「春画展」感想

 2015年に文京区目白台の永青文庫で開催されていた、春画展の記録です。

 有楽町線江戸川橋駅から行ったら、胸突坂という急な坂を登ることになって大変でした。公式サイトでおすすめされているように、目白駅からバスに乗った方がラクだと思います。

 さてさて、この永青文庫は、昔内閣総理大臣だった細川護熙さんち(旧肥後熊本藩主細川家)の文化財を管理保存・公開している施設のようです。和風なのかと思ったら洋館で、赤い絨毯の上を移動して春画めぐりをするのが不思議な感じで面白かった。

 平日なのにメチャクチャ混んでた!! 他の美術展より明らかにおじさん・おじいさんが多かったよ。みんな好きね……

 春画というのは性を描いた日本画・浮世絵。しかし、あれに性的に興奮する現代人は少ないんじゃないかなぁ。肉体も行為も、あからさまかつ詳細に描かれていて、どんな人たちが何をしているかはよーく分かるのだけど、分かったからといってドキドキするとは限らないのが恋と性。

 現代のエロ漫画も、数百年後には、
「こんな目やら胸やらデカい女のどこが良いの??」
 と未来人の首をひねらせるのかもね。

 性的な目的にはもはや使えないように思える春画ですが、春画展を開催するまでに紆余曲折、色んな騒ぎがあったようです。まあ確かに、現代日本では表に出すことが禁止されている、男女の性器がばっちりしっかり描かれているからね。春画を見る時もついそこに目が行っちゃうのだけど、何枚か見ればそれは飽きる。誰にでも付いているあれさ。

 それよりも「うぉぉぉぉ!!」となるのは、毛と着物の柄の表現。つまり細部。
「どんな筆を使ったの?! どんな技を使ったのよ!?」
 息を呑むほど繊細で、色鮮やか。これはほんと、一見の価値ありだと思います。

 何でこんなに性的に興奮しないのかなー と考えてみたのですが、表情の変化に乏しいんだよね。ほとんどの絵で、人物の顔が真顔。みなさんそんな乱れずにいたしていたのですか。

 倫理的に、快楽に浸る表情を描くことを避けたのだろうか。その方が性器よりよほど卑猥だものな。いや、電気がないから、暗くて顔がよく見えなかったとか?

 そんな中にあって、歌川国芳「江戸錦 吾妻文庫」の男の視線は斬新で、ドキッとしたなぁ(グッズ売り場でこの柄のトランクス売ってたよ)渓斎英泉の描く、眉根を寄せる男の表情もリアルだなー と感じた。

 そうそう、基本的に、双方合意の上での性行為に見える絵ばかりでした(二人じゃない時もあるので、全員、かな?)一つ、女の人が泣いている絵があったけど、理由は分からない。

 嫌がっているのを無理やり、みたいなのが多い現代の性描写より、ずっと気持ち良く見られたよ。ああいうの、ほんと苦手なので。

 嫌々する、というのは、性の禁止と表裏一体なのかもしれない。
「性的なことは悪いこと→本当はやりたくない→無理やりだから仕方ない」
 という理屈を付けないと、心穏やかに見られない、とか? よく分からないけれども……

 私は性というものを、幸福であたたかなものだと感じている。だから春画に描かれているおおらかな性は、非常に馴染みやすかった。多くの人の心にある、性に対する複雑な感情がほぐれると良いな。