他の人にお金を使うと幸せになる
自分ではなく,他人にお金を使うことで幸福度が上がるという趣旨の論文を読んだのでメモ(1)。
これまでの研究を調べてみると,誰かに対して親切をすることによって親切をした本人にプラスの効果があることが分かっています。具体定期な例を挙げると,以下のようなものがあります。
・他の人に親切をすることで幸福度が高まる(2)
・親切を数えるだけでも幸福度が高まる(3)
・親切をすると,心臓の病気のリスクが下がる(4)
今回紹介する論文は他人に対してお金を使うことで自分自身にお金を使うよりも幸福が高まることを教えてくれます。
2008年のコロンビア大学のエリザベス・ダンらの実験では,お金の使い方が幸福度に与える影響について調べてくれています。
実験に参加したのは大人46名でした。
実験参加者は実験当日の朝に自分自身の幸福度を評価し,郵便でお金($5・$20)を受けとりました。それぞれの実験参加者はランダムにに2つのグループに分けられており,お金を別々の目的で使ってもらいました。その2つのグループの違いは以下の通りです。
<グループ1>
他人のためにお金を使う
<グループ2>
自分のためにお金を使う
そして実験当日の夕方に実験者が電話をかけ,実験参加者はその時の幸福感について回答してもらいました。
実験の結果,自分のためにお金を使った場合と比較して他人のためにお金を使った場合の幸福度がより高くなっていました。またこの幸福感の向上は受け取って使った金額によって変わりませんでした。つまり$5という少ない金額でも$20と同様の効果を持っていました。
実際に,大学生109名に実験の手順の概要を説明し,自分のためにお金を使った場合と他人のためにお金を使った場合のどちらが幸福感が高まると思うかを尋ねています。
調査の結果では,半数以上が自分のためにお金を使った方が幸福度は高まると回答しました。また金額の違いでは,3分の2以上が$20の方が$5よりも幸福感は高まるだろうと答えました。
これまでの収入と幸福感の関係性についての研究では単純に年収が上がれば幸福度が高まるわけではないことが分かっています。
・年収(上限があり,約750万円まで)が上がれば幸福度も上がる(5)
・年収が上がれば(上限なく),幸福度も上がる。その関係は1,000万円までは比例関係で,その後は対数関係になる(6)。
このように年収と幸福度の関係は一貫した結果が報告されていません。どのような仕事をしてお金を稼いだのか,お金の用途などの他の要素にも幸福度は左右されるといえるでしょう。なぜ他人のためにお金を使うことが幸福感の向上につながるのかについては,人間は社会的動物であり,他者との関わりを持つことで幸福感が得られたのではないかと考えられています。
(1)Dunn, E., et al. (2008). Spending Money on Others Promotes Happiness. Science, 5870, 1687-1688.
(2)Lyubomirsky, S., Tkach, C., & Sheldon, K. M. (2004). Pursuing sustained happiness through random acts of kindness and counting one’s blessings: Tests of two sixweek interventions. Unpublished raw data.
(3)Emmons, R. A., & McCullough, M. E. (2003). Counting blessings versus burdens: an experimental investigation of gratitude and subjective wellbeing in daily life. Journal of personality and social psychology, 84(2), 377–389.
(4)Chancellor, J., Margolis, S., Jacobs Bao, K., & Lyubomirsky, S. (2018). Everyday prosociality in the workplace: The reinforcing benefits of giving, getting, and glimpsing. Emotion (Washington, D.C.), 18(4), 507–517.
(5)Kahneman, D., & Deaton, A. (2010). High income improves evaluation of life but not emotional well-being. Proceedings of the national academy of sciences, 107(38), 16489-16493.
(6)Jebb, A. T., Tay, L., Diener, E., & Oishi, S. (2018). Happiness, income satiation and turning points around the world. Nature Human Behaviour, 2(1), 33-38.
■親切は脳に効く/デイビッド・ハミルトン (著), 堀内久美子 (翻訳)
■「親切」は驚くほど体にいい! /デイビッド・ハミルトン (著), 有田秀穂 (監修, 翻訳)
■幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論/ショーン・エイカー (著), 高橋由紀子 (翻訳)
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