【300字グルメ不倫小説】うどん県の恋人

 単身赴任でね
 ここのうどんは美味しいけど
 家庭の味が恋しいよ

 高松ではそんな男 珍しくもないのに
 肉じゃがとみそ汁を作ってあげて
 荒々しい飢えた抱き方に溺れたのは 私の罪

 デートではなく
 地元の人間の親切として
 小豆島を案内する

 一緒にオリーブ畑で働かない?
 会社なんて辞めて
 奥さんとも別れて

 冗談に出来そうにないから
 口には出さない

 何も失わずに東京へ帰ってゆく男の背中

 対等に遊んだだけだと
 私だって何も失わなかったのだと

 必死で自分をだましながら

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