月光の囁き
隠れた名作『月光の囁き』をみた。ずっと気になっていたが近くのビデオ屋にはないし中古でも高い、と思っていたところにGEO宅配レンタルにて発見し早速借りて観た。
主人公のタクヤとヒロインのサツキは同じ剣道部、物語は2人が朝練をしている所から始まる。練習後、タクヤはふと「サツキに頭を叩かれるの嬉しい」と言い出す。それを聞いてサツキは「それやったら変態や」と笑う。2人はふとしたことから両思いと知り付き合う事になるが、タクヤにはサツキに言えない秘密があった。彼は恋人としてのサツキよりも一歩下がったギリギリの境界で彼女を想って愛することが至福なのである。彼女のブルマ、艶かしい白い脚、オシッコの音…。心の奥にどこかそれをサツキに気づいてほしいという思いがあったからか、ベッドに盗んだ彼女の靴下を忍ばせたままにしていたのを失念し、遂に隠していた性癖に気づかれてしまう。そしてそこから2人の関係は崩れ始める。
サツキは処女をタクヤに捧げたが、タクヤは捧げられることを望まない。サツキは2人で共有しあって喜怒哀楽を感じたいが、タクヤはただ彼女の全てを知りたい。ひざまづきたい。I Wanna Be Your Dog. 何も考えずおまえの犬になる。ひとりよがりのタクヤに当て付けるように先輩の植松と関係を持つようになるサツキ。2人の情事を、狂いそうになりながら影でじっと見つめ続けるタクヤの眼差し。全てを終え汗ばむサツキの脚をただひたすら舐めるタクヤ。「あんたの舐めてる汗、植松さんのも混ざっとるんやで。恥ずかしくないんか?悔しくないんか?」
罵倒するサツキなのに照りつける日差しに映えて天女のように美しい。…そんなアンビバレント。
しかしてラスト、愛はひとりよがりがふたりよがりになって、スピッツの「運命の人」で終わる。
タクヤは、自分を追い込むことで自分の変態性欲を開花させていく。サツキはそれに反発しつつも、その反発から先輩と及ぶ行為自体がアブノーマルの世界をより深奥にしていくのである。彼女の脚が汚れたと言っても彼女の脚に付着したモノならそれはもう彼女の一部だ。犬になって次第に物言わぬようになっていくタクヤだが、彼の心はどんどんどんどん表情をみえぬ言葉を紡いでいく。
サツキの役を演じたつぐみが美しい。M男のタクヤを演じた水橋研二も当時20を過ぎているとは思えない、あの純朴さ。思わず感動してしまう。