又吉直樹×堀本裕樹「芸人と俳人」感想
お笑いと俳句の視点から言葉について語り合うような本なのかな、と思って買ったのだけど、けっこう本格的な俳句の入門書で、勉強にもなったし、何より面白かった!!
俳人の堀本裕樹が、芸人である又吉直樹に俳句を基礎から教えてゆく。この堀本さんの態度が素晴らしいのです。相手が有名な芸能人だからと卑屈になることなく、ごく自然に「先生」として振る舞う。
色んなことを勝手に気にしてどんどん疲れていくタイプの又吉直樹を気遣いながら、彼独自の感性を生かせるように俳句の技を伝授していく。
堀本裕樹が又吉直樹に対する挨拶句として作った、
なつかしき男と仰ぐ帰燕かな
解説を読む前から、
「なつかしき男というのは又吉直樹のことだな」
と分かった。無頼派マニアで自意識が強く、文学的な陰鬱の気配を常にまとっている。小説好きな人はきっと彼に懐かしさを感じるだろうし、若い頃「自分には言葉しかない」と思いつめていた堀本にとってはなおさらそうだったろうと思う。
又吉直樹の気質や才能に対する、堀本裕樹の愛情。
堀本裕樹の知識や技術に対する、又吉直樹の敬意。
どちらも本当にあたたかくて、もうこれはBLとして読んでも良いのでは?! お、怒られるかな……
最後の方、吟行で又吉直樹が作った
蟻進み参拝後だと悟りけり
という句を堀本裕樹が添削して完成した
参拝を終へたる蟻かすれ違ふ
という句は二人のコラボのようで、心打たれた。
俳句の教科書としても分かりやすく、読みやすいです。私は俳句や短歌を(「詠む」ではなく)「読む」のが好きなのだけど、これまでただただ感覚で解釈してきてしまったな~ と反省しました。思わず歳時記アプリを購入。これを使って今後はもう少し丁寧に読み解いていきたいなと。
歳時記に例句がいっぱい載っている「水原秋桜子」
「桜子(さくらこ)ちゃんか、可愛い♪」
と思っていたら読みは「みずはらしゅうおうし」で、「芸人と俳人」におじさんのイラストと共に紹介されていてショックだった……
言葉が好きな人におすすめの本です。ぜひどうぞ。句会や吟行をやりたくなる……!!