はんことぶんこ。【あんクリ二次創作】
「あ!たいやき!!」
隣で楽しそうに歩く彼女が、ふと声を上げる。
見ると、いかにも老舗のたいやき屋さん、というような露店が出ていた。
今日は秋祭り。近所の神社の境内を使い、さまざまなお店が出店している。
いつも通らない道を使ったのは、この露店に誘導するためだったのか、と彼女の策略に見事はめられたことに失笑する。
たいやきやさんの前で立ち止まり、「おいしそ〜〜〜〜!!!」と目をキラキラさせる彼女。
しょうがない、1つずつ買っていこうか。
「あんこでいい?」と尋ねると、彼女は僕の顔も見ずに「クリームで」と即答する。
店主なのかアルバイトなのかわからないが、店先に立つ若い女性は微笑みながらクリームのたいやきを紙袋に入れる。
「僕はあんこで」とすかさず答え、お金を支払う。
若い女性は彼女に紙袋を渡し、小さなショップカードも手渡してくれた。
「少し行った先の商店街で、お店をやっています。よかったら来てくださいね」
そう言い、若い女性は微笑んだ。
彼女は紙袋の中身に興味津々だったので、僕が若い女性にお礼を言う。
静かに頭を下げる若い女性に会釈しながら、その場を立ち去った。
神社からの帰り道、彼女が「クリームは邪道?」と上目遣いで聞いてくる。
さっきあんこを2つ買おうとしたことに怒っているのだろうか。
「あんこの味や食感は炊き方によって変わる。たい焼き屋さんによってあんこは違うんだよ。とっても奥が深い食べ物だと僕は思う。だから僕はあんこを頼んだんだ」
少し考え、こう返した。
「ふーん。まぁ、あんこもクリームも両方食べれるからいっかー!」
彼女はあっけらかんとしているので、どうやら怒っていないようだ。
片方空けられた彼女の手を、そっと握る。
「はんこ♪ぶんこ♪」
隣で彼女が楽しそうに歌う。
そうだね。はんことぶんこで、はんぶんこだね。
ほかほかの紙袋が、家に向かう僕たちの足をさらに早まらせた。
❄ ❄ ❄
このお話は、「あんこちゃんとクリームくん」をもとにしたショートショートです。
彼の「はんこ・ぶんこ」の話が面白かったので、そこからインスピレーションを得て書きました。
(俺がはんこで、xuちゃんがぶんこね!)
「あんこちゃんとクリームくん」本編とはあまり関係のない人物が登場しますので、二次創作だと捉えていただければ幸いです。(モブ)
ひだまりさん・りようさん、掲載許可をいただきありがとうございました✨✨