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読書感想文「討ち入りたくない内蔵助」
日本人の基礎教養として忠臣蔵の概要程度は知っておきたいと思ってはいるのだが、幼い頃に祖父の家で読んだ「のらくろ忠臣蔵」(ご存知のらくろたちが宴会の余興で忠臣蔵を演じる話。夜なき蕎麦屋に身をやつして敵情を探るとか、雪の中を行軍するとか、ブルドッグのブル連隊長が吉良上野介役で炭俵に隠れるとか、基本は押さえてある。)で長らくお茶を濁してきた。タイトルは忘れてしまったが大石内蔵助が昼行灯と陰口を言われている煮え切らない男の振りをして最後に主君の仇を討つ、という筋の映画やドラマも人生で数本は観ている。しかしだ。松の廊下の刃傷沙汰から数年間、内蔵助をはじめとする47名プラス討ち入り当日には参加しなかった多数の家臣たちがどこでどうして何をどう考えていたかの描写が細かすぎるとかえって理解の解像度が下がってしまって、「そうよねぇ、悩んじゃうわよねぇ、みんな。」「でも計画が達成できて最終的には本懐を遂げた訳で、良かったんじゃない?」という感想に落ち着き、何を観ても件ののらくろを超えられなかった。
「一遍、踊って死んでみな」の白蔵盈太さんの「討ち入りたくない内蔵助」は、そんな私の“ぼんやりした忠臣蔵像” を一掃してくれた。1時間半余りのうちに四十七士の一人一人に大変興味がわいてきたので、これからの人生で折に触れ「赤穂事件」という史実に関連するヒトや場所や物語にこだわってみよう!と思う。手始めに肥後細川庭園や六義園などを訪れてみることにする。(泉岳寺や江戸城、赤穂城址は訪問済みなので。)
これはわざわざ書かなくてもよいことではあるが、内蔵助のセリフが汚い。吉本新喜劇のチンピラ役がおだをまいている場面の何倍も汚い。ネイティブ赤穂人に方言監修を依頼したらよかったのに…と溜息が出るほどの格調の低さは、惜しいです。
あと、火打石での切り火は多分というか絶対しなかったですよ。
(TOP画像は赤穂城址)