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令和6年10月17日(木)のあたりさわりないエッセイ日記

今年も10月1日から31日まで毎日エッセイ日記を書くことにしました。


本日のテーマ
創造的なことを好む人は、穏やかな人生を送れる確率が高い


 新しい施設の内部まで入って、その人の薬歴といって、薬に関する過去のアレルギーの有無などを聞き取りするときがある。
 そういう時のある日、玄関をはいってすぐ個室のドアが並んでいるところで、名前が特徴的な人がいて、あれと思った。
 そこの市が設置している文学賞(応募は市民に限る公募なので知名度はない)の常連だからだ。あれはペンネームでなく実名だったのか……。個室のドアは閉まっていて、いきなりノックするわけにはいかないのでそのまま通り過ぎた。
 対応したケアマネはその人の担当ではなかったし、私の担当患者でもないので、個人情報は聞けない。でも帰宅後に、市の情報誌のバックナンバーを開いて名前を探す。
 あった……毎年のように応募して名前を出すのが創作のモチベーションになっていたのだな。施設の入所はいつからかは不明だけど、創作なら年齢やお金に関係はない。ずっと続けていられる。
 情報誌に掲載されると年齢も公表されてしまう。その人は80代後半だった。認知症でないと入れない施設だが、認知症だったのか……さらに名前を検索すると市に昔からある短歌の同人誌があった。若い時から参加されていて、幹部になっていたので、名前が残っていた。
 これも実名で参加されていたのでわかったこと。読んでわかりやすいタイプの短歌や詩を書かれている。施設に入ってもなお、創作できるというのは理想の人生ではないか、そんなことを思った。

 創造的なことを好む人は、長生きすることが多いというのは本当だと思う。病棟薬剤師をして、ベッド周りにまで自分が好む書籍や、手先を使う刺しゅうなどを持ち込む人はかなりの確率で理解度もよくしっかりされていた。特に折り紙が大好きで、入院中に折った創作折り紙をベッド周りに綺麗に飾られ、入室するたびに目をみはるわたしたちを、面白そうに眺めている患者の顔は忘れられない……老人病棟だったけれど、あの人だけ小児科病棟に入れたら子供たちにも人気で病棟に活気がでるのにと空想したのも記憶に新しいです。
 そんな風に年をとりたいです。


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本日のショートショート
「副鼻腔炎のオペ中で」

 僕の鼻汁の匂いが葉野菜のくさった匂いで頭痛もあり、目の奥も痛む。仕方なく耳鼻科受診したら、副鼻腔炎で膿がたくさんあり手術対象といわれた。それで内視鏡下での手術を受けた。

 術中は意識があったが、周囲の様子がおかしかった。手術室全体で海の磯の匂いが広がる。びちびち、びたんびたんという不思議な音もする。かじきだ、まぐろだという声も。吸引機で鯛も釣れたという。私は身体が動かせず、夢うつつでそれを聞く。

 膿が海になって産み違いぃ~というエコーのかかった医師の声と、うみぃはひろいぃな、おおきいぃなあ、という看護師の合唱が聞こえる。薄目を開ける私の目の前が海の底になっていて、大きなわかめの塔が林立して揺らいでいる。その中で医師と看護師たちが私の鼻の孔を覗き込んで処置をしている。その後ろでエイとエビとタコがダンスをしている。すぐ上で大量のイワシの乱舞がありそれが下に降りてくる。ほんまの話で完治した。


小説家になろう/
ふじたごうらこ



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ふじたごうらこ
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