【300字グルメ小説】お犬様のブロッコリー
犬の好みにしては変わっている気がするのだが、実家で飼っていたマルチーズのロッキーは、ブロッコリーをよく食べた。
伯母はロッキーを溺愛しており、茹でたブロッコリーを食べやすいように小さくちぎり、エサ置き場に綺麗に並べた。
公園の木のような鮮やかな緑。
我々はその残りに、マヨネーズをかけて食べた。
「たまにはカリフラワーも食べたいんだけど」
と母が提案しても、伯母は、
「ロッキーちゃんはブロッコリーが好きなんだよ!」
と一瞬で却下した。ロッキーの前で、母の意見など無いに等しい。
ロッキーが死んだ後も、我々は決して戻ることのない主人の帰りを待つように、ブロッコリーを食べ続けた。
……カリフラワーだって美味いんだがな。