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『ジェーン・エア』LIVE配信 感想/考察

チケット争奪戦に負けに負けたジェーン・エア
LIVE配信があって本当に良かった。
屋比久ちゃんがとにかく最高だった。

小説や映画のジェーン・エアは未修のままミュージカルに臨んだことで、理解しづらいシーンはあったけれど、総じて歌が素晴らし過ぎて引き込まれてしまった。

屋比久ちゃんが演じるジェーンは自立心の強い女性で、その性格を表すような強い歌声で自由を歌うジェーンは最初から最後まで最高でしかなかった。
涙を流してる表情までわかるように見せてくれているカメラワークに感謝。
井上芳雄演じるロチェスターの思惑にまんまと引っ掛かり、嫉妬するジェーンの表情が愛おしすぎる。

そしてジェーンの側で幼少期を過ごす慈愛のヘレン
普段からの印象も柔らかく、優しい歌声の萌音ちゃんが演じてくれて本当に良かった。登場シーンは僅かだけども、萌音ちゃんの歌声も聴けたので満足。
最後、ジェーンとロチェスターの赤子を抱き渡すシーンも、実際にはいるはずのないヘレンだけどモノローグをジェーン1人でやるのでなく、出演者手分けして語っていく仕様だったからこそ違和感なく感動出来た気する。
屋比久ちゃんとダブルキャストではあるけれど、萌音ヘレンがベストだと思う。
ただ、主人公と親友をダブルキャストにしようと考えたアイディアには大きな拍手を送りたい。
お互いに高め合ってくれたことで、ストーリーの理解も深まってより良い表現を魅せてくれたと思う。
本当素晴らしいアイディア。

他にも仙名彩世さん演じるメイドのソフィとブランチ・イングラムの歌声が素敵だった。
お名前を存じ上げず、調べてみたら元宝塚のトップ娘役というから納得。やっぱり、いつかは宝塚を観に行かなきゃと思わせてくれた。
特にソフィとして歌う曲が素敵だった。日本語タイトルわからないのが悔しいけれど、トチの木に雷が落ちた夜が明けた日の朝に歌う曲が良かった。
英語だと多分「In the light of the virgin morning」というのだと思う。

春風ひとみさん演じるミセス フェアファックスも小気味良い感じが好き。
特に、最初のロチェスターのプロポーズ後にジェーンを小娘扱い(実際に小娘ではあるけれど)して、身分違いで恥知らず等とひどい言葉で心配しまくりつつ、最後には、自分の娘が結婚するかのごとく喜んでくれるシーンは最高。
「武装解除。呼んでね式に」って歌うとこが、つい笑っちゃう。

後はシンジュンが歌う、人の気持ちを逆撫でするようなプロポーズの曲。プロポーズなのに不快にさせるなんてある意味凄いと思う。

「結婚すべきだ。宣教師の妻として辺境地で生きていかん。君が生まれたのは愛するためじゃない、務めるため我が妻として。」

シンジュンの歌うプロポーズ曲から抜粋

いや、本当になぜ勝手に人の生き方を決めようとするのか。“結婚すべき”とは何様だ。

観劇後に色々と読み漁っていた中で見つけた論文
加塩里美『ジェイン・エア』にみられるヴィクトリア朝イギリス社会(1)
を読んで知ったが、シンジュンはこの時にジェーンではない別人を好いている。
だけど神のためという名目で
「愛していない人を結婚相手にして(俺可哀想)、夫婦で宣教する(俺偉いし世間体もバッチリ)」
と、ジェーンを巻き込んで自己陶酔に溺れてるだけの男とわかり完全に失望。
ジェーンを助けてくれたのは良かったけど(偽善からの行為だったとしても)、自由を求めて生きてきたジェーンが最後まで巻き込まれなくて本当に良かった。

この時のジェーンのお祈りの手の形が、原作に書かれている表現「自分なりのやり方で祈った」を表しているのか、シンジュンがやっている一般的なお祈りの手の形と異なっていた。
これはLIVE配信じゃなきゃ気付かなかっただろうから、LIVE配信にはLIVE配信の良さがあるもんだ。

シーンとして良かったのは、第2幕でミセス リードを前に「許すの」を歌うジェーン。これは感動的だった。
ヘレンから教わった許す精神を受け継いだジェーンであるからこそ歌えた歌だったと思う。

総じて、やっぱり歌が良かった。
アルバムが欲しい。屋比久ジェーンの。
どのミュージカルを観ても思うことだけど、日本版のアルバムをどうか出して欲しい。
次いで言うと屋比久ちゃんは早く個人のアルバムを出してほしい。
萌音ちゃんのアルバムは多いけど、屋比久ちゃんはまだ出してないからな。



あとは今回、観ていて気になった点をメモに残す。
いずれ原作を読めばわかるかもしれないから。

・メイスン(ロチェスターの妻バーサの兄)の事ある行動の意味
 →ロチェスターとの結婚が噂されてたイングラム家の方々とは和やかにお喋りしていたが、ジェーンとの結婚式の場面になってからは「奴には妻がいる」と式をぶち壊す。事前に妹バーサの元に行っているが、首を噛まれて帰ってきていったい何がしたかったのか。
・ロチェスターはバーサと何故離婚しなかったのか?
 →カトリック教徒だから離婚はNGの思想があったのかもだけど、NGである重婚はしようとする。それにロチェスターは神に頼らずジェーンを頼る辺りからして、そこまで信心深くないのに何故。
・ジプシーに扮していたロチェスターが、ブランチ・イングラムに占いをした後、最後に耳打ちをしていたが何を言っていたのか?
 →ミス ブランチはそれに憤慨した様子でさっさと帰宅するが、ジプシーが彼女の嫌味を言ってもロチェスターは嫌う理由にはならないから謎。
・この時代の西インド諸島(メイスンのいた所)やアイルランド(ロチェスターがジェーンに自分を嫉妬させたいがためにイングラム家から紹介されて見つけたと言ってた奉公の地)はどのような意味を持つのか。
 →メイスンが西インド諸島から来たといった言葉に対し、イングラム家は嘲笑するような場面の後に図書室に行ってにこやかにお喋り。イングラム家はどんな感情を抱いていたのか。
 →ジェーンがアイルランドを提示されて強く拒絶したのは、遠距離になるからだけなのか。それ以外の意味を持つのか。
・終始、嫌な感じのグレイスの態度はどうして。
 →ジェーンにはそれなりに口調は優しいミセス フェアファックスもグレイスには当たり厳しい。バーサの世話に疲れての態度というのもあるのかもだけど、何かしらの背景があったりするのか。
・セリフの中に何度となく、ことわざや四字熟語が出てくるのは何故。
 →翻訳者の好みなのか、原作者の表現がそういったものが多いのか。
・礼儀とかに厳しそうなミセス フェアファックスが狂人が雇い主の妻だと分かった後も、バーサに対して「狂った哀れな人」と呼ぶ理由。


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