新幹線シリーズ第2章嘘です違います
いつものように新幹線に乗り込む。
仕事が終わり帰路に着くこの瞬間が
楽しみでさえあるのだ、いつもなら。
何故だ⁉︎
何故今日に限ってこんな状況なのだろうか。まず乗車率が異常に高いのは、まぁたまたまと言えるだろう。ゆっくり座りたいので、人が少ない先頭付近まで車両の着席具合を横目で見ながらホームを歩く。
スーツのおじさん率が高い。
しかもギッシリ。
うーむ出張ですかね
大人数で?どんだけ大企業なん
所狭しとおじさんが固まっている。
座る場所を求めてさらに先頭部分へ急ぐ
そろそろかと見計らい、車両へ滑り込む
発車5分前。
違う
いつもと違う。
さっきまでの光景が嘘かのように
車両のあちこちから
女性の声が聞こえる
というか
若い女性しかいない。
おかしい。この新幹線に女性専用車両があるとは聞いていないぞ。そもそも新幹線でそんなことしてもいいのかどうなのか。この帰宅時間にnoteを開いて、フォローしている文豪たちの抱腹絶倒エピソードを「ニヤニヤ」しながら読むのが一番の楽しみなのに、こんなに女性ばかりではスマホを取り出すのさえ憚れる。いや嬉しいか、嬉しくないかで言ったら言わずもがな察してくれと言った感じではあるのだが。
自意識過剰かもしれない。
周りはそんなに気にしていない可能性もある。いやしかしこれはなんだろうか?可能性としては集団旅行?ゴールデンウィーク終わってるしなぁ。
「すみません倒してもよろしいですか?」
わざわざ立ち上がって聞いてきた
前席の女性の綺麗なこと。
もしかしてどこかの事務所の団体さん?
耳が少しづつ紅く染まるのを感じつつ
済ました顔でマスク下の笑顔を作り
アイコンタクトを取り軽くうなづくそして
「どうぞ」という手のジェスチャーを加えた
私は聞き分けの良いナイスミドルです。
といういささか無理のあるスタンスで対応してみたがどうだっただろうか?えっと早く降りたい。
混沌とする車内に救いにも似た車両アナウンスが彼の地への到着を告げる。ありがとう。ありがとうございます。嘘ですごめんなさい、もう少し乗っててもいいかなと思いますハイ。
心とは裏腹に機械仕掛けの会社員が
駅に降り立つ。
なぁに明日も仕事だ。
夕飯前に何故か妻に怒られてしまった。
もちろん別件ではあるのだけれど、
世の中は意外と狭い範囲内で
バランスが取れていると感じた。
神がいるのだとすれば
余りにも無慈悲だと思う。