春の都②
前回の続き
暗い時分から出かけた我々取材班は
一路、都に車を走らせた。
助手席と後部座席には
リラックスモードのお二人。
まるでロングフライトを乗り切るが如く
就寝用最終形態モコモコパジャマVer.2
おぉ、旅慣れた玄人とでも言いたいのか
二人とも途中で降りる気配を感じさせない。
S.A.などに立ち寄って休憩がてら
暖かいものでも頼んじゃって
「寒いときにはやっぱりこれだね」
なんていう昭和なノリのCMを撮影しようと
スマホを準備していた私は出鼻を挫かれた。
文字通り寒い夜は回避されたわけだが
それでも孤軍奮闘(?)
自販機でHotを買い、しゃべる自販機と
一方通行の漫才をして気分を盛り上げた。
夜のS.A.はいつから利用者のほうが
サービスをするエリアになってしまったのか。
夜の長距離ドライブは眠気との闘い
静まり返る車内
緩やかなカーブと長い直線
ぼんやりとした月明り
寒暖差による霧が視界を奪う
車内に音楽はない。
ドライバーの都合で選曲したロックを
爆音で流すわけにもいかない。
おやすみタイムに最適な曲は
ロードノイズと適度な揺れである。
しかしそれは同乗者のみならず
運転手にも襲い掛かってくる誘惑だった。
眠気を回避するべく
誰かと会話をしたかったが
生憎、漫才の相方である販売機とは
先ほど解散したばかりだった。
方向性の違いというやつだ。
近づく目的地、咆哮とともに
おそらくココが最後の休憩地となる
ボス前の最後の村といった感じだ。
いや違うが。
時刻的にはすっかり朝なのだが
まだ空は暗く、月が浮かんでいる。
暗いうちにモコモコ装備から
決戦用秀麗街中装備へと
モードチェンジさせなければ
本来の力を発揮することができないので
彼女たちに忘れずに声をかける。
「ん、ンンンンンンッ…ナッ!」
(ナッ?)
眠り姫は可愛らしい咆哮をあげ
車内のオーディエンスを盛り上げる。
寝起きの声が意外と大きいというのは
自分では気づきにくい癖だが
あえて指摘してやることはない。
冒険者たちの溜まり場
決戦前の準備だろうか、他のパーティーも
続々と集まってきている。ギルドさながらの
このS.A.は徐々に賑わいを見せ始めた。
それは先ほどまでの孤独な闘いを
生き抜いてきた私にとって、
心強い光景だった。
さらに車を走らせること1時間
到着した決戦の地
これから繰り広げられる壮絶な戦いに
身を投じることになるのだが―
詳細は省かせてもらう。
あくまでも私的旅日記であるからして
くだらない出来事だけを記して
まとめ上げていこう。つまりそれは
いつもと変わらないのだけれども。
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