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パンとコーヒー、それから家族。

いつもの部屋の、いつものテーブルで
ちかくのパン屋で買ってきた
いつものメニューで朝食を。

やっぱりコレがいい。

肌寒くなってきたので、
あたたかいコーヒーに切り替えた。
夏の間は義父が気に入った紙パックの
アイスコーヒーを常にストックしていたが
もう必要ないかもしれないな。

コーヒーを一口飲む
「ふぃ~~っ」
湯にでも浸かったかのように
その場の全員が声にならない声を出した。



あたたかいコーヒーとベーカリーのパン。
のんびりした田舎にはこれが合っている。

塩パンあんバターは、塩気と甘みと
パリッとした食感で全てを満たしてくれる。
ベストバランスいい塩梅。

くるみパンはいつでも私のお気に入り。
自然な甘みと香ばしさ
大体どの店においても外れの無いチョイス。

クロワッサンはちょっと残念。
パリッとしてなくてフニャフニャだった。
バターの香りはしたけれど
パリパリの外側には程遠く、
何層にも重なった生地たちが
ファサファサと散った。



勇者たちは戦いを振り返り

私、妻、義父。

朝食を囲みながら、ワイワイと
前回の遠征を振り返る。

「オシャレすぎてむしろ地味」
「フォーマルな場にあえてのカジュアルは
普通にダメだと思う」
「田舎者が外に出ないように閉じ込められたか」
「外食高過ぎ高杉君」
「外国人多すぎ問題について」

朝の光、芳醇なバターの香りと、
とめどない愚痴の応酬でゲラゲラ笑った。

「もう1杯くれ」

酒場のマスターに注文するように義父が言った。
しかし、コーヒーのドリップバッグは3つ。


「もう売り切れですね」


話が弾んでいるところ、断ち切る形になって
私も残念なのですが。無い袖は振れません。

すると、コーヒーメーカーで作ってくれと
無茶なオーダーをしてきた。

たしかに、ある。

カウンターにソレは存在する。
だけど

私の記憶ではこのマシンは
昨年あたりから稼働していなかったはず。
ただそこで埃を被って沈黙しているだけ。
粉も古いに違いない。

「いけますかね?」

私は誰ともなく問いかけた。
それはある意味マシン自体に
問いかけたようですらあった。

カチャ、シャーッ、ギュッ、パチン

妻と二人で洗浄分解を行う。
構造がわからないが、おそらくココとココは
外して洗えるはず。
そういった憶測のもとで、短時間だが洗浄した。

肝心のコーヒーの粉はいつのモノかわからない。
こういう時は思い切りが大事だと
私の中の私が小さく呟いた。

ペーパーフィルターで濾過されたのは
見るからに珈琲色した液体だった。
カップに注ぎ込まれたのは紛れもなく
コーヒーそのものだ。


マズッwww

いい加減な管理をしていたコーヒーが
美味いはずもなく、埃っぽい嫌な味がした。
noteのクリエイターの中には、コーヒーの専門家もいる。
そんなバリスタたちにメチャクチャ怒られそうだが

優雅な朝食を楽しんでいた私たちは
この不味いコーヒーっぽいものを飲んで
3人で顔を見合わせて笑いあった。


こんな平和な朝食も
それはそれで幸せなのだ。



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