マックス・ボルンの1926年6月論文を読んでみよう(その3)
その2からつづくよ。
電子が原子に衝突するとき、こんな式がなりたつぞとボルン先生がばーんと見せつけてきました。こんなの。
おっかない式ですが、左辺は電子が原子に衝突した「後」を、右辺は衝突の「前」を示しています。
光の回折が彼の脳裏にはあります。こういうの高校物理で目にしませんでしたか。
波と波が相互作用して、右側に縞模様を描いていますね。「干渉」といいます。これボルンの理屈を理解するにあたってのキーワードですので、しっかり頭に入れておいてください。(なにしろ後で再登場するのだ)
その様を数式で表したのが ⇩
順に見ていきましょう。赤で括った波動関数は、原子のなかにある波動関数(ボーア模型でいうところの電子の軌道)で、n とあるのは量子数。0とあるのは本論文謹製の記号「電子をぶつけられる前の状態だよーん」の印です。
青の部分はなんでしょうね。これはぶつかってくる電子の波動関数です。下の方に τ(タウ)については前回解説しました。この式においては、電子と原子の相互作用によって双方が変化していく過程だよんという印です。
原子という太陽系に、外宇宙から電子という天体が飛び込んできて、太陽系の各惑星軌道と相互作用しながら、この天体(電子)は軌道が緩やかにカーヴしていって、やがて太陽系の外に飛び去って行く… その軌道カーヴぶりを描いているのが、上の青マーク部分です。
原子を太陽系に見立てて、そこに電子が突っ込んできて、直進軌道が次第にカーヴして飛び去っていく…
なんというか、壮大なロマンですね。
外宇宙からの天体Ⅹ(青)と、太陽系の各軌道(赤)が ✖(掛け算)されると、何を表すのでしょう?
互いに作用しあう様を表しています。「干渉」といいます。先ほどお見せした、この絵の右端にある縞模様は、波と波の干渉によって生じたものです。
この縞模様を生じさせる、波と波の干渉は、二つの波動関数の掛け算で表せます。なぜならその計算結果が、観測される縞模様の間隔と、よく一致するので、そう考えてええやろということでそう考えられています。
ということは、この二重積分は…
先ほど解説した、外宇宙からの天体Ⅹ(青)と太陽系の各軌道(赤)が干渉しあう様を…
天体Ⅹ(電子)が移動していく、そして軌道をカーヴさせていくたびに干渉も変化していくので、それを積分しているわけです(それも三次元空間での積分ですので二重積分!)。
⇩はその集計というわけです。
電子の位置が $${(x, y, z)}$$ で示されています。つまり電子の位置が変わっていくにつれて、原子の各波動関数との干渉の強さも変化していくのです。
($${q_k}$$ とあるのは、論文中に説明がないのですが文脈から察するに「特定の電子」を示していると思われます)
残るは黒で括った、この箇所について⇩ですが…
ここは現時点でブラックボックスのままです。電子と原子が干渉しあうところに…
そこにさらに掛け算していますね。$${(α, β, γ)}$$ は、電子と原子の相互作用によって電子が進行方角を $${(α, β, γ)}$$ に変えていく様を表しています。φはその関数として挟みこまれています。電子の進行方向が変化すれば、干渉も変化するぞ、みたいな、補助的な関数。
その正体は? 謎解きは、次回のお楽しみであるのことよモナミ。
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ナンカツカレチャッタ・・・