュ菌が繁殖していたとしても、再加熱によって死んでしまうので食中毒になりにくいらしいです。
ところがこれ、配達用になると違ってくるんですよね。配達する弁当は冷めた状態で持っていきたいので、オペレーションとしては、冷蔵庫から出してそのまま盛り付ける、ということも、あるいはあるかもしれません。
でも、そうなると、再加熱によって増殖した細菌を殺す、というプロセスを踏まないで、誰かの口に入る可能性がある。死滅する温度などの性質も細菌によって違うので、それぞれの細菌の性質を踏まえて、各店が対策していく必要があるわけです。
なお、各事業者によって違うと思うんですが、つくり置く調理品は氷水などで急冷するなど、危険温度帯を素早くやり過ごす、という工夫をそれぞれのやり方でやっているはずだとは思います。