数学ギョウザ
幼いころ、私はギョウザでしつけをされた。たとえば、掛け算が上手になるほど食べられるギョウザが増える。
当時の私はいつもお腹をすかせていたので苦手な算数をがんばった。
インイチガ イチ… OK 一個あげる。
ニニンガ シ… OK 二個あげる。
シシ、ジュウロク… ダメ。今までの分全部取り上げます。
私 「正解なのに、なんでだよ」
母 「だって私が食べる分がなくなっちゃうもん」
今思えば軽い虐待だったな。長じて私はギョウザ専門数学者になった。それで受賞した。すべての数字にギョウザを与え、すべてのギョウザに数字を与える意義をこの世に生み出した功績は大きい。見ろ、世間のギョウザ専門店の格式の高さと安さと美味しさを。これを数式にした私は偉い。帰宅すると認知症になった母がやっぱりギョウザを作って待っていた。
「さあ九九をしましょう」
「クク、ハチジュウイチ」
「不正解」
母は笑って私の前で、ドリ餡カレー七味入ギョウザを頬張る。
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