映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」感想
キューバのミュージシャンたちの音楽と人生を追ったドキュメンタリー。
最初からずっと泣きっぱなしで、最後は号泣。悲しい話ではないのだけど、音楽とミュージシャンたちのたたずまいが素晴らしくて、極度に感動した状態が最初から最後まで続いたのだと思う。もう、心をぐわんぐわん打たれた。
音楽に込める感情(愛情やユーモア)
それを表現するための技術
力強い演奏をするための体
そんな心・技・体を、全員が恐ろしく高いレベルで持っていて、息がピタリと合っている。複雑なリズムのやり取りを、まるで日常会話のようにすいすい交わしてゆく。
中でも最も気に入ったのは、ボーカルのイブライム・フェレール。会話の最中、すごく自然に歌を歌い出す。まるで体に歌が詰まっていて、フタを開けた途端、ふわっとあふれてしまうみたいに。こういう人こそが本物の歌手だ。
後半、彼らは「忘れ去られていた老ミュージシャン」だったと紹介され、エッとなった。こんなすさまじい音楽家たちを忘れてしまうってどういうことだろう。社会のせい? 貧しさのせい? それより何より、彼らは「老ミュージシャン」なのか?
確かに「俺は5歳の頃に葉巻を始めて、85年吸い続けている(=つまり90歳)」なんて人が出てくるし、よく見ると、顔はみんなおじいちゃんである。しかしあまりにも演奏がパワフルで、彼らが「老ミュージシャン」とは全く思えない。疲れないのかな? 仲間とリラックスして楽しくやるから平気なのかな? ムダな力が一切入ってないのかな?
とにかく奇跡のような演奏風景だった。
予告編を見ていた時に、Dちゃんが、
「あっ、タラバガニの曲だ!」
と言った。
メインで使われている曲(Chan Chan)の歌詞の一部が、
「……タラバガニ~♪」
と聴こえるのだ。そのせいで「タラバガニ~♪」と脳内で叫びながら号泣したよ……
音楽好きな方にはたまらない映画だと思うので、機会があればぜひどうぞ。映画館で見られると感動もひとしおなので、リバイバル上映があると良いですね!