映画「アトムの足音が聞こえる」感想

 アニメ「鉄腕アトム」の音響効果を担当していた大野松雄のドキュメンタリー。

 アトムが歩いたり、飛んだりする時の音を作り出した人。文章で書くと分かりにくいけど、聞けばすぐ、
「あー! これね」
 となるはず。よく知られた音だ。

 最初、大野松雄不在のまま、大野をよく知る音響関係者たちへのインタビューが続く。大野はもうこの世にいないのか? 少なくとも同じ職場で働き続けているわけではないらしい。

 大野松雄のその後が明らかになった瞬間、背中がゾクッとした。この人は本質的なことしかやらないし、やれない。嘘臭い場所からは自然と離れ、音の根源に引っ張られてゆく人生なのだと思った。

 あれこれ要求してくる手塚治虫に向かって、
「おたくは映画に関してはど素人だ。素人は黙っててくれ」
 ときっぱり断った話とか、なかなか凄かったですね。頑固な天才たちの戦い。

 音響職人の技と、芸術家の生き方。一本で二つの映画を見たような満足感でした。

 そうそう、途中でレイ・ハラカミが出てきます。彼の元気な姿が見たい、という方もぜひどうぞ。

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