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「日本人が知らない『スーホの白い馬』の真実」の涙の読後感

「スーホの白い馬」という物語をご存知だろうか?

国語教科書として6割のシェアを占める光村図書の小学2年生の教科書に50年以上の長きに亘って掲載されている「スーホの白い馬」。

当時聞いたこともなかったモンゴルという国の昔話だというその物語を私は涙とともに読んだし、「国語という科目は、世界のこんな感動的なお話を日本語で読むことが勉強なのだ!」と誤解してしまったことで今日の私があったりもするのだが、(読むのはなんでも好きだけど、お習字は苦手。)仕事で知り合ったモンゴル人の誰一人として「スーホの白い馬?他の日本人にも聞かれたけど私は知らない。」と言わない者は無く、その事が長らく心に引っかかっていた。

「スーホの白い馬」が好きすぎてモンゴルのゲルに泊まる旅をした友人もいたのだが、彼女たちの滞在先のモンゴル人たちも「スーホの白い馬もそれに類する話も知らない。」と答え、「どんな悪い殿様でもモンゴル人なら馬を射殺したりは決してしない。そもそもスーホという名前はたとえ渾名であるとしても全く馴染みがない。その日本の教科書が間違っているのではないか?」とまで言われて、彼女曰く「通訳さんがその場をとりなしてくれなかったらあわや国際問題に発展するところだった」そうだから、私だけでなく光村図書の国語教科書の学習者を中心にした多くの日本人の中に、モンゴルは強く優しい少年スーホが作った馬頭琴の音楽が流れる広大な草原の国、という不可侵のイメージがあるはずだ、と言って言い過ぎではないと思う。

「日本人が知らない『スーホの白い馬』の真実」は、これまでほんの少しは疑いながらもあらかたは信じて自分のものとしてきた「『スーホの白い馬』によるモンゴル観」を根底からアップデートしてくれる、「スーホの白い馬」好きにはちょっとつらい、ちょっと苦い、でも好きなのなら尚更知っておかなければいけない、現時点でのおそらく最全の真実である。

そしてそれは満洲国の建国や太平洋戦争での日本の敗戦やその後の国際情勢など、日本人が特に苦手とするアジア諸国との関係史に深く関わってくる。著者のミンガド・ボラグ氏は決して声を荒げないが、知らないままにして呑気に過ごしてきた日本人の一人として無知を心からお詫びしたい。

(記事公開後、読み直してここを追加しているのだが、【ずっと好きで、やっと決心して告白したよそのクラスの男子に「オレ、キミの思ってるような人間じゃ全然ないんで。」と言われて、たしかに自分の思い込みと実際の彼がとんでもなくかけ離れていたということをクラスメイトにこんこんと説明されて知る】並のインパクト?ダメージ?を受けている。
それでも、それでもなお「あなたが好きだ」としか思えない自分をどうしたらよいのだ?)

おそらく今年も多くの教室で、多くの先生がたが「スーホの白い馬」を子どもたちに教える。その際にも、この「真実」を心に留めおいて教える先生が居てくれたら、それも国際理解につながるのではないか、と願っている。

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