フィール・ソー・ナイス
近くて遠いところへ
ロングドライブを見越してコンビニで買い物をしていくことにした。立ち寄った店で飲み物を手に取り、スナックや軽食など店内を物色していると、ふと変な気配を感じた。それは変なニオイがするとか、空気が重苦しいとか、水の流れる音がするとか、何かモヤモヤしたものが見えるとかいう、そういった類のことではなくて単純に、
―視線を感じる。
やはり私くらいのAランク冒険者ともなると、防犯カメラなどという文明機械から放たれる微弱の電波でさえも容易に感知出来てしまい、さらにはモニター越しで今まさに私のことを監視しようとしている愚かなアルバイト民の不遜な態度さえも、手に取るy
「おひさしぶりですね」
レジで会計をしていた背の高い男性客が私に話しかけてきた。見れば、我が懐かしの元部下ではないか。なにが「Aランク冒険者ともなると~」だ、さっきまでの不審行動を見られていた可能性を考えて、こいつを殴って記憶とセーブデータをリセットしておいたほうが良いと思った。
「生きていたか!(リアル)」
さっきまでの危険思想は微塵も表に出さずに、久しぶりに会えた元部下へ応えた。あれから何年たったのだろうか、少し痩せたようだがハツラツとした表情からは現在の精神状態が安定していることを感じさせた。
どうやら、現在は全く違う業種について真面目にやっているようだった。当時一緒にバイトしていた仲間も同じ職場だと言い、コッチの世界からは全く足を洗ったという。
「たまには顔を見せればいいのに」と気軽に言ってしまったが、彼は「どの面下げていけばいいのか、へへへ…」と遠慮しているようだった。私が違う部署に移ってからいろんなことがあったらしい。後ろ盾を失った今、古巣へ単独潜入するには敷居が高いのかもしれない。
清廉潔白クリーンなお仕事です
世界平和を願う心優しき地球の民である私は、彼と別れコンビニ内で妻と共に「年を取るとおにぎりのチョイスが鮭に行きつくのは何故か?」という私たちにしか当てはまらない特殊な現象について不毛な議論を展開していたが「イチャつく中年カップルなんぞ吐き気がするゎ」と言わんばかりのレジ係に押し出される形で、やがて目的地へと急いだ。
澄んだ空気がカラダを巡る
ほどなくして目的地へ到着。
平日だというのにポツポツと人が歩いている。普通のカップル、一見すると日本人に見えなくもないがおそらく他国のアジア人、ちょっとワケあり風な熟年カップル、シングルバックパッカー、絶対にお昼のお仕事ではない単独男性、などいろんな人が、いろんな願いを持ってここに集まっていた。
台風の影響だろうか9月末にしては暑い日になったが、この場所は高い木々に囲まれて爽やかな風が吹き抜けていた。心なしかこういう場所に来ると空気が俗世のソレとは違うような気がしてしまう。神聖というのはこういうことなのだろうか。
吸い込んだ空気によって、肺の奥まで浄化されたような気分になった。っと錯覚することが大事である。おみくじを引いたが、妻が大吉を引いて私が小吉だった。これはある意味、私も大吉を引いたことと同じである。なぜなら、一番大事な人がハッピーであることが私のハピネスであるからだ。
奥の院に行くよりもお店探訪を優先した不届き者の二人は、おなかがすいたので激烈お洒落なカフェのメニュー看板だけをみて、結局天ざるそばを食べに古民家風古民家丸出し食堂風の暗闇古民家に消えていった。最終的にそこは”手打ちうどん”のお店だったのに、気づかずに”天ざるそば”を二人で注文する始末。
あえて、ならわかる。
うどん屋で、あ・え・て・のそば。
メニューに載っているのだから
不自然な点は一切ない。
しかし、二人とも店の雰囲気から
「絶対、蕎麦だ。しかも天ぷらは山菜系だ」と決めつけてしまったことが恥ずかしい。実際に天ぷらに海老がなかったことも的中し、フフン♪やっぱりおいしいね。と悦に入っていたところ、メニューに書いてあった店名が少し読みにくい名前だったので、グーグル先生で調べて”手打ちうどん”のお店であることが発覚。
そんな二人は仲良く「あんころ餅」という、日本昔話でしか聞かないようなお土産を買っておとなしく帰りました。この珍道中の様子は動画にてアップしたいところですが、なぜかね、うまくいかないんです。たぶん神様の仕業なんでしょうね、ワタシ神々しくって、もうっ、公開できんわwwって。
ここまで読んだ奇特な方たちには、今回も中身のない記事につき合わせてしまったようだ。しかしこれが私の日常であり、たしかな日々の記録であることは間違いない。次回も反省せずに書き連ねるとしよう。