熊本旅行記(2日目 熊本市)
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バスの中でいきなり団子を食べた。変わり種も買ったが、普通のタイプ(どこにでもあるさつまいもに、黒いこしあん、白い餅)が一番美味しかった。
バスは中国人客でほぼ満員。予約しなかったらまた乗れなかったかもしれない。こちらに来て熊本弁はほとんど聞いてないが、中国語はたっぷり聞いた。
阿蘇の店やホテルで働く人たちは、みな同じ独特のイントネーションで話していた。きっと親しい人に対しては熊本弁を使うのだろう。語尾や文法は完全に標準語だった。
阿蘇から熊本市中心部まで約二時間。熊本城の前にあるホテルにチェックインし、味処「お川」へ。こざっぱりした小料理屋だ。
ここで「一文字ぐるぐる」を食べることが出来て感激した。
熊本名物の酒のつまみで、茹でた青ネギをぐるぐる巻いて結ったもの。酢みそがかけてある。
何故わざわざこんな形にするのか、面倒だろうに、と思っていたら、
「結わうことで歯応えを出しているんです」
と店主のおじさんが教えてくれた。なるほど確かに、巻かれた部分を噛むとコリッとする。ぐるぐるするひと手間が、青ネギを青ネギ以上の素敵な何かにしている。
メニューに「山するめ」という見慣れない単語がある。干したたけのこをこう呼ぶのだという。店のおばさんが実物を見せてくれた。茶色く透明感があり、見た目がスルメに似ている。山するめの入ったおひたしを食べると、身が締まっていて、生のたけのことは歯触りが違う。
高野豆腐やがんもどきなど、あれこれ頼んだが、どれもだしが利いており、それぞれの素材に合った味付けがされていて、Dちゃんも喜んでいた。なすの煮物が特に美味しかった。
店主のおじさんは熊本城の写真をくれた。地震前の勇姿ではなく、修復中で足場の組まれた姿を写しているのが、熊本への愛を感じた。
おばさんの熊本愛もすごくて、Dちゃんはしらすご飯を頼んだのに、
「熊本に来たならこれを食べて欲しい」
と、熊本でしか食べられない「御飯の友」というふりかけ付きの白米に変更させられていた。
料理は文句なしに美味しい。でもおじさんとおばさんの個性が強めなので、割と人を選ぶ店かもしれない。私は勉強になったし、良い思い出になったけれど。
このお店でも熊本弁は聞けなかった。あのおじさんとおばさん、私たちがいなくなった途端に、熊本弁で話し始めるのだろうか……
羽田を出発したのは昨日なのに、妙に遠く感じられ、もっと長く熊本にいるような気がする。見たことのない風景を沢山見て、初めてのものを色々食べて、普段の何倍も脳の記憶領域を使ったのかもしれない。「歳を取ると時の経つのが早くなる」と言われるのは、変わり映えのしない毎日を送りがちになり、記憶が残らなくなるためではないか。
思い出の量が、時間の感覚を作る。楽しいことを数多く経験すれば、年齢に関係なく、時間は充分長くなる。
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